6月19日、司法試験に合格後、長崎市内で実務研修を受けている司法修習生の男性が、自身のブログに容疑者の取り調べや刑務所見学などの修習内容を書き込んでいたと、報道各社が一斉に報じた。各社の報道では、裁判所法の守秘義務違反の可能性もあるとみて事実関係を調査しているとのことだった。
男性は、ロースクールに通っていた2005年1月から、日々の出来事や思うところを当該ブログに綴っていた。司法修習生になってからは時折、実習の様子や感想も書き込んでいたが、容疑者の実名や取調べの具体的な内容といった、捜査関係者が報道機関に漏らしているようものは含まれておらず、ネット上では「この程度でも守秘義務違反になるのか」という声も上がっていた。
また、各社が取り調べ内容として報じた「相手は80歳のばあちゃん。途中から説教しまくり。おばあちゃん泣きまくり」の書き込みには、「なんで20代の若造が80歳のばあちゃんを説教してるのか。それに対してなんで80歳のばあちゃんが泣いて謝ってるのか。なんとなく、権力というか、自分の力じゃない力を背後に感じた」というように、疑問や感想が随所に綴られており、守秘義務よりもむしろ、こういった内容が気に入らなかったのではないかという意見もあった。
今月23日、守秘義務違反にはあたらないが国民の信頼を損ねる行為だという理由で、男性は厳重注意となった。
問題になった書き込みは6月12日に発覚したらしく、男性は6月14日に「理由はいろいろ」「弁護士になったらやめようかと思っていたけど、ちょっと早まりました」とするブログ閉鎖のお知らせを投稿。その2~3日後に当該ブログを閉鎖したが、直後の報道時点では、掲載内容のほとんどが検索サイトに残っていた。幸い大炎上となるような内容ではなかったため、じきに収束したものの、一時は書き込み者を特定する作業まで行われていた。
来年5月に裁判員制度がスタートする。この裁判員にも守秘義務が課せられており、裁判員としての職務中に知った内容や評議の内容を漏らすことは禁じられている。また、自分が裁判員であることをネットで公表することも許されない。ネット上の書き込みには十分注意しないと、思わぬところで失敗してしまったり、たとえ守秘義務違反にあたらなくても、さらし者になってしまう可能性があることを心したいものだ。
(2008/07/31 ネットセキュリティニュース)
■裁判員制度(最高裁判所)
http://www.saibanin.courts.go.jp/
■よろしく裁判員(法務省)
http://www.moj.go.jp/SAIBANIN/index.html