警視庁竹の塚署は2日、埼玉県川口市の自動車修理会社元従業員の男(29歳)を道路交通法違反の疑いで書類送検した。調べによると、男は昨年10月26日夜、東京都足立区入谷の都道で車を運転中、都内の男性会社員(31歳)の車の前に割り込もうとして前部に接触し逃走した疑い。
この当て逃げ事故をめぐっては、被害者がネットに公開したビデオをきっかけに大きな騒ぎに発展。車の所有者だった元従業員は、当初、自分は運転していないと容疑を否定していたが、その後の調べで当て逃げを認めたという。
被害者のブログ(すでに閉鎖)などによると、当て逃げの一部始終は被害者の車載ビデオカメラで撮影されており、事故直後に同署に通報し当該ビデオを提出した。ビデオには当て逃げした車のナンバーもはっきり写っており、犯行車両と所有者が判明するも、所有者は「車は貸していて相手は分からない」と主張していたらしい。同署は犯人が特定できないとして捜査が進展しないまま、半年近くが経過。業を煮やした被害者は4月19日、自身のブログに犯行車両のナンバーと所有者の名前などを掲載し当該ビデオを公開した。
6月12日未明、ネット掲示板「2ちゃんねる」に「車載カメラにて当て逃げの瞬間を録画!」と題したスレッドが立ち話題騒然。いわゆる「祭り」が始まった。当て逃げビデオはYouTubeなどにも転載され、掲示板に掲載された所有者の勤務先には、同日朝より抗議の電話が殺到する。同社は同日、ホームページ(HP)に「正確な状況が分かり次第報告する」とのコメントを掲載しHPを閉鎖。15日に調査結果を公表し、当該社員が自分は運転はしていないと説明してるため加害者とは断定できないが、所有車両を貸し出し事故を招いたことについて重大な責任があると判断し、14日付で懲戒免職処分にしたと発表した。
祭り突入直後から、ネット系のメディアが先行して報道。2週間遅れでマスコミもこの問題を採り上げ、一部キャスターが警察の怠慢を指摘するも、ネット上の誹謗中傷問題として構成されたものが多くを占めた。ネット上で繰り広げられる「祭り」には問題点も多々あるが、大きな騒ぎにならないとなかなか動いてはくれないという現実があるのもまた確かだ。
元従業員の書類送検を受けて会社は3日、HPの掲示を更新し改めて謝罪。当事者の隠ぺいにより被害者や世間、警察署などを混乱させ捜査を複雑化させたことは大きな問題だと述べるとともに、同じ職場の従業員に対しても正直に語ってくれず、裏切られた思いが拭えない状態だとコメントしている。
当て逃げ動画ネット公開で始まった騒ぎは、容疑者の書類送検でようやく終えんを迎えたが、被害者はブログを閉鎖し、容疑者はmixiを去り、勤務先のHPも再開の目処はたっていない。
(2007/08/06 ネットセキュリティニュース)
■弊社元従業員の当て逃げ事件に関して(ディーウエスト)
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