米国の大手検索会社Googleは14日(米国時間)、ストリートビュー撮影車による無線LANネットワーク情報収集時に、パスワードで保護されていないオープンな無線LANネットワーク上の通信データまで収集していたことを公式ブログで認め、謝罪した。同時に、今後は無線LANネットワーク関連の情報収集活動を停止すると発表した。
●これまでの経緯
同社は日本を含む約30の国や地域で、独自に撮影した道路沿いの街並の画像を「ストリートビュー」としてインターネット上で地図とともに公開している。その撮影車両が走行中に街の風景を撮影するだけでなく、無線LANネットワーク関連の情報収集も行っていた。
ストリートビューに対しては日本を含む各国でプライバシーの侵害を危惧する声が上がっているが、無線LANネットワーク関連情報の同時収集が明らかになってからは、通信データの内容まで収集されているのではないかと懸念されていた。
こうした社会的な懸念の高まりに応え、同社は4月27日付けのブログで、街並の写真とともに収集しているのは建物の3次元データおよびオープンな無線LAN情報であると、明らかにした。無線LANの情報収集は同社が提供する携帯電話の位置情報サービスなどに利用するためで、収集内容はネットワークを識別するSSIDと無線LANインターフェースに割り振られたMACアドレスだけであり、特定の相手とやりとりしている情報は収集していないとしていた。
しかし、5月初めにドイツの情報保護機関から収集データの監査を求められ、あらためて調査したところ、SSIDやMACアドレスばかりかオープンな無線LANネットワーク上でやりとりされていた通信データ内容まで収集していたことが判明したという。
誤収集の原因は、同社が使用している情報収集ソフトウエアに、通信データまで拾ってしまうコードが誤って入り込んでいたためだという。同社はこうしたミスから、結果的に意図せぬ過ちを犯していたとして、今後はストリートビュー撮影車両での無線LAN情報の収集を停止すると明らかにした。なお、同社は誤収集したデータはこれまで一切利用していないという。
●日本国内での問題点
この件について、同社の日本法人の公式発表はないが、日本国内での誤収集は電波法に抵触しているおそれがある。というのも、電波法の第59条は秘密の保護として「何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信(電気通信事業法第四条第一項 又は第百六十四条第二項 の通信であるものを除く。第百九条並びに第百九条の二第二項及び第三項において同じ。)を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない」としているからだ。
Googleの主張はオープンな無線LANネットワークのSSIDとMACアドレスを収集するつもりが、誤ってデータ部分まで収集していたということだ。オープンな無線LANであれば公開されているものと見なしているようだ。だが、日本の場合、オープンであるか否か、すなわちパスワードで保護されているとか暗号化されているとか以前に、電波法で「傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない」、すなわち「傍受して」なおかつ「存在を漏らす」または「内容を漏らす」または「窃用する」ことは禁じられているる。したがって、Googleの見解とは異なり、オープンな無線LAN経由で誤収集すること自体が、日本の電波法に違反した行為とも考えられる。
ストリートビューの撮影車両が無線LANデータを収集した時点で「傍受して」となるのかどうか、あるいは収集データをGoogleに渡した時点で「内容を漏らす」行為に該当するのかどうか、法的な解釈は微妙なところだ。ちなみに電波法では、第109条の2で「暗号通信を傍受した者又は暗号通信を媒介する者であつて当該暗号通信を受信したものが、当該暗号通信の秘密を漏らし、又は窃用する目的で、その内容を復元したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」としている。
●気になる今後の展開
なお17日には同ブログに付記する形で、アイルランドからの誤収集データの削除要請に応じたことと、その他の国や地域でも当該機関と連絡をとり、可及的速やかに誤収集したデータを処分したいという意向を明らかにしている。しかし、19日にはドイツの検察やアメリカの連邦取引員会がプライバシー侵害の視点からこの問題の調査に乗り出したと国内外のメディアが伝えている。電波法違反の疑いを含めて、日本国内ではどのような処分が行われるのか。行方が気になるところだ。
(2010/05/20 ネットセキュリティニュース)
■WiFi data collection: An update(Google公式ブログ)
http://googleblog.blogspot.com/2010/05/wifi-data-collection-update.html
■Data collected by Google cars(Google公式ブログ)
http://googlepolicyeurope.blogspot.com/2010/04/data-collected-by-google-cars.htm