警察庁は3日、2010年のサイバー犯罪(情報技術を利用する犯罪)の検挙状況および相談状況を発表した。サイバー犯罪の検挙件数は6933件(前年6690件、3.6%増)で、過去最多となった。うちネットワーク利用犯罪は5199件(前年3961件)で、前年比31.3%の増加となった。ネット利用犯罪のうち増加が目立つのは、児童ポルノ事犯、著作権法違反で、それぞれ54.4%増、95.7%増と急増している。
■不正アクセス禁止法違反は減少へ
「不正アクセス禁止法違反」での検挙は1601件で、前年より933件減少(-36.8%)。「コンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪」も133件(前年195件)と前年比で31.8%減少している。
■「オークション詐欺」「出会い系」再増、「児童ポルノ」「著作権」急増
「ネットワーク利用犯罪」の内訳をみると、もっとも多いのは例年通り「ネットワーク利用詐欺」の1566件(前年比+286件、+22.3%)だ。このうちネットオークションを利用した詐欺が677件を占める。オークション利用犯罪は、大手事業者の「受取後決済サービス」導入が功を奏し、2009年は2008年より54%も減少したが、そのまま減少続行とはいかなかった。それでも、2008年の検挙件数・1140件の6割程度にとどまっている。
次いで多いのは「児童買春・児童ポルノ法違反」1193件。このうち児童買春は410件・前年比で6件減少しているが、児童ポルノは783件で前年比276件、54.4%増加となった。2008年から2009年にかけて児童ポルノの検挙件数は254件から507件へほぼ倍増した。それほどの急増ではないが、増加が継続していることは間違いない。
「青少年保護育成条例違反」は481件で155件・47.5%増。「出会い系サイト規制法違反」は2009年は減少傾向をみせたが、2010年は412件で63件・18.1%増と再び増加に転じた。「著作権法違反」は2009年の188件から368件と、95.7%もの急増を示した。
■「相談」全体は9.5%減、「迷惑メール」相談は5割増
都道府県警察の相談窓口で受理したサイバー犯罪等に関する相談の件数は、2007年から2009年まで3年連続で増加していたが、2010年は7万5810件で、前年比7929件・9.5%の減少となった。架空請求/不当請求メールに関する相談が、それぞれ前年比1万4820件・57.3%減少、同6112件・9.7%減少している。オークションに関する相談も前年比954件・12.1%減と、ここ4年連続で減少している。
逆に大きく増加したのが「迷惑メール」に関する相談で、前年比で3298件・50.4%もの増加をみせた。
■「自殺予告」への対応
インターネット上での自殺予告に対し、警察はプロバイダ等から情報開示を受け、防止や救護措置を行っている。2010年中に都道府県警察が対応した件数および人数は、280件・288人で、前年に比べ57件・60人増えている。いたずら等で自殺のおそれがなかったケース128人、書込者が判明しなかったケース46人。実際に自殺を図った人は25人で、うち11人が死亡したが、救護等により命を取りとめた人が14人いる。存命者のうち5人が、警察官による発見・救護だという。自殺のおそれのある89人に対しては、本人への説諭、家族への監護依頼などの自殺防止措置を実施している。
■「全国協働捜査方式」で取締強化、捜査人材の育成も
警察は今後、「全国協働捜査方式」に運用によって、サイバー犯罪の取締まりを強化する。フィッシングやファイル共有ソフトなどの新たな手口に対応した手法も研究し、検挙につなげていく。サイバー犯罪捜査を担う人材を計画的に育成していくとしている。ネットの自殺予告事案に対しても、プロバイダ等の協力を得て、引き続き迅速な対応に努めていく。
(2010/03/08 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・平成22年中のサイバー犯罪の検挙状況等について[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h22/pdf01.pdf