あなたが日々受信するメールの中に、迷惑メールはどのくらいあるだろうか。削除に手間がかかる、内容が不愉快だ、迷惑メールと間違えて必要なメールを削除してしまった、不当な請求の被害にあうおそれもあるなど、受信者を悩ませる迷惑メールについてまとめた。Part1では迷惑メールの現状と迷惑メール防止二法の改正について、Part2では迷惑メールの種類と具体例、ユーザーにできる対策をご紹介しよう。
<INDEX>
● 迷惑メールの現状
● 迷惑メールとスパム
● 改正特定電子メール法と改正特定商取引法が12月1日から施行~が変わるのか
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迷惑メールに関する相談を受け付けている(財)日本データ通信協会では、2005年から毎年、迷惑メールの受信状況についてアンケート調査を行っている。残念ながら今年の結果はまだ公開されていないが、2007年度の調査の結果、迷惑メールの受信状況は以下の通りだ。日本語メール、外国語メールともに、一日に100通以上以上受け取っているという人がいて同情を禁じ得ないが、あなたの受信状況と比べてどうだろうか。
・日本語迷惑メール受信数
ではここでクイズを1問。日本全体で一日に受信される迷惑メールはおよそ何通でしょうか。
答えはおよそ25億通から30億通。これは、今年4月、衆議院総務委員会で特定電子メール法の改正案について審議を行った際に、明らかにされた数値だ(*1)。そんなに多いのか、と驚いた方もいるだろう。しかも、迷惑メールは年々増え続けているというから、この先どうなるのか心配になってくる。
インターネットイニシアティブの調査によると、今年6月から8月までの期間にはメール全体の85.8%を迷惑メールが占め、昨年の同時期より約13%増えていたという(*2)。別のデータでも増加傾向を読み取れる。迷惑メールの調査、分析を行っている日本産業協会によると、同協会のモニター機が受信した迷惑メールの数は、2005年度には11万1869通、2006年度には40万1603通、2007年度には64万7418通と、どんどん増えている(*3)。中でも海外発の迷惑メールの増加が著しい。「国内・海外発メール受信数推移」のグラフを見ると、2006年4月以降、国内発の迷惑メールは減少傾向にあるのだが、海外発の迷惑メールが急激に増加し、結果、全体量を押し上げている(*4)。
海外発の迷惑メールが外国語で書かれているとは限らず、むしろ日本語で書かれているものの方が多い。2007年1月に、中国に設置したパソコン128台を遠隔操作して、日本語の迷惑メールを大量に送信していた業者が摘発されたことをご記憶の方もいるだろう。この業者は出会い系サイトを運営しており、自サイトを宣伝するメールを1日あたり9000万通、2006年の7月と8月には合計54億通も送信。サイト運営で、1か月に1億2000万円の収益を得ていた。また、去年のデータだが、2007年7月、日本産業協会のモニター機が受信した海外発の迷惑メールのうち、7割強が日本の事業者からとみられる日本語メールだった(*5)。メールがどの国から送られてきたのかはメールのヘッダーを解析するとわかる。詳細についてここでは解説しないが、ネット上にたくさん情報があるので、興味のある方は検索してみていただきたい。
*1)第169回国会 総務委員会第18号 2008年4月24日(衆議院会議録情報)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/169/0094/16904240094018c.html
*2)Internet Infrastructure Review vol.1(インターネットイニシアティブ)
http://www.iij.ad.jp/development/iir/pdf/iir_vol01.pdf
*3)年間受信数(日本産業協会)
http://www.nissankyo.or.jp/mail/graph/popnenzyusin.html
*4)迷惑メールの統計(日本産業協会)
http://www.nissankyo.or.jp/mail/graph/graph.html#zyusin
*5)海外発受信メール分析(日本産業協会)
http://www.nissankyo.or.jp/mail/information/statistics200709.html#bunseki
一方的に送りつけられる広告・宣伝メール、架空請求メール、フィッシングメール、ウイルスメール、チェーンメールなどを迷惑メールと呼ぶが、この中で圧倒的に多いのが広告・宣伝メールだ。日本データ通信協会の2005年度アンケート調査では、パソコンに届いた迷惑メールの96%が広告・宣伝メールだった(*6)。
迷惑メールを「スパム」や「スパムメール」と呼ぶこともある。英語で書くとspamあるいはspam mailで、この呼び方が、アメリカの食品メーカー、ホーメル社が販売するランチョンミート「SPAM」に由来することはご存じの方も多いだろう。ちなみに、ホーメル社では、迷惑メールのことを指す場合は小文字で「spam」と書いてほしいとしている。
*6)H17年度迷惑メール受信状況についての調査(日本データ通信協会)
http://www.dekyo.or.jp/soudan/enquete/sub1.htm
● 改正特定電子メール法と改正特定商取引法が12月1日から施行~何が変わる?
「迷惑メール防止二法」と呼ばれる法律がある。
・特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法、迷惑メール防止法)
・特定商取引に関する法律(特定商取引法、特商法)
この2つで、特定電子メール法は総務省、特定商取引法は経済産業省の所轄だ。これらが規制対象としているのはユーザーの同意なしに送信される広告・宣伝メールのみで、その他のメールは対象外となっている。
特定電子メール法は5月に、特定商取引法は6月に改正されており、どちらも12月1日から施行される(*7、8)。特定電子メール法はメールの送信者を規制対象としており、特定商取引法は、メールで商品販売やサービス提供の広告をする事業者を規制している。
この二法の改正により、広告や宣伝の手段としての電子メールは、一部例外はあるが、あらかじめ受信を承諾した人にしか送信できなくなる。これは「オプトイン(opt-in)」と呼ばれる方式だ。従来は、受信拒否を通知した者にメールを再送信してはいけないという「オプトアウト(opt-out)」方式がとられており、事前に受信者の承諾を得る必要はなかった。ちなみに英語のoptとは「選ぶ、決める」という意味。opt-inは(活動などに)加入を決める、opt-outは、(活動などに)不参加を決める、というのが本来の意味だ。
特定電子メール法ではこのほか、電気通信事業者(ISPなど)が送信者情報を偽った電子メールの受信を拒否できるようになること、メール送信業者に対する罰金の上限額が従来の100万円から3000万円に引き上げられること、海外発のメールも国内発のメールと同様に規制対象になること、実際にメールの送信を行った者だけでなくメール送信を委託した者も規制対象となることが大きな変化と言える。
最近は、メールで広告活動を行おうとする場合、販売業者等(広告主)が、業務を広告専門業者に委託することが多い。委託を受けた広告専門業者が、さらにメール配信業務を配信専門業者に委託することもある。広告主、広告専門業者、配信専門業者という三層構造が存在するのだ。これまでは、配信専門業者を「送信者」として特定電子メール法で規制し、販売業者等(広告主)を特定商取引法で規制していたが、三層構造の中間に位置する広告専門業者は、規制の対象となっていなかった。二法が改正された後は、この広告受託事業者も規制対象となる。
*7)特定電子メール法の平成20年改正について(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/h20kaisei.html
*8)「特定商取引に関する法律」及び「割賦販売法」の一部を改正する法律について[PDF](経済産業省)
http://www.no-trouble.jp/search/joubun/pdf/kaisei_point_080623.pdf
電子メールに関連する部分は24ページから27ページ
Part2では、迷惑メールの種類と具体例、ユーザーにできる対策をご紹介しよう。
(執筆:現代フォーラム/北野)