警察庁は先月末、青少年の非行と犯罪被害の現状をふまえ、対策を呼びかける「少年からのシグナル」を公開した。インターネットのコミュニティサイトやスマートフォンのアプリを通じて、10代の子どもたちが重大な被害にあうケースが目立っているという。
公開されたPDF版「少年からのシグナル」は、前編「少年非行と犯罪被害の情勢」と、後篇「少年の非行を防止し、犯罪被害から守る取組み」に分かれ、前編で非行と犯罪被害の状況を明らかにし、後篇で警察庁の取組みを述べている。
■コミュニティサイトやアプリを介し、凶悪な犯罪被害が発生
「少年の福祉を害する犯罪」の章では、インターネットのコミュニティサイト(SNS、プロフィールサイトなど)やスマートフォン(スマホ)のアプリケーションを通じて遭遇する、児童の犯罪被害が詳述されている。これらを通じてコンタクトした児童の弱点につけこみ、いわれのない罰金を科したり、脅しによって組織的に支配し、監禁したり、全国を連れ回して売春等を強要するなど、極めて悪質な犯罪が発生しているという。
実際に起きている被害として、12歳から17歳の児童の被害例7件が紹介されている。「モデル募集のブログを通じて知り合った男性」、「携帯電話のレンタルブログサービスで知り合った同学年の少女(成年男性のなりすまし)」、「インターネットを通じて知り合った15歳の少年(成人男性のなりすまし)」、「出会い系サイトで知り合った援助交際の相手」など、ネットでの出会いが犯罪被害にあうきっかけとなっている。見知らぬ相手の言葉を安易に信じて交流した結果、裸の写真や動画をネット上に掲載・販売されるなど、起きてはならない深刻な被害が発生してしまっている。
■サイバーパトロールで積極的取締り
インターネット上に流出した写真や動画は事実上回収不可能であり、被害児童の苦しみは将来にわたり続くことになる。警察は、児童買春児童ポルノ禁止法(正式名称:児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)により、これら犯罪行為の積極的取締りを行っている。その一つが「サイバー補導」で、ネット上に援助交際を求めるなどの不適切な書き込みを行った児童をサイバーパトロールによって発見し、当該児童に接触して直接指導を行う。昨年は158人の児童が補導されたという。
同法については、いわゆる児童ポルノの単純所持の禁止規定や盗撮による児童ポルノ製造の処罰規定等を盛り込んだ改正法が、今年7月から施行されている。
■スマホのフィルタリング設定を確実に
子どもの犯罪被害防止にはフィルタリングが有効だ。しかし、十分に普及しているとはいえず、特にスマホは、(1)携帯電話回線による接続、(2)無線LAN回線による接続、(3)アプリによる接続、の3つに対応しなければならず、保護者にとっても設定のハードルが高い。適切な設定がなされないまま子どもにスマホの使用を許した場合、犯罪被害にあう危険性は高まる。警察は、スマホを含めた携帯電話への適切なフィルタリングの利用を呼びかけている。
警察庁は、全国に設置されている「ヤングテレホンコーナー」で、少年や保護者等から、非行、家出、いじめ等少年問題に関するあらゆる相談を受け付けている。「匿名通報フリーコール」(月~金、9:30~18:15)、24時間オンライン受付の「ウェブ匿名通報」も利用できるので、下欄資料を参照いただきたい。
(2014/10/07 ネットセキュリティニュース)
【関連URL:警察庁】
・少年からのシグナル[PDF](平成26年)
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/signal/SIGNAL2014.pdf
・平成26年上半期の出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について[PDF]
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h26/pdf02-1.pdf
・児童虐待及び福祉犯の検挙状況等(平成26年上半期)[PDF]
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/jidougyakutai_fukushihan_kenkyoH26_1.pdf
・インターネット上の違法情報・有害情報はこちらへ
http://www.internethotline.jp/