自作のプログラムを使い、愛知県岡崎市立中央図書館のサーバーから蔵書情報を自動収集していた男性が、昨年5月、同館の業務を妨害しようとするサイバー攻撃と間違われて逮捕された。男性は、20日間の勾留の後、起訴猶予処分とされた。この問題に取組んでいた同市の市民団体「りぶらサポータークラブ」の仲介による両者の話し合いがまとまり、2月25日、共同声明が出された。
同館は、男性のプログラムが技術的に十分な配慮の施された良識的なもので、図書館システムの利便性を補おうとする健全なものであったことを認め、男性の社会的名誉が回復されることを願うとした。同館のホームページで閲覧障害が起きた原因については、三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)の開発した図書館システムにあり、同社の不十分な対応が逮捕・勾留という残念な状況へ導いたとし、同社が反省し今後の活動に役立ててくれることを期待するとしている。
男性は、今回の出来事が「事件」として認知されることにより、Web技術の発展に悪影響を与えるのではないかと危惧し、市が県警に提出した被害届の取り下げを求めていた。これについては、同館は被害届を提出する必要があれば躊躇なく提出できるよう取り下げないと説明した。男性もこの判断に理解を示し、受け入れたという。
声明は、「私たちは、今回の出来事が日本のWeb技術の萎縮に結びつくことなく、将来にわたって多彩なWeb技術が伸びやかに発展していくことを願っています」と結んでいる。
『岡崎市内の図書館の業務を妨害しようとパソコンを使用して同図書館のサーバコンピュータにホームページ閲覧要求の信号を大量に送信し、同サーバコンピュータによる他のインターネット利用者へのホームページの提供を著しく困難にさせ、図書館の業務を妨害した男を逮捕』--こんな警察発表から丸10か月。男性の行為に非がなかったとの公式見解が出され、犯罪性のないひとつの出来事という終着点にようやくたどり着いた。
ここに至るまでには、当初からこの事件に疑問を持ち続けた人たちや原因究明に力を注いだ人たち、両者の話し合いをコーディネートした人たちなど、多くの人たちの支えがあった。システム管理のずさんさから問題のプログラムが流出し、欠陥の存在を明らかにできたことや、この流出でシステムに混入していた他の図書館の利用者情報の存在が明らかになったことも、真相究明の道を開くことに大きく貢献しただろう。
ネット上には、一歩間違うと犯罪者に仕立て上げられてしまう危うさが点在し、ひとたびそれが公になると回復が困難になってしまうことも多い。今回のような一定レベルの回復措置をとることができたのは、かなり幸運なことだったのかも知れない。
(2011/03/03 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・図書館ホームページ閲覧障害に係る経過等について(岡崎市立中央図書館)
http://www.library.okazaki.aichi.jp/tosho/about/files/20110225.html
・岡崎市立中央図書館と相互確認したこと(Librahack:男性のサイト)
http://librahack.jp/okazaki-library-case-season2/announcement.html
・"Librahack"共同声明(りぶらサポータークラブ)
http://www.libra-sc.jp/project/2011022422184615.html
・"Librahack"共同声明に関する詳細情報(りぶらサポータークラブ)
http://www.libra-sc.jp/project/2011022422232861.html