日本インターネットプロバイダー協会をはじめとするネット通信4団体は17日、P2Pソフト(ファイル共有ソフト)の利用拡大により、一部のヘビーユーザーによって帯域が占有される「ネット混雑」の解消に向けて、「帯域制御の運用基準に関するガイドライン(案)」をまとめ、意見募集を開始した。意見募集は4月14日までメールで受け付ける。
ISP(インターネットサービスプロバイダ)の中には、ヘビーユーザーの帯域占有によるネット混雑を回避するために、すでに帯域制御を実施している会社もある。しかし、昨年9月に公表された「ネットワークの中立性に関する懇談会」最終報告書において、帯域制御はネットの安定運用の点からは一定の合理性が認められるものの、電気通信事業法の「通信の秘密」の原則に抵触するおそれがあることから、関係者による具体的な運用ルールの必要性が指摘されていた。
そのため、日本インターネットプロバイダー協会、電気通信事業協会、テレコムサービス協会、日本ケーブルテレビ連盟の4団体が検討会を立ち上げ、「帯域制御の運用に関するガイドライン(案)」を取りまとめた。
「帯域制御の運用に関するガイドライン(案)」では、基本原則として、本来トラフィックの増加に対してはバックボーン回線などのネットワーク設備の増強によって対処すべきであり、帯域制御は例外的な状況において実施すべきとしている。そのうえで、特定のアプリケーションや特定のヘビーユーザーが帯域を過度に占有してネット混雑が起こっているという客観的状況が存在する場合のみ、当該アプリケーションや当該ユーザーの帯域制御を実施できるとしている。
また、ISPのなかには、P2Pソフトの利用によって著作権を侵害するコンテンツが配信されていることを理由に、利用を制限する動きもみられる。しかし、ISPがコンテンツの違法性を個別に判断することは困難なため、著作権侵害という理由で全ユーザーに対して一律に帯域制御を実施することは合理的な範囲を超えているとした。
P2Pソフト利用によるセキュリティ上の問題についても、本来ユーザー自身を保護する目的で実施するものであり、ユーザーの希望に応じて提供するオプションサービスとするのが適当としている。また、パケットのヘッダやペイロード情報、特定のアプリケーションのパケットを検知して流通を制御したり、特定のヘビーユーザのパケット流通を制御することは、「通信の秘密」の侵害に該当するとした。
帯域制御の実施については、まずは利用者の明確な同意を得る必要があるとし、単に契約約款に帯域制御を同意するという規定を設けておいたり、ホームページ上で周知するといった方法では不十分としている。実施するにあたっては、新規ユーザーと契約する際に帯域制御に同意する項目を設けたり、既存のユーザーに対しては個別にメールで帯域制御に同意するかどうかの返信をもらうといった方法が示された。
(2008/03/21 ネットセキュリティニュース)
■「帯域制御の運用基準に関するガイドライン(案)」に係る意見募集について(日本インターネットプロバイダー協会)
http://www.jaipa.or.jp/other/bandwidth/info_080317.html
■「ネットワークの中立性に関する懇談会」最終報告書の公表(総務省)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/070920_6.html
■日本インターネットプロバイダー協会
http://www.jaipa.or.jp/
■日本ケーブルテレビ連盟
http://www.catv-jcta.jp/index.php
■電気通信事業者協会
http://www.tca.or.jp/
■テレコムサービス協会
http://www.telesa.or.jp/