国民生活センターは、2013年に全国の消費生活センター等が受け付けた苦情相談を分析し、公開しました。相談件数93.5万件のうち、最多は「アダルト情報サイト」に関するもので、3年連続の1位となりました。ネット通販で注文した商品に関するトラブルも急増しています。サイトに仕掛けられる罠の手口、ネット通販詐欺を見破るポイントをご紹介します。
<INDEX>
■消費者からの苦情相談、ネット関連が上位を独占
■アダルト情報サイト――仕掛けられる罠と予防対策
■ネット通販トラブル――詐欺を見破るポイント
<以下本文>
2013年に全国の消費生活センター等が受け付けた苦情相談は93万5224件で、そのうち最多は「アダルト情報サイト」に関する相談8万127件、次位は「デジタルコンテンツその他」に関する相談5万2073件だった(表1)。2012年に続き、インターネット関連が苦情相談の1,2位を占めることになった。
表1 相談が多く寄せられる商品・役務等の上位15項目(2013年度)
(出所:国民生活センター、注1)
図1は、苦情相談が多いインターネット関連の3項目(アダルト情報サイト、デジタルコンテンツその他、出会い系サイト)について、過去5年間の相談件数の推移をグラフ化したものだ。(注1)
図1 「アダルト情報サイト」「デジタルコンテンツその他」「出会い系サイト」相談件数の推移
・「アダルト情報サイト」が3年連続トップ
「アダルト情報サイト」に関する相談は、2011年(9万5622件)以降、3年連続で相談全体のトップを維持している。2012年は6万5374件(前年比で約3万件減少)、2013年は8万127件(前年比で約1万5千件増加)と大きな増減があるが、相談全体の1位は揺るがない。ちなみに、2009年、2010年の1位は「サラ金・フリーローン」(2009年9万3156件、2010年8万8968件)で、両年とも「アダルト情報サイト」は2位だった(2009年5万5237件、2010年8万5826件)。
・「デジタルコンテンツその他」は2年連続で2位
国民生活センターの集計では、内容の特定できないサイトの利用、オンラインゲームやギャンブル情報サイト、その他の情報サイト(占いサイト、懸賞サイトなど)に関する相談を「デジタルコンテンツその他」として分類している。2012年はオンラインゲーム等の相談が増加し、前年から2万5千件近くも跳ね上がった。2013年も5万2千件を超え、2年連続で相談全体の2位となった。
・「出会い系サイト」は減少傾向
「出会い系サイト」の2012年の相談件数は2万1134件で7位、2013年は1万3086件で12位だった。件数は減少したものの、SNSをきっかけとした相談の割合は増加傾向にある。SNSで友達申請を受けて承認した人に騙され、出会い系サイトとは知らずに登録してしまうといったケースだ。登録してしまうと、さまざまな理由を付けて、高額な料金を請求される事態となる。
・「詐欺的ネット通販」が急増
ここ数年の目立った傾向として、ネット通販で注文した商品(靴・運動靴、かばん、他の身の回り品、時計・時計付属品など)に関するトラブル相談の急増がある(図2)。相談内容は、代金を支払ったのに商品が届かない、注文した商品と違う商品が届いた、業者と連絡が取れない、など。もっとも目立つのは「靴・運動靴」に関する相談の増加で、2013年(7671件)は、2012年(3834件)の2倍を超えた。「かばん」「その他の身の回り品(財布やサングラス等)」も、この3年の間に2.5~3倍近く増えている。これら3項目の件数を合算すると、2013年は1万9588件となり、ネットトラブルの常連である「出会い系」の1万3086件を6500件も上回った。
図2 ネット通販(靴、かばん、財布など)に関する苦情が急増
3年連続トップの「アダルト情報サイト」、および最近の急増が目立つネット通販トラブルについて、その手口と対策を見ていこう。
アダルト情報サイトの苦情相談の大半は、「有料」という認識がないままサイト閲覧を進めるうち、いきなり「会員登録」画面が表示され、料金を請求されてしまったというものである。パソコンを起動するたびに料金請求画面が表示され、対処に困っているという訴えが、絶えることなく寄せられている。別名「ワンクリック詐欺」と言われるもので、スマートフォン(スマホ)普及に伴い、スマホからアダルト情報サイトに誘導される例も増加している。
同センターが紹介する最近の事例を見てみよう。子どもから高齢者まで、巧妙な誘導の罠にかかってしまう実態が垣間見える。(注2)
●アダルト情報サイトの罠(最近の事例から)
事例1: 娘が私のスマホでアニメを見ていたら、アダルトサイトに飛んでしまい、登録料の請求画面が表示された。対処方法を知りたい。
事例2: タブレット端末でアダルトサイトの年齢確認を押したら、入会登録となり、退会ボタンを押した。料金請求メールが来たがどうすればよいか。
事例3: 80歳代男性の相談例。パソコンで湿疹の薬について検索していた際、一覧に出たサイトをクリックしたところ、アダルトサイトにつながった。無料とあったので、サンプル画像をクリックすると「登録完了」画面が表示され、「正規料金は9万8千円だが、2日以内に支払うと6万8千円になる」と書かれていた。サイトに記載されていた業者の携帯電話に非通知で連絡すると、「電話番号を通知して連絡し直すように」と言われてしまった。請求画面も消えず、混乱して夜も眠れない。
事例4: スマホで無料動画を閲覧したら登録となった。業者に電話をかけたら20万円を請求され、クレジットカードで決済してしまった。
事例5: オペラ歌手のサイトからアダルトサイトに入ってしまった。業者に誤操作である旨を連絡したが、拒否され9万円を現金書留で送ってしまった。
・クリックさせようとする罠
上記いずれの事例も意図しないまま会員登録されているが、冷静に振り返ると、どこかで罠にかかり、クリックさせられていることに気づくはずだ。事例2では「年齢確認」、事例3では「サンプル画像」をクリック直後に、「入会登録」「登録完了」となっている。ワンクリック詐欺を仕掛けるサイトでは、こうした年齢確認やサンプル画像をクリックするボタンの近くに、わかりにくい形で「利用規約」が置かれている。そこに料金が明示されていれば、「はい」ボタンのクリックは、料金を支払う利用規約に同意することを意味してしまう。Webサイトで「はい」「いいえ」のクリックを求められる場面では、常に判断の責任が問われると考え、「安易なクリックはしない」ことを肝に銘じたい。
・業者に連絡させようとする罠
ワンクリック詐欺では「業者に連絡しない」ことが鉄則だ。連絡することで利用者のメールアドレスや電話番号を相手に知らせることになってしまう。業者側は、利用者から連絡してくるように罠を仕掛けている。まず、事例3にみるように、「2日以内なら6万8千円、それを過ぎると9万8千円」などと表示して支払いを焦らせる。焦る利用者の目につきやすい形で、業者のメールアドレスや電話番号が記載されている。利用者が飛びつきそうな「誤って登録してしまった場合」などというボタンも設置されている。利用者が「登録を解除してもらおう」と業者に連絡することを狙った仕掛けだ。
こうした誘導にひっかかって業者に連絡すれば、相手の思うツボである。用心して非通知で電話しても、事例3のように「電話番号を明らかにするように」と凄まれてしまう。業者に連絡した事例4と5では、けっきょく言われるままに支払いをしてしまっていることに注目してほしい。いったん支払ったものを取り戻すのは極めて困難だ。決して業者には連絡しないこと、身に覚えがない請求には応じないことを肝に銘じよう。
●ユーザーへのアドバイス
国民生活センターは、こうした詐欺にあわないための予防対策と、詐欺にあってしまった場合の対処法について、次のようにアドバイスしている。
(1) 無料と書かれていても安易にアクセスしない。スマホではアプリを安易にダウンロードしない。
(2) インターネットにアクセスできる機器にはセキュリティ対策をとる。子どもが使う場合はフィルタリングの設定をするなど保護者が確認し注意する
(3) 相手に連絡をとらない
(4) パソコンの画面に請求画面が張り付いた場合の対処法は、IPA(情報処理推進機構)のサイトを参考にする(注3)
(5) 請求された内容に納得できなければ、最寄りの消費生活センターに相談する
(6) 利用者が意図せずに画面に請求画面を張り付かせる行為や、個人情報を抜き取るアプリをダウンロードさせる行為は、犯罪になる可能性もあるので、警察にも情報提供をすると良い
上記(4)の対処法だが、請求画面が貼りついて消えない症状はウイルス感染を意味し、「システムの復元」や、場合によっては「パソコンの初期化」が必要になる。大きな負担になるので、感染を未然に防ぐことが大事だ。上記(1)を厳守することと、パソコンのOSやアプリケーション、ウイルス対策ソフトを最新版にするというセキュリティの基本対策を忘れずに実行しよう。
国民生活センターの報告書には、東京都の消費生活センターの相談内容も含まれる。都は7月に公開した「平成25年度消費生活相談概要」で、詐欺的ネット通販に関する相談が急増していることを特筆し、より具体的な内容を明らかにしている(注4)。
2013年に都および区市町村の消費生活センターに寄せられた相談件数は12万6951件(前年比7.4%増)で、うちネット通販(商品)に関する相談は9450件(前年度の1.7倍)。このうち「代金を振り込んだが商品が届かない」「ブランド品の偽物が届いた」などといった詐欺的な契約に関する相談は4003件で、前年度の2.8倍にのぼる。
●相談件数が多い商品と相談事例(都の報告書より)
・スニーカー、婦人用バッグ、靴、財布など
商品別で見ると、増加がもっとも顕著なのはスニーカーなどの「運動靴」504件で、前年度の4.5倍と急増している。以下、2013年に相談件数が多かった商品は、「婦人用バッグ」361件(前年の2倍)、「靴」342件(同1.8倍)、「財布類」294件(同2.5倍)、「腕時計」182件(同3.5倍)となっている。
表2 詐欺的ネット通販で相談件数が多い商品(2012~2013年の上位5位)
(出所:東京都、注4)
・相談事例(半額以下で売られていたブランドのスニーカー)
都は、 30代男性の事例を紹介している。男性は、たまたま見つけたスニーカーのディスカウントサイトで、通常の半額以下となっていたブランド品のスニーカーを注文した。代金は、サイトで指定されていた中国人と思われる個人名義の銀行口座に振り込んだ。国際便で届いた品物は、注文とは別のブランドで、サイズも違っていた。入金確認のメールはたどたどしい日本語で、サイトに事業者名や住所の記載がないなど、不審な点があった。
●詐欺サイトを見破るポイント
警察庁は、通信販売サイトを利用する前のチェックポイントとして、次の4つを挙げている。(注5)
(1) 連絡先に電話番号は掲載されているか。フリーメールアドレスが掲載されていないか
(2) 振込先口座は店の名義か
(3) 価格が極端に安くないか
(4) 不自然な日本語表記ではないか
ただし、該当するサイトすべてが偽サイトであるわけではなく、該当しないサイトすべてが安心なサイトとも限らないとし、購入の際は十分な注意が必要としている。日本通信販売協会によると、最近では、日本語サイトや日本人名の振込口座を使って国内業者を装ったり、有名ネット通販店舗のWebサイトをコピーした偽装サイトを運営したりするなど、手口が巧妙化しているという。(注6)
同協会によれば、手口の特徴として、「注文時にクレジットカードでの支払いを指定した後に、業者が何らかの理由を付けて銀行振込を促してくる」ことがあげられる。銀行振込みの場合、騙されたと気付いても代金回収が困難なことが多いので、こうした業者には気をつけたい。少しでも疑問を感じたら、所在地を地図サイトやGoogleストリートビューで調べたり、直接業者に電話をかけたりして、ショップの実在を確かめよう。同協会は、次のようなイラストを公開し、詐欺的ネット通販への注意を促している。
図3 怪しいサイトの見分け方
(出所:日本通信販売協会、注6)
●被害にあってしまった場合
料金を振り込んでしまった後に詐欺を疑うトラブルが発生した場合、諦めずに振り込んだ金融機関にトラブルの状況を伝えよう。口座が凍結されているため振込みができず、被害を免れたケースもあるという。全国の警察に設置されている「サイバー犯罪相談窓口」(注7)や、もよりの消費生活センター、日本通信販売協会の「通販110番」(注6)も相談に応じてくれる。
(執筆:現代フォーラム/桜井)
(注1)国民生活センターの報告書(2009年度~2013年度)
・2013年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20140807_2.pdf
・2012年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20130801_2.html
・PIO-NETにみる2011年度の消費生活相談-全国のデータから-[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20120906_2.html
・2010年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20110825_2.html
・2009年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20100804_3.pdf
(注2)国民生活センターのページ
・アダルト情報サイト
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/adultsite.html
・思わぬ落とし穴!?高齢者にもアダルトサイトの請求トラブル
http://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen185.html
・アダルト情報サイトの相談が2011年度の相談第1位に-インターネットにアクセスできる機器すべてに注意が必要-
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20120906_1.html
(注3)IPAのページ
・【注意喚起】ワンクリック請求に関する相談急増!パソコン利用者にとっての対策は、まずは手口を知ることから!
http://www.ipa.go.jp/security/topics/alert20080909.html
・2013年5月の呼びかけ「スマホにおける新たなワンクリック請求の手口に気をつけよう!」
https://www.ipa.go.jp/security/txt/2013/05outline.html
・2014年6月の呼びかけ「登録完了画面が現れても、あわてないで!」~ スマートフォンでのワンクリック請求に注意!~
http://www.ipa.go.jp/security/txt/2014/06outline.html
(注4)東京都の報告書
・平成25(2013)年度消費生活相談概要
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/sodan/tokei/h25_sodan_g.html
・平成25年度消費生活相談概要 本文[PDF]
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/sodan/tokei/documents/h25g_all.pdf
(注5)・通信販売サイトでのトラブルにご用心!(警視庁)
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/haiteku/haiteku/haiteku429.htm
(注6)日本通信販売協会の報告書
・ネット通販詐欺サイトに関する被害相談件数 前年同期比の680%と急増[PDF]
http://www.atpress.ne.jp/releases/40623/3_5.pdf
・詐欺サイトで被害に逢わないための事前の対処法[PDF]
http://www.jadma.org/tsuhan-kenkyujo/files/cope.pdf
・通販110番
http://www.jadma.org/DM110/index.html
(注7)・都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧(警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/soudan.htm