金融庁は23日、本年度第1四半期(4~6月)のインターネットバンキング不正払戻し被害の発生状況を取りまとめた。この調査は、全国銀行協会の同様の調査よりも対象が多く、警察庁がまとめた不正送金被害の発生状況とよく似た結果を示している
インターネットバンキングの不正払戻しは、ウイルスなどによる不正送金被害が広がった2013年6月頃から急増し、昨年度の第4四半期(2014年1~3月)には、被害件数677件、被害金額9億4200万円と、ともに四半期ベースでの過去最悪を記録している。本年度第1四半期は、被害件数489件、被害金額7億7200万円と、最悪だった前期から回復を見せるも、依然として被害はハイペースで増え続けている。
金融庁の集計は、4月~3月末を1年としているので、現状は、過去最悪だった昨年度からようやく回復の兆しが見え始めたといったところだろうか。先に出された警察庁のまとめも同じような傾向を示しているが、1~12月が1年であるため、少々印象が異なるかもしれない。
今回の金融庁の調査結果を警察庁の集計期間に揃えると次のようになる。1~12月の通年では、間違いなく過去最悪の1年になってしまうことだろう。
期間 金融庁/警察庁
2014年上半期 1166件(17億1400万円)/1254件(18億5200万円)
2013年下半期 1093件(11億円)/1098件(11億9300万円)
2013年上半期 229件(2億4100万円)/217件(2億1300万円)
■改善する被害と悪化する被害
第1四半期から第2四半期にかけての回復傾向は、被害の中心だった個人口座と主要行の被害改善によるところが大きい。個人口座の被害件数は、前四半期の634件から434件(68.5%)、被害金額は7億7900万円から4億6300万円(59.4%)へと減少。主要行の被害件数は、前四半期の639件から416件(65.1%)、被害金額は7億8500万円から4億6200万円(58.9%)へと減少しており、かなり改善されたことが分かる。
ところが、法人口座と主要行以外(地銀や信金)の被害に目を向けると、状況は一変する。法人口座の被害件数は、前四半期の43件から55件(127.9%)へ、被害金額は1億6200万円から3億900万円(190.7%)へと増加。主要行以外の被害件数は、前四半期の38件から73件(192.1%)へ、被害金額は1億5700万円から3億1000万円(197.5%)へと増加と、大幅に悪化しているのだ。
この数字の変化は、地方の企業に被害が広がっていることを示している。本四半期の個人口座の平均被害額106万円に対し、法人口座は562万円と被害額が大きくなる傾向にある。今後の動向次第では、せっかく見えはじめた回復の兆しが台無しになってしまうかもしれない。
(2014/10/28 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・偽造キャッシュカード等による被害発生等の状況について(金融庁)
http://www.fsa.go.jp/news/26/ginkou/20141023-3.html
・平成26年上半期のインターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生状況等について[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/pdf/H260904_banking.pdf