警察庁は、今年上半期に発生したコミュニティサイトに起因する犯罪被害に関する調査結果を発表した。被害児童598人の95%がフィルタリングを使っておらず、被疑者664人の7割が接触目的で児童の登録数が多いコミュニティサイトを選んでいること等がわかった。 2008年末に「出会い系サイト規制法」が改正されて以降、出会い系サイトよりコミュニティサイトで被害にあう児童数が大きく上回る現象が続いている。関係諸機関のさまざまな努力により、そのコミュニティサイト起因犯罪もここ数年少しずつ減少していたが、今年上半期から増加に転じた。今年上半期での検挙件数は859件(被害児童598人)で、前年同期の599件(被害児童509人)から43.4%も増加している。
警察庁は、こうしたコミュニティサイト利用に伴う危険を保護者等に周知して被害防止対策に役立ててもらうため、被害の詳細を調査したとしている。調査対象は、今年上半期に検挙された859件の被疑者664人、被害児童598人。
■児童との接触目的でサイトを選び、出会って1週間以内に犯行
被疑者の犯行動機の最多は「児童との性交目的」76.8%で、次いで「児童のわいせつ画像収集目的」11.2%、「児童と遊ぶため」9.4%、「金銭目的」0.7%などが続く。9割以上が児童との接触目的であることがわかる。 犯行の舞台となったコミュニティサイトを選んだ理由は、「多数の児童が登録」31.4%、「児童とメールアドレスの交換ができるから」12.8%、「プロフィール検索で児童を選べるから」11.0%。「児童の顔写真が掲載されているから」7.8%、「キーワード検索で児童を選べるから」4.5%、「年齢・性別等が詐称できるから」4.6%など。児童を目的とした理由が約7割を占めている。 被害児童を選んだ理由は、「メールの返信が来たから」22.6%、「性交できそうだったから」22.1%、「児童だったから」20.2%、「すぐに会えそうだったから」9.0%が挙げられている。サイト上で被害児童と知り合ってから犯行に及ぶまでの日数は、「当日または翌日」17.1%、「2日~1週間」22.5%、「1~2週間」13.5%、「2週間~1カ月」15.7%という回答で、約4割が知り合ってから1週間以内に犯行に及んでいる。
■サイト内メールから児童と直接連絡へ、8割が年齢を詐称
被疑者の当該サイトへのアクセス手段は「携帯電話」が89.4%で、うちスマートフォンが59.7%を占め、2012年下半期の約2.1倍に増加している。 サイト内で連絡し合う「ミニメール」の利用状況は、「利用有り」35.4%で、前期の5割以上を下回った。このミニメール利用の8割以上が直接メール等へ移行している。直接メール等へ移行する連絡方法としては、「ミニメールに記載」56.2%、「サイト内のプロフィール・掲示板に記載」30.1%、「チャット・トーク等の機能で連絡(会話)」11.2%となっている。 被疑者が自分の年齢や職業などプロフィールを詐称した割合は39.2%あった。詐称内容は、「年齢のみ」45.2%、「年齢+職業」29.8%、「年齢+職業+性別」2.6%、「年齢+性別」1.3%で、年齢を詐称した割合が約8割を占める。被疑者の実際の年齢をみると、「20~29歳」48.2%、「30~39歳」24.7%で、20歳代の割合が約5割を占める。「40~49歳」58人(8.7%)、「50~59歳」8人(1.2%)、「60歳以上」3人(0.5%)と中高齢層もまじり、「18歳未満」は30人(4.5%)だった。
■アクセス利用は携帯電話が9割、その7割以上が両親名義
被害児童が当該サイトを選んだ理由は「無料だから」が5割以上を占める。被疑者と会った理由は、「遊ぶため」20.0%、「相談に応じてくれる人、優しい人だから」17.7%、「お金・品物を得るため」17.1%、「しつこく会おうと誘われたから」7.2%、「友達・彼氏募集」6.1%などが続く。 アクセス手段は携帯電話が89.1%で、うちスマートフォンが274件(50.5%)を占め、前期の約2.2倍に増加している。携帯音楽プレーヤーやゲーム機を使ってアクセスしたという児童も13人(2.2%)いる。使われた携帯電話の名義は「本人」21.3%、「母親」39.7%、「父親」33.2%で、両親名義の割合が7割以上を占める。
■保護者の注意を受けていない児童6割、フィルタリング未加入95%
被害児童に対する保護者の指導状況をみると、「サイト利用を親に話していないので、注意を受けたことはない」29.7%、「注意を受けたことはない、放任」24.5%、「ゲームサイトと親に話していたので、注意を受けたことはない」1.2%など、保護者による注意を受けていなかった割合が約6割(55.4%)を占める。「一般的な注意を受けていた」26.8%、「注意を受けていたが無視していた」10.5%など、保護者から注意を受けていた児童は約4割(44.6%)となる。学校による指導状況は、「注意あり」73.0%、「注意なし」27.0%で、7割以上が学校から注意を受けている。 携帯電話のフィルタリングについては、携帯電話購入時に「保護者と被害児童が一緒に来店」が84.6%あるものの、「未加入」が95%にのぼる。
警察庁は今後の対策として、ミニメールの内容確認などサイト内監視体制の強化、サイト事業者等への実効性あるゾーニング導入に向けた働きかけ、フィルタリングの普及、児童や保護者、学校関係者等に対する広報啓発と情報提供などを挙げている。
(2013/11/22 ネットセキュリティニュース)
【関連URL:警察庁】 ・コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査結果について(平成25年上半期)[PDF] http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h25/community-1.pdf