警視庁ハイテク犯罪対策総合センターは、パチンコ遊技機販売業者が加盟する東日本遊技機商業協同組合のシステムサーバーに不正アクセスし、組合員が経営する企業の営業秘密情報を不正に取得したとして、12日、東京都台東区の会社社長の男(46歳)を逮捕した。
逮捕容疑は、不正アクセス禁止法違反と不正競争防止法違反の疑い。昨年7月に施行された改正不正競争防止法の「営業秘密侵害罪」が初めて適用された。
■解雇を恨み不正アクセス、入手した営業情報で怪文書送付
昨年5月から数度にわたり、同組合員や一部業界団体等に怪文書が送付された。その内容に組合や組合員しか知りえない情報が含まれていたため、同組合は昨年7月に警視庁に相談し被害届を提出。捜査の結果、容疑者が組合員のIDとパスワードを悪用し、昨年5月から10月まで、組合のシステムサーバーに不正アクセスを繰り返していたことがわかった。
報道によれば、容疑者は数年前に組合顧問を解雇されたことを恨みに思っており、解雇した組合理事長が経営する会社に嫌がらせをする目的で同社の営業情報を不正に取得していたと、容疑を認めているという。
■不正競争防止法「営業秘密侵害罪」の適用
これまでの不正競争防止法は「不正競争の目的」でなければ、営業秘密を侵害したとして罰することはできなかった。たとえば、盗んだ顧客情報をライバル会社に売ると罪になるが、名簿業者など競合関係にない相手に売っても罪を問われなかった。顧客情報を盗み出すという同じ悪事を働いても、動機や目的によって罪になったり、ならなかったりしていた。
そこで、情報保護を強化するために改正された現行法は、罪に問う目的要件の適用範囲を拡大し、「不正の利益を得る目的」または「保有者に損害を加える目的」と改めた。盗んだ顧客情報を名簿業者に売ることは「不正の利益を得る目的」として、今回の事件のように嫌がらせ目的で情報を不正取得した行為も「(営業秘密の)保有者に損害を加える目的」として、いずれも罪に問われることになった。
(2011/01/21 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・商業協同組合の流通システムサーバへ不正アクセスし営業秘密情報を不正に取得した被疑者を逮捕(警視庁)
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/jiken/kenkyo/jiken.htm#230112
・組合システム不正アクセスに関する報道について(11.01.17)(東日本遊技機商業協同組合)
http://www.toyusho.com/news.html