国民生活センターは、ペットのインターネット取引におけるトラブル相談が増加傾向にあるとして、トラブルの傾向分析を行い、発表した。一度も対面せずに、生後間もない子犬や子猫が空輸等で引渡されるため、「病気だった」「すぐに死んでしまった」「写真と顔が違う」などといったトラブルが生じがちだという。
同センターによると、ペット販売に関する規制強化により、店舗での購入トラブルは減少傾向にあるが、インターネットを利用した購入トラブルは、徐々に増加する傾向にある。
全国の消費生活センターから寄せられる情報を蓄積したデータベース「PIO-NET」によると、ペットの相談全体に占めるインターネット取引の割合は、2007年度、2008年度はそれぞれ9.3%、9.2%だったが、2010年度には11.4%、2011年度は13.5%となっている。件数でみると、インターネット取引に関する相談件数は、2006年度~2012年1月20日までの合計が933件。2011年度は134件で、前年同期の110件より22%増となっている。
■トラブル相談の実例
同センターは、典型的な相談事例を5件、紹介している。
事例1)ペットの通販サイトで珍しい猫を見つけ、約7万円を前払いして購入、空輸で受け取った。到着後すぐに病気が発覚し、手術や治療を行ったが、獣医には完治の見込みがないと言われた。サイトの仲介業者の住所地の警察に相談したところ、実在しない住所で、登録番号も違っていた。(2011年2月 30代女性 熊本県)
事例2)インターネットで約30万円の子犬を購入し、空輸で受け取った。届いた晩に下痢をし、病院で診察を受けたが、回復と悪化を繰り返し、死亡するまで病院を計3か所回り、治療費が5万円かかった。医師からは「もともと体力がなかったところ、空輸などでさらに体調が悪化したのでは」と言われた。(2010年12月 20代 女性 神奈川県)
このほか、「サイトで見たチワワの写真が気に入って購入したが、空輸で届いた子犬は明らかに顔が違う。可能なら返品したい」「ネットでチワワを購入、約4万円を振り込んだが送られてこない。メールを出しても戻ってきてしまう」「ネットで7万円で柴犬を購入したが、約束の血統書が届かない」などの相談事例が紹介されている。
■インターネット取引の問題点とアドバイス
インターネット取引では、ペットと一度も対面しないまま空輸や宅配便で受け取ることが一般的だ。ペットの健康状態を直接確認できないうえ、輸送による負担も大きいことから、健康状態に関するトラブルが少なくない。また、「イメージ違い」「事前の説明不足」も起こりやすい。
要注意なのは、ネットでは一部で無登録業者が販売しているケースがあること。無登録でのペット販売は刑事罰の対象となる違法行為だ。代金を前払いした後、「ペットが送られてこない」「血統書が送られてこない」といった契約不履行のトラブルも多い。いったんトラブルが起こると、店舗を構える事業者と比べて連絡が取りにくいことも多く、解決は容易ではない。
このようなことから、生涯飼育することになるペットを購入する手段として、「インターネット取引は適切とは言い難いと考えられる」としつつ、同センターはネットでペットを購入したいという消費者へ、次のアドバイスしている。
・インターネットでの契約にはリスクがあるため、慎重に契約すること
・インターネットの情報だけで購入を決めず、自分自身でよく確認すること
・信頼できる事業者と取引を行うこと
・ペットは生き物であることを十分に考慮し、安易な購入は避けること
・トラブルにあったら、最寄りの消費生活センターに相談すること
なお、環境省による「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正等が2012年度に予定されている。ペット販売に関しては、インターネット等により、販売者と消費者が1度も対面せず取引を行う販売方法は問題があるとして、動物販売時の対面説明や現物確認の義務化が検討されている。
(2012/02/23 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・ペットのインターネット取引にみるトラブル(国民生活センター)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20120202_3.html
・ペット購入時のトラブルの実態と問題点~安心してペットを「買う」ためには~[PDF](国民生活センター)
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20070606_3.pdf
・動物愛護管理のあり方検討報告書[PDF](環境省中央環境審議会動物愛護部会 動物愛護管理のあり方検討小委員会)
http://www.env.go.jp/council/14animal/r143-01.pdf