警視庁は、匿名で利用できるインターネットカフェがハイテク犯罪などの温床となっていることから、利用者の本人確認などを義務化する条例の制定を検討している。来年2月の都議会に条例案を提出する予定で準備を進めており、その一環として、ホームページで一般からの意見募集を行っている。意見募集の締め切りは今月11日まで。
警視庁が検討している条例案「インターネット端末利用営業の規制に関する条例(仮称)案」には、本人確認や利用記録等の作成・保存義務、罰則など、7項目が提示されている。
それによると、都の区域内で個室や個室に準じた閉鎖的施設を設け、インターネットを利用できるサービスを提供している営業者が規制対象となる。施設を利用する顧客に対し、運転免許証提示などの方法で本人確認をし記録すること、利用したコンピューターや利用時期を記録すること、それらの記録を3年間保存することなどが義務付けられる。
本人確認の内容が虚偽だった場合は顧客にも罰則を定めることが検討されている。顧客が閲覧したWebサイトの履歴や、送受信した相手先履歴などの通信内容は、記録や保存の対象とはならない。このほか、セキュリティ対策ソフトの導入や防犯カメラ設置などの不正利用防止措置、都公安委員会への届出の必要などが盛り込まれている。
ネットカフェで発生する犯罪の多くが匿名性を隠れ蓑に行われていることから、本人確認の必要性はこれまでも強く指摘されてきた。同庁はこれまで業界の自主努力を促してきたが、本人確認を行うと顧客が他店に流れてしまうなどの理由で業界の反応は鈍く、今年8月末時点で、都内ネットカフェの本人確認実施率は38%(昨年同期41%)と低迷している。
都の有識者懇談会は先月、これらの状況をふまえ、ネットカフェに対する法的規制と事業者への継続的支援・指導の両面の対策が必要であるとの提言をまとめた。同庁はこれを受け、条例案策定の検討に踏み出した。条例策定が実現すれば、全国初のネットカフェ規制条例となるという。
【ネットカフェで起きている犯罪事例】
元会社員の男が店舗内パソコンから元勤務先のコンピューターに不正アクセスし個人情報約18万件を不正入手、出会い系業者に渡した(2009年2月)。無職の男が店舗から被害者のIDを使ってネットバンクに不正アクセス、約900万円の不法利益を得た(2009年1月)。会社役員の男が店舗からアクセスした掲示板に、怨恨を持つ相手が逮捕された旨の書き込みをして名誉を棄損した(2009年1月)。無職の男が勤務するネットカフェのパソコンにキーロガーを設置して他人のIDとパスワードを不正入手。このIDを使ってネットオークションに参加し、商品をだまし取ろうとした(2006年5月)。
また、店舗内における犯罪として、覚せい剤使用・所持、窃盗、強制わいせつなどが発生。振り込め詐欺の犯行準備場所として使われたり、家出少女が宿泊して福祉犯罪の被害者となるなどの事例も続発している。これらのほとんどは個室を設置し、本人確認を実施していない店舗で起きているという。
(2009/12/03 ネットセキュリティニュース)
■インターネットカフェ等の対策に関する意見募集について(警視庁)
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/anket/in_cafe.htm
■インターネットカフェ等を利用した犯罪等の防止対策の在り方に関する報告書[PDF](警視庁)
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/in_cafe/in_cafe.pdf