7月23日、楽天市場に出店しているAMC(株式会社センターロード運営)というショップから顧客情報が流出していたことが明らかになった。当初、123件とされていた流出件数は3万6,239件に拡大。さらに楽天市場だけでなく、ビッターズでも流出していたことが確認され、その件数は8,456件と発表された。
・楽天の店舗から、クレジットカード番号を含む123件の個人情報流出(2005/07/26 )
・楽天市場の顧客情報流出、クレジットカード番号を含む3万6,239件に拡大(2005/08/08)
・楽天の店舗「AMC」、ビッダーズでも8,456件の顧客情報流出判明(2005/08/11)
●流出の経緯は藪の中
この顧客情報流出を報道した記事(毎日新聞7月28日朝刊)では、楽天からの顧客情報の流出は10万件以上に及び、クレジットカード会社名と16ケタのカード番号、購入商品、指定宅配時刻のメモまで含まれていたとしている。さらに、事件に関する情報をもつ男性の証言として、「楽天関連会社の元社員から購入を持ちかけられ、1件3,000円で購入した」という言葉が紹介されている。
だが、楽天は7月28日の発表で、「これらの報道についての事実関係は確認されていない」「弊社内部から流出した可能性は限りなく低い」と、毎日新聞報道を全面否定している。一方、AMCも、7月30日更新の自社サイトの説明文で、「弊社よりの人為的要因から漏洩した事とは思えない」と述べ、自社からの流出を否定している。ビッダーズでの流出についても同様で、AMC、ビッターズ共に流出元であることを否定している。
楽天もAMCもビッターズも、顧客情報が流出した事実は認めているが、流出元については自社ではないと主張しているわけである。現在、発覚から1か月半を経過しているが、情報が漏えいした経緯は未解明のままだ。
●楽天、ビッダーズでの営業停止が続くAMC
流出発覚後、AMCは楽天市場、ビッダーズでの営業を停止し、現在も停止したままである(9月8日現在)。AMCはこの両モール以外にもオンラインショップを持ち、そこでは営業を続けているので、売上がゼロになるというわけではない。だが、もし楽天、ビッダーズのみで営業している小さなショップであった場合、1か月以上の営業停止が続き、しかも再開の見通しが立たないとすると、壊滅的打撃をこうむることは間違いないだろう。
こうしたことから、AMCへの同情論も耳にするようになった。流出事故は事故として解明努力を続けながら、ショップが顧客情報流出を予防するのに必要十分な措置をとったことを確認できれば、モール内ショップの営業を認めてもいいのではないかという意見である。だが、原因が解明されないままの営業再開は、消費者保護の観点から許されることではないだろう。
●消費者保護とショップ保護の両立を
しかし、その同情論には、弱い立場に置かれているショップの不安が読み取れる。もし万一、うちの店で顧客情報の漏えいが起きたら。原因不明のまま、営業停止ということになったら、それがずっと続くとしたら…? モールでのショップ運営は小資本でも可能なことから、小さなショップも数多い。小さな店のオーナーが地道に積み上げてきた信頼も、顧客情報漏えいによって一瞬で消えてしまうわけで、その不安は想像に難くない。
いまや球団も持つ巨大資本となったモール運営側には、消費者保護とショップ保護の両立という課題が示されているのだと言える。消費者が安心して買い物ができる環境を整えることはもちろんだが、同時に、ネットショップが安定して営業できる環境を整えていく責任も、モール運営側は負っている。
2005年版『インターネット白書』によると、ネットショップの72.4%は、ショッピングモール出店の形態でショップを運営している。現状では、主要なショッピングモールの方針が日本のネットショップの方向を決めると言っていい。モール運営側が、果たすべき責任を誠実に果たしていくかどうか、見守っていきたいと思う。(原)