人気オンラインゲーム「ラグナロクオンライン」が不正アクセスを受けたというニュースで、はじめてMMORPGなるものを知った。『数万人ものゲーマーが同時参加して進めるオンラインゲーム』という説明に、壮大なスケールで展開する華やかなゲームというイメージをもった。このゲームの日本での独占的運営権をもつ運営会社も、未経験で発足してわずか3年で100万ID規模に急成長させたといい、IT産業の花形という印象も抱く。
(既報記事)
・「ラグナロクオンライン」に不正アクセス、データベース502件改ざん(06/29)
しかしMMORPGについて少し調べると、不正の横行、ずさんな情報管理、依存症、引きこもり、廃人などというマイナスの言葉が次々に飛び出してくる。IT産業の優等生と言うには、なかなか手ごわい問題をかかえる分野であることがわかってくる。
●「時間」を限りなく消費するオンラインゲーム
ある掲示板には、有名私立中に通う息子がオンラインゲーム(以下OLG)にはまり、まったく勉強をしない、このままでは不登校になってしまうという悲嘆が書かれていた。またあるサイトでは、休日ばかりか勤務中もゲームを止められない会社員が、リストラに怯える気持ちを綴っていた。実際にOLGが原因で退職に追い込まれ、家に引きこもってゲーム三昧の日々を送る女性の空恐ろしい廃人ぶりを記した投稿もある。
彼らは、ゲーム以外何も手に付かなくなり、自分で止めたいと思っても止められない状態に陥ってしまっている。アルコール依存症では、アルコールが身体を痛めつけ、最後には心身が侵されて廃人になってしまうが、ゲーム依存症の場合は、ゲームによって、お金では買えない貴重な「時間」が限りなく消費され、リアルの人生が破壊される恐れがある。
●引きこもり中高生の半数以上はゲーム依存症
ゲーム依存は、とりわけ子どもへの影響が深刻だ。引きこもりや不登校の中高生の半数以上がオンラインゲーム依存症だという民間調査会社の報告もある。寝ること食べること以外はすべてゲームに費やし、冒険も友情もすべてゲームの世界で経験したつもりになってしまっている子どもたち。彼らを、現実世界に呼び戻す方法はないものか。
ラグナロクオンラインの開発国であり、IT先進国の韓国では、早くからオンラインゲームが爆発的に流行・普及しており、それに伴って犯罪やゲーム依存、ネット依存の問題が浮上し、解決策が模索されてきた。オンラインゲームに熱中する子どもを対象に、夜、一定時間になると回線が切断される「オンラインシャットダウン制度」なども、その1つだ。
(参照サイト)
・韓国のインターネット事情 ─ トラブル事例から対策へ
http://www.iajapan.org/hotline/seminar/20050324.html
●子どもたちをリアル世界へ取り戻すために
韓国ではさらに、このオンラインシャットダウン制度を一歩進めて、青少年の夜間のオンラインゲームを規制する「青少年保護法改正案」を法制化しようという動きも出ている。アンケートではインターネットのヘビーユーザーの過半数が賛成しているという。実効性に問題があり、見送られる可能性も高いというが、子どものゲーム依存に対し、社会問題として真剣に取り組む姿勢は見習いたいものだ。
日本でも、ゲーム依存症に対して真摯に取り組んでいる人たちはいる。優れたサイトもあり、そこに設けられたリンク集をたどれば、効率的に良質なサイトや書籍に出会うことができる。物理的遮断も大切だが、依存におちいっている子どもの精神面のフォローなしで行なわれると、元のもくあみになってしまうことも多いようだ。
夏休み本番を迎え、一日中ゲームに没頭する子をもつ保護者の悩みは深いことだろう。高度なインターネット社会が産んだこのやっかいな病いについて、親も学びつつ、慎重に対していきたいものだ。(中村)