大阪・日本橋の電器店が9月22日、大阪府警の家宅捜索を受け、店長ら3人が電波法違反(無線を局の無許可開設)ほうじょ容疑で逮捕された。同店は、無線LANの暗号を解読するソフトを同梱した台湾製の高出力無線LANアダプターを、他人の無線LANにタダ乗りできる「無銭LAN」などと称して販売しており、購入者が同法に違反するのを助けた疑い。
■無線LANは「技適マーク」必須
無線電波を発射(送信)する場合には、総務大臣の免許を受けなければならないのが原則である。ただし全てが免許制では、一般の方が手軽に無線を使用できなくなってしまうので、いくつかの例外規定がある。たとえばラジコンやワイヤレスマイクなどの発射する電波が極めて微弱なものは、免許不要で使うことができる。
パソコン関係でよく使われる無線LANやBluetoothは、微弱無線よりも大きな出力の機器だが、一定の条件にかなった製品であれば免許なしで利用できる。これらは「特定小電力無線」といって、国が定める技術基準に適合した機器であるという認証機関の証明があれば、免許が不要になるのだ。免許不要の製品かどうかは、下記「技術基準適合証明等を受けた機器の検索」ページにある、いわゆる「技適マーク」の有無で識別できる。この技適マークが付いていれば、無免許で使ってもよいのだ。
摘発された大阪・日本橋の電器店が販売していたのは、技適マークどころか、技術基準にも適合しない大出力の製品だったのだが、仮に技術基準に適合している製品であっても、証明を受けないまま使ってしまうと電波法違反になるので注意しなければいけない。大阪・日本橋や秋葉原界隈の電気店、オンラインショップなどでは、今回問題となった製品をはじめ、技術基準適合証明を受けないまま売られているとみられる海外製品が多数見受けられる。技適マークが付いていることが免許不要の必須条件なので、無線LANやBluetoothに対応した機器を購入する際には、くれぐれも注意していただきたい。
■無線LANの暗号化方式にも注意
今回の摘発では、製品に無線LANの暗号を解読するソフト(正確には解析機能付きのOS)が付いていたという点にも注意したい。無線LANには通信を暗号化する機能があり、盗聴や侵入を防いでくれる。暗号化方式にはは、いくつかの種類があるが、初期の規格に採用されたWEP(Wired Equivalent Privacy)は、現在では簡単に破られてしまうのだ。
問題となった製品には、このWEPを破って暗号化キー(パスワード)を盗み出すソフトが付属しており、これを使うと数分から数十分で暗号化キーが取得できるという。WEPを破って他人の無線を使うのは電波法に抵触する行為だが、そのようなツールやツール付きの製品までが大量に出回っているということを、無線LANを使う側は認識しておかなければならない。最近の無線LAN製品ならば、WEP以外にもWPA(Wi-Fi Protected Access)やその改良版のWPA2もサポートしているので、より堅牢な暗号化方式を使うようにしていただきたい。
暗号化なしやWEP方式の無線LANは、知らない間に「無銭LAN」などと呼んでる人たちのネット接続用に使われてしまうほか、通信内容が盗聴されたり、あなたのパソコンに侵入されるおそれもある。
(2010/10/01 ネットセキュリティニュース)
■関連URL
・技適マーク、無線機の購入・使用に関すること(総務省・電波利用ホームページ)
http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/summary/qa/giteki_mark/index.htm
・技術基準適合証明等を受けた機器の検索(総務省・電波利用ホームページ)
http://www.tele.soumu.go.jp/giteki/SearchServlet?pageID=js01
・一般家庭における無線LANのセキュリティに関する注意(IPA)
http://www.ipa.go.jp/security/ciadr/wirelesslan.html
・電波法(e-Gov)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO131.html