スマートフォンを使用していると、やがて新しい端末に買い替える時がやってきます。故障や紛失、盗難、スペック不足、より魅力的な新機種の登場など理由はいろいろですが、端末を変えても連絡先やアプリはこれまでと同じように使いたいと思うことでしょう。今回は、機種変更時のスマホ環境の引っ越しについて解説します。一部には、セキュリティ上事前に手続きしておかないと、簡単には移行できないものもあるので注意が必要です。
<INDEX>
■携帯電話の平均使用年数は「4.4年」
■「基本データ」を移行する
キャリア提供のアプリ/OS付属のアプリ/端末メーカー製のアプリ/サードパーティ製のアプリ
■「アプリ」「アプリデータ」を移行する
■「認証が必要なサービス、アプリ」を移行する
設定やデータがクラウド上に保存されているサービス/「2段階認証」を利用しているサービス/機種変更に伴う作業は「3パターン」
■「LINE」を移行する
「アカウント」の引継ぎ/「トーク履歴」のバックアップと復元
<以下本文>
内閣府が2017年3月に実施した「消費動向調査」によると、スマートフォンを含む携帯電話の平均使用年数は4.4年。買い替えをした主な理由は、故障したからが38.8%、上位(高級)品目が欲しかったからが36.5%であるそうです。
故障には至らずとも、充電を繰り返すとバッテリーは劣化し、1年から1年半もすると目に見えて減りが早くなります。バッテリーを交換すればよみがえりますが、そのころには、性能面や機能面に不満が出てくるかもしれません。特に保証期間を過ぎてからの故障は、修理代がバカにならないうえ、2~5年でサポートが打ち切られてしまうという問題も出てきます。ソフトウェアのサポートが終了すると、深刻な問題が見つかってもアップデートされません。ハードウェアのサポートが終了すると、修理を受け付けてもらえなくなってしまいます。そうなると、否が応でも買い替えなければなりません。
・消費動向調査(内閣府)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/menu_shouhi.html
機種を変更した後、これまで通り連絡先やアプリが利用できるようにするためには、新しい端末をセットアップし、そこに古い端末のアプリやデータを移します。端末やアプリによっては、新旧2台の端末をWi-FiやBluetoothで接続し、直接転送できるものもあります。しかし汎用的な方法としては、古い端末から、メモリカードやパソコン、クラウド上にアプリやデータをいったんバックアップし、そこから新しい端末に復元することで移行します。
バックアップや復元を行うためのアプリには、携帯電話会社(キャリア)が提供するもの、端末メーカーが提供するもの、OS付属のもの、サードパーティ製のものがあり、どれを使用しても連絡先やスケジュール、撮影した写真やビデオなどの基本的なデータを移すことができます。
●キャリア提供のアプリ
キャリアが提供するアプリは、NTTドコモの「SDカードバックアップ」「ドコモデータコピー」、auの「auバックアップアプリ」「データお預かりアプリ」、ソフトバンクの「あんしんバックアップ」などがあり、端末にプリインストールされていることも多く、手軽に利用できます。バックアップ先は、メモリカードやクラウドです。復元する新しい端末のキャリアやOSが、古い端末のそれと異なる場合、アプリが利用できなかったり、制限があったりすることもあるので、使用する場合は事前に確認しておきましょう。
図2 キャリア提供のバックアップアプリ:左からデータお預かりアプリ(au)、あんしんバックアップ(ソフトバンク)、ドコモデータコピー(NTTドコモ)
●OS付属のアプリ
アップルのiPhoneは同社のクラウドサービス「iCloud」を使用して、Android端末の場合はグーグルの「Google Drive」を使用して、バックアップと復元を行う機能を標準で提供しています。同じOS間であれば、基本的なデータやこの機能に対応するアプリの諸設定、データをバックアップし、新しい端末に移すことができます。ただし、復元先は、同じOSでなければいけません。また、データ量が多い場合は、容量オーバーになることがあるので注意が必要です。無料で使えるiCloudは5GBまで、Google Driveは15GBまでとなっており、それ以上の容量を使用する場合は有料です。
図3 iPhone、Android付属のバックアップ機能:iPhoneのiCloudバックアップ(左)、AndroidのGoogleアカウントバックアップ(右)
●端末メーカー製のアプリ
端末メーカーがプリインストールしている、あるいはアプリストアやサポートサイトで配布しているアプリがあります。アップルの「iTunes」や、ソニーの「Xperia Companion」、サムスンの「Smart Switch PC」、ファーウェイの「HiSuite」などがそれです。パソコンにバックアップする機能や、端末メーカー製のアプリのバックアップに対応しているのが大きな特徴です。例えばiTunesの場合には、パスワードを付けてiPhoneをバックアップすると、保存したパスワードやWi-Fi設定、Webサイトの履歴、ヘルスケアデータなどもバックアップと復元ができるようになります。iPhoneからiPhoneに機種変更する場合には、最も早く簡単で確実な移行方法なので、MacやWindowsをお持ちのiPhoneユーザーは、ぜひ利用してください。
図4 パソコンのあるiPhoneユーザー必携の「iTunes」:「iPhoneのバックアップを暗号化」でほぼ元通りの環境を復元できる
●サードパーティ製のアプリ
キャリアやOS、端末メーカー以外からも、有料・無料のアプリが提供されています。機能は製品によって異なりますが、メモリカードやクラウド、パソコンを介して、あるいは新旧端末間で直接、データを移行する機能を提供します。キャリアやOSが異なる場合の移行に利用できるものもあるので、該当する方は検討してみてください。
例えばアップルが「Google Play」で配布する「Move to iOS」は、Wi-Fi経由でAndroid端末からiPhoneなどのiOS端末に、連絡先やスケジュール、写真、動画などを移すことができます。グーグルが「App Store」で配布する「Google Drive」のバックアップ機能を使うと、連絡先とスケジュール、写真、動画をGoogle Driveなどのクラウドに保存し、Android端末から利用できるようにします。iOSとAndroid、Windowsに対応した情報スペース社の「JSバックアップ」は、パソコンやクラウド、メモリカードを使い、キャリアやメーカー、OSを問わない端末のバックアップと復元が行えます。
図5 サードパーティ製のバックアップアプリ「JSバックアップ」:Dropboxなどのクラウドストレージ経由で、iPhone(左)/Android(右)間のデータ移行も行える
アプリやアプリデータが引き継げるかどうかは、端末やアプリ次第です。アプリの中には、新しい端末をサポートしていないものや、すでに入手できなくなってしまったものもあるので、事前に確認しておきましょう。特にOSが異なるiPhoneとAndroid間の移行では、同じアプリがない、あってもデータが移行できないというケースがあるので注意が必要です。キャリアや端末メーカーが提供しているアプリも同様、移行先の端末では利用できなかったり、機能に制限があったりすることがあります。
iOSやAndroid標準のバックアップ機能に対応しているアプリは、OSの機能を使ってバックアップしておくと、同じOS間でデータや設定を復元することができます。自前のバックアップ機能を持つアプリは、それを使って移行します。代表例として、人気のコミュニケーションアプリ「LINE」の移行方法について後述します。
●設定やデータがクラウド上に保存されているサービス
多くの方が利用しているアップルやグーグル、マイクロソフトが提供するさまざまなサービス、TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSは、設定やデータをクラウド上に保存しています。Webサービス、iOSアプリ、Androidアプリに関係なく、アカウントにログインすれば、以前と同じようにサービスを利用できます。利用していたサービスとログインに必要なID・パスワードをリストアップしておきましょう。
●「2段階認証」を利用しているサービス
本人確認手段やアカウントのリカバリー手段に、SMSやキャリアメールを使用しているサービスは、電話番号が変わるとSMSが、キャリアが変わるとキャリアメールが利用できなくなることをお忘れなく。事前に別のものに変更しておくか、バックアップ手段を追加しておきます。
端末やインストールしたアプリが認証手段になっている場合も同様です。移行後も旧端末が利用できる状態であればよいのですが、下取りに出してしまうと認証手段がなくなってしまいます。Apple IDの「2ステップ確認」や「2ファクタ認証」、Googleアカウントの「2段階認証」が設定されている場合は、特に注意してください。
唯一のアクセス手段だった旧端末が利用できず、なおかつ登録した電話番号でSMSが受け取れない状況になると、これら追加の認証を行うことができず、新しい端末をスムーズにセットアップできなくなってしまいます。旧端末がなくてもログインできるように、事前に利用可能な他の認証手段を追加しておきます。あるいは、「他の認証手段に変更しておく」「追加認証を解除しておく」「追加認証の代替や復旧手段に利用できるバックアップコード(復旧コード)を用意しておく」などの方法で、対処しておきます。
2段階認証を利用している他のサービス、オンランバンキングのアプリ、おサイフケータイやApple Payなども同様です。機種変更後に再登録するだけのものもあれれば、事前に旧端末で移行に必要な手続きをしておかなければいけないものもあります。
●機種変更に伴う作業は「3パターン」
機種変更に伴う作業は、おおむね以下の3パターンなので、利用しているものをリストアップし、機種変更前に行わなければいけない作業があれば済ませておきましょう。
(1) 事前の手続きは不要で、新端末で再設定する
(2) 旧端末で設定を解除(削除)し、新端末で再設定する
(3) 旧端末で何らかの移行・移管手続きをし、新端末で移行後の手続きをする
アプリの機能を使う代表例として、LINEの移行方法をご紹介します。LINEは、旧端末のアプリに登録したメールアドレスとパスワード、電話番号を使用して新しい端末にインストールしたアプリにログインすると、プロフィールやタイムライン、友だちリスト、スタンプなどの大半のデータを引き継ぐことができます。ただし、コインの残高をiPhone/Android間で引き継ぐことはできません。過去のトークの内容は、iPhone間、Android間であれば、後述する「トーク履歴のバックアップ・復元」で引き継ぐことができますが、iPhone/Android間では引き継ぐことができません。
●「アカウント」を引き継ぐ
LINEの新規登録には、メールアドレスとパスワードは必要ありません。引継ぎやWebサービス、PC版LINEの利用などに際して必要になります。未登録の場合は、[その他](…)→[設定](歯車)→[アカウント]と進み、[メールアドレス]と[パスワード]で設定します。登録したが忘れてしまったという場合は、ここで確認、再設定することができます。
図6 アカウントページ:LINE移行の基本は、電話番号とメールアドレス、パスワードの3点セット。
iPhone(左)、Android(右)
新しい端末にLINEを起動して[ログイン]をタップし、設定したメールアドレスとパスワードでログインして指示に従うと、引継ぎが完了します。
電話番号が不要なFacebook認証の場合、機種変更後に電話番号が変わる場合、iTunesやiCloudバックアップから復元する場合には、旧端末の設定ページから[アカウントを引き継ぎ設定]に進み、[アカウントを引き継ぐ]をオンにしておく必要があります。オンにしてから24時間経過すると自動的にオフになってしまうので、旧端末が利用できなくなってしまう場合は注意が必要です。24時間以内に引き継ぐことができない場合は、一時的に利用可能なLINEに未登録の電話番号(音声通話も可)を登録するなどして、引継げるようにしておきます。
●「トーク履歴」のバックアップと復元
LINEの過去のトーク内容は端末内に保存されており、アカウントを移行すると旧端末のデータは削除されてしまいます。設定ページにある[トーク履歴のバックアップ・復元]を使うと、事前に端末内の全てのトークをiPhoneはiCloudに、Android端末はGoogle Driveにバックアップし、引継ぎ後に復元することができます。ただし、トーク履歴の引継ぎは、同じiPhone間、Android間のみで、iPhone/Android間の引継ぎはできません。
図7 トーク履歴のバックアップと復元:Android(右)は、この画面で全てのトークのバックアップと復元が行えるほか、個々のトーク別のバックアップと復元、テキストでの保存をサポートしている。
iPhone(左)は、この画面で全てのトークをバックアップし、LINEのセットアップ時に復元する(セットアップ後の復元メニューがない)。個々のトークのテキスト保存はサポートしているが、トーク別のバックアップと復元はできない。
(執筆:現代フォーラム/鈴木)