北海道警察江別署の巡査のパソコンがウイルスに感染し、ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」を介して捜査情報が流出したとして、道路交通法違反で現行犯逮捕された容疑者だった江別市内の男性が道に200万円の賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は19日、男性の上告を棄却。請求を棄却した2審判決が確定した。
2004年3月29日から30日にかけて「Antinny.G(アンティニーG)」に感染した当該巡査のパソコンから、当時19歳だった男性など8人の個人情報を含む捜査関係書類6件がインターネット上に流出した。男性は同年6月、国家賠償法に基づき道に200万円の賠償を求め提訴する。2005年4月28日、1審札幌地裁(鈴木秀行裁判官)は巡査の情報管理に対する注意義務違反を認め、プライバシー権を侵害したとして40万円の支払いを命じた。
同年11月11日、2審札幌高裁(末永進裁判長)は、巡査が自宅でパソコンをインターネットにつないだことは職務行為とはいえず、Antinny.Gの情報が一般には広まっていなかった当時、捜査情報が流出するという結果について予見可能性があったということはできないとし、1審判決を取り消し男性の請求を棄却した。
Antinny.Gの出現から2年が過ぎた今年3月、岡山県警や愛媛県警での相次ぐ捜査情報の大量流出を受けて、警視庁は情報セキュリティ対策徹底のための緊急対策を実施。全国の警察本部にWinnyの使用禁止を通達した。
(2006/10/22 ネットセキュリティニュース)
■判決文
・平成17年(ネ)第214号 損害賠償請求控訴事件:平成17年11月11日 札幌高等裁判所[PDF]
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/C366074198A6DEFF492570B90016654D.pdf
・平成16年(ワ)第1231号 損害賠償請求事件:平成17年04月28日 札幌地方裁判所[PDF]
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/0039B1714FD9A35B49257014000FA2EA.pdf
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