経済産業省は5月27日に「特定商取引法」違反で出会い系業者に、総務省は今月2日に「特定電子メール法」違反で広告メール業者に、それぞれ行政処分を行った。どのような違反で、どのような処分が行われたのか。この両者の違いは何かをみてみよう。
■経産省が出会い系運営会社に改善指示
経済産業省は5月27日、特定商取引法(特定商取引に関する法律)に違反したとして、出会い系サイト「愛の力」を運営しているリーテックシステムズ(東京都千代田区)に対し業務の改善を指示した。
同省の発表によると、同社は今年1月10日から4月24日までの間に、当該サイトのURLが記載されたメールを相手の承諾を得ないで100件以上送信していた。また、当該サイト上には、同社の登記簿上に記載された代表者が正しく記載されていなかったことから、同省は同社に対し、ホームページに正確な記載を行い、承諾を得ないでメール広告を送付することのないよう徹底することを指示した。
改善指示を受けた同社は、同日、「愛の力」を閉鎖。同社のホームページも閲覧できないようにした。「愛の力」では「諸般の事情により2009年5月28日をもってサイトを閉鎖いたしました」としており、同社ホームページは「このプログラムではこの Web ページを表示できません」という偽のエラーメッセージが表示される。
・特定商取引法違反事業者に対する行政処分について[PDF](経済産業省)http://www.meti.go.jp/press/20090527005/20090527005.pdf
■総務省がネット通販の広告メール送信会社に改善命令
総務省は2日、特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)に違反したとして、美容関係製品やダイエット用サプリメントなどを販売するサイト「Siena Beauty」(シエナビューティー)の広告メールを送信したHolyAce(ホリーエース、東京都渋谷区)に対し、改善を命じる措置命令を行った。
同省の発表によると、同社は少なくとも昨年12月1日から今年5月25日までの間、当該サイトの広告メールを相手の承諾を得ないで送信。メールの送信者の名称も正しく表示していなかった。
編集部の調査では、同社の広告メールは同社が運営する「Siena Beauty」のホームページに誘導していたが、商品の販売自体はYahoo!ショッピングの「SienaBeauty店」(運営は同社)で行っており、同日、Yahoo!ショッピングの同店はサイトリニューアルを理由に休店。「Siena Beauty」のホームページや同社のホームページも閲覧できなくなった。
・特定電子メール法違反者に対する措置命令の実施(総務省)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban08_000016.html
【どう違う? 経産省「特定商取引法」と総務省「特定電子メール法」】
昨年12月に施行された「特定商取引法」と「特定電子メール法」の改正法には、双方にオプトイン規制が盛り込まれた。経産省管轄の特定商取引法は、広告メールの広告主や広告代理店を対象とするのに対し、総務省管轄の特定電子メール法は、広告メールの送信者を対象としており、相互に補完するものといわれている。
経産省はこれまでに、本件を含む出会い系運営業者3社に対し、改正法に基づく行政処分を実施。総務省は本件と出会い系の広告メール送信者に対し行政処分を行っているが、いずれも送信者が広告主でもあるというケースで、これらが特定電子メール法違反のみになる理由が見つからない。それどころか、経産省からの行政処分が同時実施されていないために、広告主にはおとがめなしとの印象さえ受ける。
国内で運営し国内から広告メールを送信してたものばかりが処分対象になっている点や、処分者すべてが一切の説明もなく、雲隠れして終了という幕切れも気にかかるところだ。
(2009/06/03 ネットセキュリティニュース)