パソコンの故障や紛失は、時として取り返しのつかない事態を招きます。ハードウェアなら修理や買い換えで、ソフトウェアなら再インストールで、元の環境を取り戻すことができますが、中に入っていた大切なデータはそうはいきません。壊れたデータの修復は非常に難しく、失ってしまうと二度と取り戻すことができない場合が多いのです。
大切なデータは、もしもの時に備えて自分で代替えを作成しておきましょう。予備を作成しておくことをバックアップといい、システムには専用のバックアップユーティリティが付属しています。データを失って後悔しないように、今日から定期的なバックアップを始めてみましょう。
<INDEX>
■バックアップと復元
■バックアップはどこにする?
・CD/DVD/Blu-ray
・USBメモリー
・外付けハードディスク
■バックアップの準備
・Windows 7/Vista
・Windows XP
★コラム:「完全バックアップ」と「差分バックアップ」
■バックアップからの復元
<本文>
データを失うのは、パソコンの故障や紛失ばかりではありません。システムやソフトウェアの不具合で失うこともあれば、うっかり削除してしまうといった人為的なミスもあります。また、感染したウイルスがデータを破壊してしまった、というケースもあります。いつ何が起こるか分からないので、大切なデータは常にバックアップを取っておき、いつでも復元(リストアー)できるようにしておきます。
ウイルス感染では、データ破壊は免れても、システムを初期化しないと修復できないほどのダメージを受けることがあります。ウイルスに感染しないまでも、長年パソコンを使用し続けていると、動作が重くなったり不安定になったりすることもあります。ハードウェアに障害がある場合は別ですが、このような場合も、改善に向けて試行錯誤を繰り返すより、システムを初期化してした方が手っ取り早く効果的な場合もあります。
システムの初期化は、パソコンに付属しているリカバリーディスクなどを使って行いますが、パソコンは文字通り購入直後の状態に戻ってしまうので注意してください。あらかじめバックアップを取っておき、初期化後にバックアップからデータを復元するようにしないと、大切なデータが全て消えてしまいます。
■バックアップはどこにする?
バックアップ先は、システムがディスクとして扱えるものであれば、たいてい利用できます。あなたのパソコンで利用できるメディアとコスト、バックアップを取りたいファイルの容量から、あなたに合ったものを選びましょう。
・CD/DVD/Blu-ray
メディア1枚あたりの容量は、CDが700MB、DVDが4.7GB(2層は8.5GB)、Blu-rayが25GB(2層は50GB)です。1枚当たりの単価が数十円からと安価なので、バックアップ容量が比較的少ない場合には、手軽に利用できるメディアです。メディアの耐久性は高いのですが、盤面の傷やほこりに弱いので、ディスクの取扱いは要注意。メディアには1回しか書き込めない「R」と書き換えが可能な「RW」があるので、購入時には注意してください。
・USBメモリー
現時点で256GBまでの各種容量の製品が発売されており、中容量以上の製品では、1GBあたり200円前後の価格になります。CD/DVD/Blu-rayに比べると割高ですが、高速で扱いやすいのが特徴です。
・外付けハードディスク
500GBクラスが5000円前後から、1TBクラスが1万円前後からと、1台あたりの単価は比較的高いですが、容量当たりの単価は最も安く、大容量のバックアップには最適です。衝撃に弱いので、持ち運びや取扱いは注意してください。
このほかに、LANに接続したネットワークドライブや、インターネット上のバックアップ向けオンラインストレージサービスなどもあります。ネットワークドライブが利用できるかどうかはソフト次第で、Windows附属のバックアップユーティリティの場合には、OSとエディションによって異なります。家庭向けのパソコンの場合には、利用できない可能性が高いです。バックアップ用のオンラインストレージサービスは通常、各社が提供している専用ツールを使用します。スピードに難がありますが、バックアップを遠隔地に保存するので、火災で全滅というケースも回避できます。
・Windows 7/Vist
Windows 7/Vistaは、標準でバックアップソフトを備えています。Windows 7は、コントロールパネルの[システムとセキュリティ]にある[バックアップの作成]で。Windows Vistaは、コントロールパネルの [システムとメンテナンス] にある [バックアップと復元センター] で、附属のバックアップユーティリティが起動します。
・Windows XP
Windows XPは、スタートメニューから[全てのプログラム]→[アクセサリ]→[システムツール]→[バックアップ]を選択すると起動します。Windows XP Home Editionの場合には、バックアップユーティリティは標準ではインストールされていないので、あらかじめCD-ROMから手動でインストールしておく必要があります。詳しくは、マイクロソフトの下記サポート技術情報を参照してください。
○サポート技術情報:Windows XP Home Edition の CD-ROM からバックアップ ユーティリティをインストールする方法(マイクロソフト)
http://support.microsoft.com/kb/302894/ja
Windows 7に付属しているバックアップユーティリティを使って、バックアップを作成してみましょう。
(1)「コントロールパネル」を開き「バックアップの作成」を選ぶ
[スタート]ボタンを押して[コントロールパネル]を開き、 [システムとセキュリティ] の項目にある [バックアップの作成]を選びます。バックアップを行うためには、管理者の権限が必要です。標準ユーザーのアカウントでログオンしている場合には、管理者の許可を求めてくるので、管理者アカウントのパスワードを入力します。
バックアップを初めて行う際は、[バックアップの設定]をクリックし、ウィザードの手順に従ってバックアップ先などを指定します。一度設定すれば、次回からは同じ設定で定期的に、または、[今すぐバックアップ] ボタンをクリックして手動で、バックアップを行えるようになります。
図1「コントロールパネル」画面
(2)バックアップ先を指定する
バックアップの設定ウィザードでは、最初にバックアップ先を指定します。バックアップを保存する場所を選択し、[次へ] をクリックします。
図2 バックアップ先を指定
(3)バックアップ対象を選択する
次にバックアップの対象を選択します。ディフォルトでは、[自動選択 (推奨)] が選択されており、全てのユーザーのライブラリやデスクトップ、Windowsフォルダ内のデータがバックアップ対象になります。このほか、システムを完全な状態に復元できるシステムイメージも作成され、定期的にバックアップを実行する、スケジュールが設定されます。これを選択した場合には、(5)のバックアップ設定の確認画面に進みます。
[自動選択 (推奨)] のバックアップ対象には、起動ドライブ以外のドライブは含まれません。ハードディスクを領域分割していたり、ドライブを複数接続していたりするような環境で、他のドライブにもバックアップしたいファイルがある場合には、[自分で選択する]を選んで対象を追加してください。最小限のデータだけをバックアップしたい場合も、こちらを選択して、必要なものを個別に指定します。
図3 バックアップ対象を選択:「自動選択」または「自分で選択」
(4)[自分で選択する]→個別に指定する
バックアップ対象で[自分で選択する]を選ぶと、バックアップしたいドライブやフォルダなどを個別に指定できます。
[データファイル]は、各ユーザーが自分のライブラリに保存したデータで、デスクトップやお気に入り、アプリケーションデータなども[追加の場所]として含まれています。
[コンピューター]の[ローカルディスク]は、各ドライブごとに、ドライブ全体またはドライブ内のフォルダを個別に指定できます。
[次のドライブのシステムイメージを含める]を選択するとシステムイメージが作成され、システムが動作を停止した場合にシステムそのものを復元できるようになります。Windowsのシステムやプログラムは、規定ではバックアップの対象外ですので、これらもバックアップしておきたい場合には、このシステムイメージを選択します。
図4 バックアップしたい項目を選んでチェックする
(5)設定を確認・終了し、バックアップを実行する
設定が終わると、[バックアップ設定の確認]画面が表示されます。
[スケジュールの変更]をクリックすると、バックアップを定期的に実行するスケジュールを変更できます(図5-1)。
設定内容を確認したら、 [次へ] または [設定を保存してバックアップを実行] をクリックして、バックアップを開始します。バックアップの所要時間は、ファイルの容量と保存先のメディアのスピードに大きく左右されます。早ければ数十分で終わりますが、数時間におよぶかも知れません。
図5-1 バックアップの設定を確認し保存する
図5-2 バックアップ進行中の画面
(6)バックアップが作成された
バックアップが作成されると、[ファイルのバックアップまたは復元]画面は次のようになります。次回に手動でバックアップを行う場合には、この画面の[今すぐバックアップ] をクリックすると、バックアップが始まります。
図6 バックアップが作成された画面
初回のバックアップは、対象となる全ファイルのバックアップを作成するので時間がかかります。これを「完全バックアップ」といい、2回目以降は、その後に追加または更新されたものだけをバックアップします。これを「差分バックアップ」といい、完全バックアップよりも短時間で終了します。
バックアップの保存先がハードディスクの場合には、完全バックアップも差分バックアップも1台のハードディスク内で完結しており、必要に応じて新しい完全バックアップが自動作成されるので、これらを意識する必要は特にありません。
一方、保存先にCDやDVDを選んだ場合には、完全バックアップの自動作成は行われません。どこかで完全バックアップを作り直して再スタートしないと、差分がどんどん増えて行ってしまうのです。保存先にCD/DVDを選んだ場合には、[ファイルのバックアップまたは復元]画面の左側に、[新しい完全バックアップを作成する]というオプションメニューが追加されます。これをクリックすると、新規に完全バックアップを作成することができます。以後は、この完全バックアップと、その差分バックアップのセットが、直近の状態を復元するためのバックアップになります。
バックアップの保存先には、最後にバックアップを行った時点の最新ファイルが全て保存されており、いつでも取り出すことができます。また、完全バックアップ以降の差分から、過去のバージョンを取り出すことも可能です。
(1)復元対象のファイルやフォルダを選ぶ
バックアップの作成と同じ手順でユーティリティを起動すると、バックアップの作成手順(図6)の画面が表示されます。ここで、[すべてのユーザーのファイルを復元] をクリックすると、全てのユーザーのファイルを復元することができます。この場合には、管理者の権限が必要なので、管理者の許可を求められたら管理者アカウントのパスワードを入力します。自分のファイルを復元する場合には、[ファイルの復元] をクリックし、ファイルの復元ウィザードを表示します。
図7の画面の中央のリストに追加したファイルやフォルダが、復元対象になります。[ファイルの参照]ボタンはファイル単位で、[フォルダの参照]ボタンはフォルダ単位でリストに追加します。[検索]ボタンをクリックすると、追加したいファイルやフォルダを検索することができます。
図7 復元したいファイルやフォルダを参照・検索して選択
(2)古いバージョンを復元したい場合
ファイルの復元ウィザードのディフォルト設定は、最新のバージョンが復元対象です。より古いバージョンを復元したい場合には、[別の日付を選択]をクリックします。過去のバックアップ履歴が表示されるので、復元したいバックアップの日付を選択します。
図8 図7で[別の日付を選択]をクリックとすると、この画面が現れる
(3)復元場所を指定する
復元ウィザードのリストに復元したいファイルやフォルダを追加したら、[次へ]をクリックしてファイルを復元する場所を指定します。[元の場所]を選択すると、バックアップした時のフォルダに復元されます。[次の場所]を選択して任意のフォルダを指定すると、そのフォルダ内に復元されます。[復元]ボタンをクリックすると復元開始です。
図9 ファイルを復元する場所を選ぶ
(執筆:現代フォーラム/鈴木)