警察庁は20日、2009年上半期の薬物・銃器情勢について取りまとめ公表した。
それによると、前年同期に比べて覚せい剤や麻薬の検挙が減り、薬物事犯全体では検挙件数が1409件減の9,742件、検挙人数が597人減の7020人と減少したものの、大麻は増加。検挙件数は226件増の1907件(13.4%増)、検挙人数は254人増の1446人(21.3%増)となった。大麻事犯は、昨年1年の検挙件数が3829件、検挙人数が2758人で、いずれも過去最多を記録したが、今年はこれを上回る勢いで推移している。
薬物全体では、大麻の占める割合は2割弱。依然として覚せい剤が8割近くを占めているが、年齢別で見ると、若年層に行くほど大麻の占める割合が増えており、20代では41.6%、20歳未満では48.6%と、覚せい剤と肩を並べる。低年齢層への汚染は広がっており、中高生に限れば、覚せい剤が高校生15人、中学生3人に対し、大麻は高校生18人、中学生4人と逆転する。
55.0%を20代が、20歳未満も加えると62.3%を若年層が占める大麻事犯は、初犯者の占める割合が高いのも特徴のひとつ。薬物事犯全体の初犯者率が52.1%なのに対し、大麻は84.9%と高率を示す。
【大麻種子のネット販売】
大麻をめぐっては、インターネットで種子を購入し自家栽培する違法行為がしばしば取り上げられ、インターネットを取り巻く社会問題のひとつにもなっている。これは、今回のまとめにも色濃く出ており、大麻栽培の検挙件数は前年同期39.6%増の127件、検挙人数は40.5%増の104人に増加した。大麻栽培の大半は、屋内やベランダなどの比較的狭い場所での小規模なものだが、中にはビル一棟を貸し切った大がかりなものもあり、大麻草の押収量は前年同期の758本から6361本へと大幅に増加した。
★高校生に大麻種子販売した「SEEDS BANK」運営者に実刑判決
大麻種子のネット販売摘発は、報告書の事例のひとつにも挙げられている「SEEDS BANK」の摘発が記憶に新しい。今年4月21日、千葉の男子高校生に大麻種子10個を6500円で販売ししたとして、同サイトの運営者らを大麻取締法違反容疑で逮捕。先月13日に開かれた同サイト運営者の男の判決公判で、東京地方裁判所は懲役2年10か月の実刑を言い渡した。同サイトの摘発では、運営者のほかに種子を購入した男子高校生ら客十数人も同法違反容疑で芋づる式に逮捕された。
★「大麻種子のネット販売」は野放し状態?
過去最悪の大麻汚染を迎えた昨年、警察庁は大麻種子のネット販売を新たに有害情報に指定し、削除要請の対象にすることを検討。一時は歯止めをかける方向に動くかとみられたが、最終的には見送られてしまった。業務の一部を委託しているインターネット・ホットラインセンターは、「現行法では、大麻の栽培は違法であるが、大麻の種子の売買自体が違法とされていないことから、これを誘引する情報について、プロバイダや電子掲示板の管理者等に対して削除を依頼することは、有害情報の範囲が無制限に拡大されるとの疑念を抱かれ、インターネット・ホットラインセンターの業務運営に支障を及ぼすことから、困難であると判断した」としている。
(2009/08/25 ネットセキュリティニュース)
■平成21年上半期の薬物・銃器情勢[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/yakubutujyuki/yakujyuu/yakujyuu3/h21a_jyousei_yakuzyuu.pdf
■「ホットライン運用ガイドライン」等に対する意見の募集について(ホットライン運用ガイドライン検討協議会)
http://www.iajapan.org/hotline/center/20090209public.html