「乗り換えれば安くなる」「移行手続きが必要」などと電話で嘘の説明をし、ユーザーのパソコンを遠隔操作して勝手にプロバイダ契約をしてしまうトラブルが発生している。国民生活センターは、遠隔操作を許す危険、契約が解消しにくい事情を解説し、注意を呼びかけている。
パソコンの遠隔操作機能は、Windowsに標準装備されているほか、フリーソフトも流通しており、誰でも簡単に使うことができる。操作を依頼された人のパソコンのデスクトップには、依頼した人のパソコンのデスクトップ画面が表示され、自由に操作できる。
この機能は、パソコン初心者が自分で解決できないトラブルを、リモートで解決してもらう場合などに使われることが多い。依頼する相手は、セキュリティ企業や自治体のヘルプデスク、また知り合いのパソコン上級者など、信頼できる相手に限られる。
■業者に遠隔操作を許す危険--3つの事例から
遠隔操作機能の利用には、ユーザー側のパソコンに表示されるIDとパスワードを相手に伝える必要がある。同センターに寄せられた相談では、被害者はよくわからないまま業者の指示に従い、IDとパスワードを伝え、この機能を使わせてしまっていた。同センターが公開した3つの事例をみてみよう。
事例1:プロバイダを乗り換えれば安くなると電話で勧誘された。指示されるままにパソコンを動かし、何かの数字を教えた。数日後、見知らぬプロバイダ事業者からハガキが届き、以前より高い月額使用料になっていることがわかった。(60代女性)
事例2:大手通信会社を名乗る電話があり、母、祖父では内容がわからなかったため、高校生である自分が電話に出た。「遠隔操作で登録でき、月額料が数百円安くなる」等と説明され、事業者の指示通りにパソコンを操作した。後日、届いた資料を見ると、以前より約2000円も高いコースになっていた。(10代 男子高校生)
事例3:「現在利用しているプロバイダサービスがなくなるので、移行手続きが必要」という連絡がきた。言われた通りにパソコンを操作し、遠隔操作できるサイトに接続し、表示されたID 等を伝えた。料金はこれまでより高くなってしまった。また、使っていたプロバイダサービスは終了しないことがわかった。(60代女性)
■解決は難しいが、諦めずに相談を
同センターによると、遠隔操作による契約トラブルは、消費者と事業者との間における合意内容を事後に確認しにくい。また、プロバイダ等の契約は、特定商取引法の適用がないため、法律上のクーリングオフ制度(販売方法に問題がある場合、一定期間内であれば契約解除できる制度)がない。こうした事情から解決が難しいことが多いが、業者が嘘をついて勧誘した場合など取り消しできる可能性もあるため、あきらめずに最寄りの消費生活センターに相談してほしいとしている。
同センターは、次の3つをアドバイスしている。
(1) 自分のパソコンを勧誘業者に遠隔操作させない
(2) 必要がなければ、きっぱり断る
(3) トラブルになった場合は、最寄りの消費生活センターに相談する
遠隔操作を許すということは、パソコン内にある情報を相手が見ること、およびパソコンを自由に操作することを許すということである。許可しないサービスを契約させられるだけでなく、パソコン内の情報が外部に漏れる危険があることに十分留意したい。
(2013/06/20 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・速報!“遠隔操作”によるプロバイダ勧誘トラブルにご注意!(国民生活センター)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20130613_1.html