毎日大量に届くスパムメールに悩まされている人は少なくないでしょう。怪しい薬売りやブランド品のパチモノ屋、手を変え品を変え襲来するウイルスメールにフィッシングメール。タイトルが英文ならゴミ箱直行でも、日本語メールだと読んでしまう人が多いようです。ついつい開いてしまったメールのために、とんだ災難に巻き込まれてしまう例が後を絶ちません。数十万~数百万円、なかには1千万円を超える額をだましとられるケースも実際に起きています。さて、いったい、どんなメールに引っかかってしまうのでしょうか。
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■事例1:「料金滞納金払え」~未納料金の支払いを求める架空請求
教訓-->「絶対に電話をかけない」「信頼できる人に相談を」
■事例2:「サーバー壊れた金払え」~損害賠償を求める架空請求
教訓-->「支払う前に(ホンモノ)のヤフーに連絡を」
■事例3:「賞品送るから送料送れ」~懸賞詐欺・当選詐欺
教訓-->「当選金をもらうために大金を払う」愚に早く気付こう
■事例4:「金を貸すから金送れ」~融資保証金詐欺
教訓-->「融資前の保証金や手数料請求はあり得ない」と知ろう
■事例5「会員情報の更新案内」~存在しない手続き求めるYahoo!のフィッシング
教訓-->「錠マーク表示」「ドメイン」の確認を
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■事例1:「料金滞納金払え」~未納料金の支払いを求める架空請求
最も深刻な被害のひとつが、身に覚えのない支払いを要求する架空請求でしょう。警察庁がまとめた今年10月までの架空請求被害は2109件、被害総額は26億9649万円に上ります。振り込め詐欺対策を強化した昨年以来、オレオレ詐欺や還付金詐欺の被害は大幅に減少しましたが、架空請求被害は依然として衰えを見せず、地域によっては増加に転じているところもあります。高齢者が狙われるオレオレ詐欺や還付金詐欺に対し、架空請求は20~40代が全体の8割を占めており、なかには中高校生が被害にあう例も報告されています。
架空請求メールの中でも最も多いのが、「サイトの利用料金が未納」とか「無料期間が過ぎても退会手続きがされていない」などといって連絡させようとする事例です。たとえば、こんなメールが届きます。
問題が起きていることを告げ、その解決策を示し、すぐに対処しないと大変なことになると焦らせて、冷静な判断を鈍らすのが詐欺師の常とう手段です。落ち着いて読むと、このメールには、いつ、どこで、何を利用し、いくらの請求があるのかという、具体的なことが何も書かれていません。料金の請求に際しては、請求者は利用明細などの具体的な請求根拠を示さなければなりません。利用明細などを示さない請求は、たとえそれが本当のことでも不正な請求。支払う必要はありません。
詐欺師は受信者の思い込みを利用して、とにかく連絡させ、それからじっくり落としにかかろうとします。指定された番号に電話をかけてしまうと、「今日中に支払えば間に合う」などと急かしたり、「このままだと法的措置をとらなければならず、会社や自宅に伺うことになる」などと言って脅し、支払いを強要しようとします。一度支払ってしまうと、今度は追加費用や別のサイトの分などといって繰り返し請求が続き、だまされたことに気づく頃には、数十万~数百万、中には1千万円を超える額を支払ってしまったケースもあります。
・9回にわたり計1120万円をだまし取られた静岡県の会社員
静岡の男性会社員は今年4月、以前に利用した出会い系サイトのことだと思い込んで電話をかけてしまい、電話口の男に強要され45万円余りを振り込んでしまいました。男からは、その後も別サイトの未納分などと再三連絡が入り、9回にわたり計1120万円をだまし取られました。
・90回にわたって計1690万円をだまし取られた兵庫県の大学生
兵庫の大学生は7月、ゲームの代金のことだと思い込んで電話をかけてしまい、電話口の男から「このままだと裁判になる」などと脅され、数万円を振り込んでしまいました。男からは、その後も新たな未払いが判明したなどと電話が入り、90回にわたって計1690万円をだまし取られました。
・6回にわたって1018万円をだまし取られた福島県の女性
同じ7月、福島の女性会社員は「サイトの無料期間が終了して料金が発生した」というメールを信じて電話。電話口の男の指示に従い、現金を送ることのできないはずのエクスパック(定型郵便小包)で17万3000円を送ってしまいました。その後も「別の会社の分も残っている」とか「支払わないと裁判になり、調査費や弁護士費用がかかる」などと連絡があり、6回にわたって1018万円をだまし取られました。
・2回にわたり計15万円をだまし取られた埼玉県の男子中学生
架空請求は中学生の被害者も出ています。埼玉の男子中学生の携帯電話に8月、「動画サイトの料金滞納がある」とのショートメールが届きました。心当たりのあった男子生徒は電話をかけてしまい、電話口の男に「振り込まないと家まで行く」と脅され、5万円を振り込んでしまいました。再度連絡したところ、別の動画サイトの分もあると言われ、さらに10万円を振り込み、だまし取られてしまいました。
★教訓-->「絶対に電話をかけない」「信頼できる人に相談を」
架空請求被害にあわないためには、心当たりのない請求や請求根拠を示さない請求は無視することです。こんなメールが届いて不安になってしまった方や心当たりのある方は、つい相手に電話をかけて確認しようとしてしまいがちですが、それが詐欺師の狙い。記載された連絡先には絶対に電話をかけないようにし、信頼できる人に相談しましょう。
架空請求に限ったことではありませんが、この手の詐欺被害者の多くに共通するのは、誰にも相談することなく行動してしまった点です。全国の都道府県警では、生活の安全を守るための相談窓口を用意し、いつでも相談に応じてくれます。メール記載の電話番号ではなく、全国共通の短縮番号『#9110』を押して、所轄の警察本部警察総合相談室に相談しましょう。各地の消費生活センターも、あなたの相談にのってくれます。
■事例2:「サーバー壊れた金払え」~損害賠償を求める架空請求
ヤフーをかたり、サーバーの修理代金を要求するメールを送って電子マネーをだまし取ったとして、7月に東京の会社役員の男とアルバイトの男が詐欺容疑で大分県警に逮捕されました。男らが暗躍していたという3月頃から、巷ではこんな手の込んだ架空請求メールが飛び交っていました。
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同社のカスタマーセンターをかたり、同社の会員あてに具体的な内容が書かれたメールが届いたため、すっかり信じてしまった方も多かったようです。
・電子マネーや現金6万9千円~40万円を送金したユーザーたち
男らの直接の逮捕容疑となった大分の女性会社員は、7月に6万9千円分の電子マネーを送っていました。5月に被害にあった北海道の女性会社員は、6万9千円の支払い後、さらに「ハードディスクが破損したため修繕費が必要」とのメールが届き、今度は現金14万円を送金したそうです。3月に被害にあった埼玉の男性は、これらに加え、2か月後にさらに40万円を振り込む羽目になりました。
★教訓-->「支払う前に(ホンモノ)のヤフーに連絡を」
ヤフーでは、このような支払いを促すメールを送信することはありません。身に覚えのない料金の支払いを促すメールが届いた場合には、支払ったりメールに返信したりせず、同社に報告してほしいと呼び掛けています。下記リンク先にも通報フォームのボタンがあります。
・Yahoo! JAPANを装う不正な請求にご注意ください(Yahoo!セキュリティセンター)
http://docs.yahoo.co.jp/info/notice37.html
モニター会社を装って液晶テレビがもらえるという嘘のメールを送り、応募した男性から送料名目で5000円相当の電子マネーをだまし取ったとして、東京の無職の男が10月、警視庁に逮捕されました。
7~8月にかけて、大阪市内の実在する会社をかたり、シャープのデジタル液晶テレビAQUOS(アクオス)や東芝のREGZA(レグザ)がもらえるというメールが出回っていました。これがそのひとつです。
誘導先の応募ページは、「aquos100.info」や「regza100.info」「regzapre.net」と、いかにもそれらしいドメイン名で開設されていました。実際に応募した方の話によると、すぐに当選の通知が来て、送料5000円をWebマネーで入金するよう指示されたそうです。この少し前には、ノートパソコンなどが当たる「Prize-Navi.jp」や「Present-Navi.jp」などもあり、こちらは送料3000円を要求して来たそうです。どちらも1件当たりの稼ぎはわずかですが、各社の報道によると、逮捕された無職の男は同じ手口で約400万円もだまし取っていたということです。
・数十万~数百万円。中には1千万円を超える被害も
この懸賞・当選詐欺も、数十万~数百万円という高額被害が出ており、中には1千万円を超える被害者もいます。今年4月、兵庫の男性のもとに、利用していた出会い系サイトから1260万円が当たったとのメールが届きました。出会い系のポイントを購入すれば当選金がもらえるという話を信じてしまった男性は、その後の1か月あまりの間に、61回にわたって計1245万円を振り込んでしまいました。
出会い系サイトや、それと連携している懸賞サイトの中には、このような手口で現金をだまし取るところも多く、先月は333万円の当選メールを信じた和歌山の女性が、受け取りのために17万3000円を振り込んでしまいました。同じ333万円の受け取りのために、大分の男性などは計21回、450万円も振り込んでいます。詐欺師たちは、相手がだまされたと気が付くまで、しつこく絞り取ろうとするのです。
★教訓-->「当選金をもらうために大金を払う」愚に早く気付こう
出会い系と並んで多い迷惑メールが、おまとめローンや無審査融資をうたう貸金業者のメール。うっかり申込手続きをしてしまうと、思いもよらないことが起こります。お金は借りられるものの法外な利息が付いてくる闇金業者ということもありますが、端からお金を貸す気など全くない詐欺師たちが待ち受けていることがあり、彼らは時に、こんなメールまで送って来ます。
イオンならメジャーどころなので安心と思ってしまった方はアウト。本物は「イオンクレジットサービス株式会社」で「イオンクレジット株式会社」ではありません。紛らわしい名前を使ったり本物に似せたサイトを用意したりと、分かってしまえば怪しすぎる業者です。ここまで極端なことはしないまでも、詐欺の香り漂う無登録業者たちのお誘いがたくさんあるので気をつけなければいけません。詐欺師たちは、融資するから保証金を送るよう指示したり、信用度の確認などと言って他社で借りてこさせたりと、無茶苦茶な要求を出して来ます。
・融資どころか何万円も振り込ませてドロン
4月に携帯サイトで10万円の融資を申し込んだ滋賀の女性は、返済が滞った場合の保証金名目で3万円の振り込みを指示され、2回にわたって計6万円を振り込みました。8月にネットで50万円の融資を申し込んだ滋賀の男性は、保証人の代理人代金などの名目で、3回にわたって12万円を振り込みました。いずれもお金は借りられず、業者とはその後連絡が取れなくなってしまったそうです。
★教訓-->「融資前の保証金や手数料請求はあり得ない」と知ろう
■事例5:「会員情報の更新案内」~存在しない手続き求めるYahoo!のフィッシング
銀行などかたる偽のメールを送りつけ本物そっくりの偽のサイトに誘導し、アカウント情報やクレジットカード情報、個人情報などを入力させようとするフィッシング。今年は、Yahoo! JAPANをかたるフィッシングが大量に発生し、多くの方がクレジットカード情報などをだまし取られてしまいました。Yahoo! JAPANをかたるフィッシングでは、「重要なお知らせ」などと題して、こんなメールがYahoo!メールに送られてきます。
Yahoo!オークションの出品など、ヤフオクの機能をフルに利用するためには、有料のプレミアム会員に登録する必要があります。そのためには、会費を引き落とすクレジットカードか銀行口座の情報を入力しなければなりません。このプレミアム会員は、いったん登録すれば後は自動的に更新されるので、更新手続きが必要になることはないのですが、そういう事情を知らないと、「更新が行われない場合、出品制限等の不具合を起こす場合もあります」という脅し文句に慌て、メールに記載された偽サイトのリンクをクリックしてしまいます。
別のフィッシングメールでは、「Yahoo!オークションを今後も継続してご利用いただくためには、Yahoo! JAPAN ID ユーザーアカウント継続手続きが必要です」との文言で、「ユーザーアカウント継続手続きページ」と称したリンクをクリックさせようとします。この「Yahoo! JAPAN ID」もそのままずっと利用でき、継続手続きなどというものはないのですが、手続きしないとサービスが利用できなくなってしまうと思い込み、慌ててリンクをクリック。すっかりだまされて、ないはずの更新手続きを行ってしまいます。詐欺師たちはもちろん、盗み取った情報を悪用しようとします。実際、Yahoo!のフィッシングでだまし取られたクレジットカードが、不正に使われたという被害も出ています。
★教訓-->「錠マーク表示」「ドメイン」の確認を
Yahoo!のフィッシングサイトは、いずれも正規のサイトである「yahoo.co.jp」のドメインとは異なり、重要な情報を入力する際にブラウザのステータスバーなどに必ず表示されるはずの錠マークの表示もありません。Yahoo!に限ったことではありませんが、フィッシングサイトは錠マークの表示とドメインの確認だけで、ほとんど全て回避できるので、利用者の方はぜひ覚えて履行してください。
(執筆:現代フォーラム/鈴木)
【参照サイト/記事】
・気をつけよう! フィッシングメールQ&A(Yahoo!セキュリティセンター)
http://security.yahoo.co.jp/qa/index.html
・実録! 国内ユーザーを狙うフィッシング(2009/08/30)