55歳以上のネットユーザーはインターネット上での行動が安全性に欠ける傾向にあり、サイバー犯罪の標的になりやすい――セキュリティベンダーのカスペルスキーが、21か国の16歳以上1万2546人を対象に行った意識調査の結果を発表した。
調査は8月にオンライン上で、調査会社のB2B Internationalと共同で行った。調査結果を報告するレポートによると、55歳以上の中高年ユーザーは、生活の多くの場面でインターネットを利用し、サイバー犯罪にあうことを懸念している反面、自分自身が標的になる可能性を低く見積もっている。
■中高年層のインターネット利用は全齢層を上回る高率(94%)
具体的に見ると、日常的にメールをやり取りすると答えた55歳以上の中高年ユーザーは94%で、全年齢層の87%を上回った。また、55歳以上の4分の1がSkype、Googleハングアウトなどのビデオ通話やインスタントメッセージを利用しているほか、61%がSNSサイトを使っている。
金融取引をオンラインで行う中高年ユーザーも多い。インターネットバンキングや株式の売買など金融関連でインターネットを利用すると答えた中高年ユーザーは90%で、全年齢層の84%を上回った。クレジットカードやデビットカード、あるいはオンライン決済システムを利用してオンラインショッピングをしているのは、この年齢層が最も多いという結果も出た。オンラインで日常的に買い物をしていると答えた中高年ユーザーは64%で、全年齢層の平均56%を上回っている。
■サイバー犯罪を案じつつ自分は標的にならないと思い、セキュリティ対策はお粗末
インターネット利用時に中高年層が懸念している事項のトップ3は、アカウントのハッキングが71%(全体は70%)、マルウェアにデバイスのパスワードを盗み取られることが70%(同70%)、金融機関の顧客口座を標的にしたサイバー犯罪で財産を失うことが68%(同65%)だった。しかし、自分がサイバー犯罪者の標的になりうると考えている中高年ユーザーはわずか14%で、全年齢層の21%を大きく下回っている。
コンピューター、タブレット、スマートフォンをセキュリティソフトとパスワードの両方で保護している中高年ユーザーは51%で、全体の46%を上回っているものの、これらに一切パスワードや認証を設定しないと答えた人は21%(同14%)もいた。プライバシーを保護するためにSNSサイトやブラウザのプライバシー設定を高くしている人は、中高年ユーザーでは30%にとどまった(全体は38%)。モバイルデバイスのアプリで位置追跡機能をオフにしている人は、全体では32%だったが、中高年ユーザーではわずか18%だった。
■「根拠のない信頼」が詐欺などのトラブルを招き、感染に気づいていない可能性も
中高年層は他人を信じやすく、サイバー犯罪者の格好の標的となっていると同レポートは指摘している。調査対象者全体の14%が「中高年層の近親者がオンラインの当選詐欺や投資詐欺に引っかかった」と答え、また、12%が「中高年層の近親者が偽サイトやメールが絡んだオンライン詐欺の標的になった」と答えている。
自らがマルウェアに感染したことがあるとした中高年ユーザーは12%(全体では22%)だった。一方、「中高年の近親者がマルウェアに遭遇したことがある」と答えたユーザーは20%で、中高年ユーザーが自らを危険にさらしたことを十分に認識していないこともうかがえるという。
■安全にネットを楽しむために――危険を知ること、若年層の手助けも必要
同レポートは、中高年ユーザーはサイバー空間に対する意識が不十分で、オンラインの危険性に対して必要な注意を十分に払えないと指摘している。また、他人を信じやすいという傾向も、この年齢層がトラブルに陥る原因だとしている。
そのうえで、中高年のインターネットユーザーに対しては、オンラインで直面する危険をもっとよく知ること、若年層に対しては、サイバー犯罪者がもたらす脅威から中高年ユーザーが身を守るための手助けをすることを呼びかけている。さらに、すべてのデバイスで信頼できるセキュリティ製品を利用することと、高度なセキュリティ設定を行うことを推奨している。
(2016/10/11 ネットセキュリティニュース)
【関連URL:カスペルスキー】
・年齢とセキュリティ知識は比例するか?
http://www.kaspersky.co.jp/about/news/virus/2016/vir28102016
・年齢とセキュリティ知識は比例するか?‐インターネットで55歳以上のユーザーが直面する脅威の考察[PDF]
http://media.kaspersky.com/jp/pdf/pr/Kaspersky_ITSecRisk2016-Over55-PR-1026.pdf