今年はまるで超高速ジェットコースターに乗っているようで、次から次に降りかかる課題に全力集中し、ハッと気づいたら師走だった。
先月の第2週は週末ぎりぎりにようやく課題を終えてブラジルへ。第3週の週末はやはりぎりぎりまで仕事をしてバリへ。といっても、ブラジルは四谷にあるサンバの店で、ブラジルの地酒をライムで割った飲み物を飲んで、みんなで踊りまくったというだけなのだが。
四谷は弊社創業の地で、ビルの一室に間借りして会社を始めた。サンバの店を出た後、一人で懐かしい路地に入り、毎日通っていたビルを探した。M製薬本社ビルの隣で、確かにそこにビルはあったが、外観も名前も変わってしまっていた。1階にあった酒場「どびろく」も、フランチャイズの居酒屋に変わっていた。どびろくは、仕事の後、間借り先のH社長によく連れて行ってもらい、四方山話で盛り上がった。H社長のもとには風変わりな人がたくさん集まり、オフィスは梁山泊のようだった。
大手広告代理店をリタイア後に風来坊をしていたKさん。英国の著名ミュージシャンの恋人で小説を書いていた美女さん。活版印刷時代からのベテラン編集者で童話作家でもあったHさん、少年のような瞳をしたスポーツ紙記者、アジア系某業界ライター、端正なインテリ印刷屋さん、横柄な大手出版社編集者殿などなど。理想と現実に汗や涙や鼻水を混ぜ込んでミキサーにかけて攪拌しているような日々だった。もう20数年も前の話だ。
路地を一周し、あちこちに、H社長、Hさん、Kさん、Aさん、Oさんの顔や姿が見えるようで、懐かしさに胸が締め付けられた。現実には、H社長、Hさんはすでに他界していて、皆が集う舞台だったオフィスも酒場も消えてしまっているのだが。
神々の島・バリは初訪問。週末を利用しての慌ただしい旅だったが、ビンタンビールを飲み、ナシゴレンを食べ、ケチャックダンスを見、スパに癒されて帰ってきた。今から年末にかけてやり遂げるべき課題を思うと暗澹とした気持になるが、なんとか耐えて生きていけば、またいつかバリに行けるかもしれないと思うと、頑張れそうな気がする。