6月18日に明らかになった米国の4,000万件のクレジットカード情報流出は、米国史上最大の流出事件だった。
●流出元に対して起こされた情報開示を求める集団訴訟
流出元は、決済情報処理をしているカードシステムズ社である。同社はカード会社との取り決めに反して、4,000万件の情報を”研究目的”で保管していたという。しかも、ネットワークの安全確保に必要な措置をとっていなかったようだ。
腑に落ちないのは、流出が明らかになったものの、その原因など事実関係が明らかにされていないことだ。米国カリフォルニア州では29日、カードシステムズ社に対して情報開示を求める集団訴訟が起こされた。
●日本のカード利用者の被害は約740件、1億1,000万円
米国での情報流出とはいえ、日本のカード利用者への影響も大きい。米国の加盟店でのクレジットカードの利用に加え、米国のインターネットショップでクレジットカードを利用した場合も流出の可能性があるからだ。
経済産業省の発表(28日)によると、約7万7,000人分の日本のカード利用者の情報が流出した可能性があり、約740件、約1億1,000万円の不正使用があったということだ。
経済産業省は、社団法人日本クレジット産業協会会長に対し、「今般の海外における情報流出の事案を契機に、海外におけるクレジットの情報管理の実態、信用情報機関の実態、クレジット取引に係る情報セキュリティの実態について、的確に把握し、各社に対して関係情報の提供が可能となるような体制整備に努めること」を求めている。どのように体制が整備されていくのか見守りたい。
●被害に遭わないためにできること
今回のクレジットカード情報流出は規模が大きいため、クレジットカード業界を所管する経済産業省や不正利用を取り締まる警察庁が素早く対応した。カード利用者に被害が及ばぬよう配慮された。しかし、いつもカード利用者が守られるとは限らない。
被害に遭わないためには、クレジットカードを利用した買い物について領収書を保管しておき、毎月送られてくるクレジットカードの利用明細を一つ一つ確認することが必要だ。自宅で利用明細書を見る時間がないというのであれば、カードの利用状況をWEB上で確認するサービスを利用することもできる。
もし、心あたりのない利用を発見したらすぐにクレジット会社に連絡をとること。早ければ早いほどよい。素早く連絡するためには24時間受付の電話番号を調べておきたい。備えあれば憂いなし。自分だけは被害に遭わないという考えは捨て、もしものときにはすぐに対応できるようにしたい。
●平成15年度のカード偽造による不正使用額は271億円
日本クレジット産業協会の統計(平成15年度末)によると、クレジットカードの発行総数は、2億6,000万枚(確定値)、キャッシングとショッピングをあわせた信用供与額は34兆1,000億円(推定値)に及ぶ。そして同年のカード偽造による不正使用額は、271億円。信用供与額全体からすればわずかな割合だが、庶民の感覚からすると大層な額だ。
クレジット業界各社には情報流出や不正使用が起きないよう、しっかりとがんばってもらいたい。同時に、我々カード利用者も自分のカードが不正使用されないよう日頃から警戒したい。自分の財産は自分で守らなければ、誰も守ってくれない。(原)
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