コミュニティサイトを利用して性犯罪などの被害にあった18歳未満の児童数が2年連続で増加し、過去最悪の1421人となった。無料通信アプリのID交換掲示板が被害増加に影響している。アクセス手段の約8割はスマートフォンで、約9割がフィルタリングを利用していなかった。
出会い系サイトの被害児童数が減少を続ける一方で、コミュニティサイトでの被害児童数は増加を続けている。2011年、2012年に減少の兆しを見せたものの、2013年に増加に転じ、2014年は統計を取り始めた2008年以降、最多の1421人(前年比128人増)となった。
●無料通信アプリの「ID交換掲示板」が被害増を後押し
2年連続の被害増に大きく影響したのは、LINEなど無料通信アプリのID交換掲示板だ。無料通信アプリは、IDさえわかれば相手の電話番号やメールアドレスを知らなくても直接やり取りができる。ID交換掲示板を使えば、児童が見ず知らずの相手と出会い、直接連絡し合うことが可能になる。
警察庁は、ID交換掲示板に起因する被害児童数を2012年から別枠でカウントしているが、2012年に36人だったものが2013年には352人に急増し、2014年も439人に増加した。しかし、この439人の内訳をみると、2014年の上半期が262人、下半期が177人となっており、減少への流れも見える。警察庁の要請を受けて関係各所がとった防止対策が、効果を上げているものと見られる。
●深刻な「重要犯罪」が前年比で46%増
2014年にコミュニティサイトで被害にあった1421人の被害内容をみると、最多は「青少年保護育成条例違反」の711人、次いで「児童買春・ポルノ禁止法違反」618人、「児童福祉法違反」54人だった。いずれも性犯罪関連の条例・法律で、この3項目で計1384名、全体の97%となる。残りは「重要犯罪」に分類される被害で、「強姦」23人、「強制わいせつ」11人、「略取誘拐」3人、「殺人」1人という深刻な被害が発生した。前年比で46%の増加となった。
●アクセス手段の最多はスマホ、フィルタリングは9割以上が利用せず
被害児童がコミュニティサイトへアクセスする際に使った手段は「スマートフォン」1118人が最多で、被害児童全体の78%を占める。次いで「携帯電話(+パソコン含む)」158人、「パソコン」43人、「その他」90人と続く。
コミュニティサイトを利用することについて、保護者から注意を受けていなかったという被害児童は53.8%と半数を超え、9割以上がフィルタリングに加入していなかった。デジタルアーツの最新の調査では、10~18歳のフィルタリング利用率は48.6%となっており、被害児童の利用率の低さがわかる。
警察庁は今後、コミュニティサイト事業者に被害防止対策を働きかけるとともに、スマートフォンを中心としたフィルタリングの普及活動、児童、保護者、学校関係者に対する広報啓発、サイバー補導の推進などに努めていくとしている。
(2015/04/22 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・平成26年中の出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h26/h26_community-2.pdf
・未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査[PDF](デジタルアーツ)
http://www.daj.jp/company/release/data/2015/020901.pdf