インターネットの著作権問題でユーザーの注目を集める「ダウンロード違法化」を盛り込んだ著作権法改正案が10日に閣議決定、今国会に上程された。文部科学省はサイトに改正法案を公開している。
一方、11日には、日本レコード協会に所属する会社10社が、ファイル共有ソフトで音楽ファイルの不正公開を行っている4名に対し、損害賠償請求等を行うため、インターネットサービスプロバイダー(ISP)2社へ情報開示請求を行った。
■「ダウンロード違法化」を盛り込んだ著作権法改正案が国会へ
ネットに違法にアップロードされている音楽・映像を、ダウンロードする行為もまた違法とする「ダウンロード違法化」を盛り込んだ著作権法の改正案(著作権法の一部を改正する法律案)が10日、閣議決定され、国会に提出された。
現行法では、著作権者に無断で音楽・映像をアップロード(公開、配信)する行為は禁止されているが、ダウンロードする行為を違法とする規定はなかった。ただし、改正案でも違法とされるのは、「違法と知りつつ」ダウンロードした場合に限られる。また、違法と知りつつダウンロードした場合(違法行為を犯した場合)も、罰則規定は設けられていない。対象は音楽と映像(テレビ/映画など)に限定され、プログラム(ゲーム等)や画像、テキストは対象となっていない。
著作物の違法な流通抑止策としては、このダウンロード違法化のほか、海賊版DVDなどを違法と知りつつネットオークションに出品する行為を違法とし、こちらは罰則規定(懲役/罰金)を設けている。
一方、著作物利用の円滑化をはかる措置としては、検索エンジンにおける著作物の一時複製(キャッシュ)や、ストリーミング配信におけるキャッシュを合法としている。また、テレビ番組などをネットで二次利用する際、著作権者全員の許諾が必要となることがネックとなるが、文化庁長官に裁定申請して担保金を供託すれば利用可能となるなどの措置が設けられた。このほか、障害者向けの利用円滑化のための規定も盛り込まれ、ネット時代への対応を主眼とした改正案となっている。国会で可決成立すれば、施行期日は来年の1月1日となる。
・著作権法の一部を改正する法律案(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/171/1251917.htm
■レコード協会10社、音楽ファイルの不正公開者4名の情報開示請求
日本レコード協会(RIAJ:東京都港区)は11日、同協会会員のレコード会社10社が、インターネットサービスプロバイダー(ISP)2社に対し、音楽ファイルの不正アップロードを行った4名に関する情報開示請求を行ったと発表した。
発表によると、4名は昨年11月から今年2月までに、ファイル共有ソフトのWinMXを利用して、権利者に無断で、多数の市販レコードの音源を公開していた。これは、同協会会員レコード会社がもつ著作隣接権(送信可能化権)を侵害するものとして、侵害されたレコード会社10社が、「プロバイダ責任制限法」第4条第1項に基づき、ISPに対し、4名の住所、氏名等の情報の開示を求めた。
同協会は、WinMXを利用した音楽ファイルの不正公開者に対し、インスタントメッセージ機能を利用して警告を行っており、2004年3月から現在まで1220万通を送ってきたという。今回の4名は、これまで10通以上の警告を受けながら、侵害行為を止めなかったことから悪質であるとして、損害賠償請求等を行うために情報開示を求めたとしている。
RIAJは2006年にも、ファイル交換ソフトを利用して音楽ファイルを不正公開していた19人の情報開示をISPに求め、東京地裁が情報開示を命じる判決を下している。
・音楽ファイルの不正アップロードを行った4名の情報開示請求実施(RIAJ)
http://www.riaj.or.jp/release/2009/pr090312.html
・音楽ファイルの不正アップロードユーザー19名の氏名等の開示を命じる判決下る(RIAJ)
http://www.riaj.or.jp/release/2006/pr060925.html
(2009/03/19 ネットセキュリティニュース)