IPA(情報処理推進機構)は1日、SNSで知り合った異性に不正アプリを悪用した「セクストーション(性的脅迫)」を受けたという相談が寄せられているとして、安易なアプリのインストールやプライベートな写真・動画のやりとりは止めるよう注意を喚起した。
セクストーションとは、「sex(性的な)」と「extortion(脅迫)」を組み合わせた造語で、被害者のプライベートな写真や動画を入手し、それをばらまくなどと脅迫する行為を指す。今年9月以降、不正アプリを使って電話帳情報とプライベート動画を入手し、「この動画をばらまかれたくなかったら金を出せ」と脅迫する相談が、IPAに寄せられるようになったという。それ以前の今年6月、広島県警がこの手口による被害増加に注意を喚起していることから、同様の被害が広がっている可能性がある。
■不正アプリを悪用した「セクストーション」の手口
広島県警が6月時点で紹介した犯罪の手口は次の通り。
(1) スマートフォン用アプリを通じて仲良くなった異性から、卑猥な写真や動画を見せ合おうと持ちかけてくる。
(2) 言葉巧みに専用アプリをインストールさせる。
(3) そのアプリは実は不正プログラム(ウイルス)で、スマートフォン内の電話帳やメールアドレスのデータを盗み出す。
(4) 卑猥な写真や動画を送らせたうえで、盗み出した電話帳の宛先に手当たり次第にばら撒かれたくなければお金を払えと脅す。
IPAが今回紹介した相談内容は次の通り。基本的に上記の手口と同じだが、異なるのはインストールさせるアプリがビデオチャットアプリであること。このアプリを使えば、脅しに使う電話帳情報とプライベート動画が同時に入手できてしまう。
(1) SNSで知り合った異性から「プライベートな動画を見せ合おう」と誘われ、ビデチャット機能を持つアプリをインストールするように持ちかけられた。
(2) 被害者は教えられたURLから当該アプリをインストールして相手に連絡。ビデオチャットをしながら服を脱ぐなどしてしまった。
(3) 当該アプリは不正プログラムで、スマートフォン内の電話帳やメールアドレスのデータを盗み出し、ビデオチャットの動画も保存していた。
(4) 見知らぬ番号から電話があり、この動画を電話帳の宛先にばらまかれたくなければお金を払えと脅された。
IPAはこのほか、海外でのセクストーション事例を複数紹介している。フィリピンでは今年5月、高齢男性を標的にSNSを通じてプライベートな動画のやりとりを持ちかけ、入手した動画を「家族や友人にばらまく」と脅し、金銭を得ていた犯行グループが逮捕されたという。
■「セクストーション」被害にあわない対策
不正アプリによる電話帳データ漏えい、個人の映像データ漏えいがなければ脅迫は成立しないので、この2つを防げばよい。IPAは、「アプリは信頼できるマーケットから入手する」「プライベートな写真や動画は第三者に渡さない」の2つを対策に挙げている。
(1) アプリは信頼できるマーケットから:被害者の多くは、SNSやメールで言葉巧みに勧められて添付ファイルやURLをクリックし、不正アプリをインストールしてしまう。アプリの入手は信頼できるマーケット限定することで、この危険を防ぐことができる。
(2) プライベートな写真や動画は第三者に渡さない:他者に見られたくない写真や動画データを誰かに送ったり撮影を許したりすることは「インターネットに公開することと同じ」と認識しよう。「リベンジポルノ」などの被害の可能性もあるので、たとえ友人や恋人であっても許してはいけない。IPAはさらに、ウイルス感染等によりデータが外部に流出する可能性もあるので、他者に見られたくない写真や動画は、そもそも撮影しないことが賢明であるとしている。
実際にセクストーション被害にあってしまった場合は、脅す相手には連絡せず、警察へ相談されたい。いちど他者の手に渡ったデータを削除したり取り返したりすることは困難だが、何らかの解決策を求めることはできるはずだ。
(2014/12/03ネットセキュリティニュース )
【関連URL】
・2014年12月の呼びかけ:個人間でやりとりする写真や動画もネットに公開しているという認識を!(IPA)
http://www.ipa.go.jp/security/txt/2014/12outline.html
・トラブル事例:セックストーションについて(広島県警サイバー犯罪対策課)
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/police3/extortion.html