先に掲載した「児童ポルノ(1) 摘発相次ぐ~幼児の裸売る親、自らの裸売る女子高生も」では、最近1か月の間に児童ポルノ禁止法違反容疑で検挙され報道されたものから13件を取り上げた。それらの事例から浮かび上がる問題は、あまりに重い。
■後を絶たない「裸の写真を送る少女たち」~新たなイジメ手段にも?
いくつかケースごとに分類した中で、もっとも多かったのは「児童ポルノを撮影させ送らせたケース」6件だ。女子児童を脅して自分の裸を撮影させ、メールで送らせるもので、本通信では同様の事件を「裸の写真を送る少女たち」と題し、これまで複数回、掲載してきた。1回だけでなく複数回の掲載となったのは、発生数が多かったためだが、このケースは本当に「あまりにも多すぎる」というのが実感だ。
何度も指摘されてきたことではあるが、カメラ付き携帯電話と携帯メールの普及が、こうした犯罪の垣根を低くし、実行を安易なものにしている。
案じられるのは、男に脅された女子児童が自分の裸の写真を撮影し送るという例だけでなく、女子高生たちがターゲットとした下級生にそれを強要し、入手した写真を面白半分に複数宛てにメールで送るなどという事件が起きていることだ。被害者となった少女はこれを知って母親とともに警察に出向いたというが、彼女が受けた衝撃ははかり知れない。もし子どもたちの間で新たなイジメの手段として使われているとすれば、これほど陰湿で残酷なことはないだろう。
■母親がわが子の裸を撮影・販売~子どもの未来を奪う深刻な幼児虐待
母親が4歳のわが子の裸を撮影し販売するという、あってはならない事件が起きてしまった。前掲記事にはあげなかったが、この事件と連動して、1歳、2歳の子どもの裸体写真を、指示された通りに撮影して金に換えた母親たちが逮捕されている。高額で買い取るとそそのかす人間の指示通りに、幼児にわいせつなポーズをとらせて写真を撮影する母親は、すでに親ではなく、子どもの健やかな未来を奪う虐待者だ。
幼い子どもは自分が受けている性的虐待の意味を理解することができない。成長後に記憶がよみがえり、その意味を理解したときの心の傷はいかばかりか。記憶ばかりではない。児童ポルノ画像はいったんデータとして送受信されると、その画像がコピーされ、際限なく流通してしまうおそれがある。たとえ流通させる意図がなくても、パソコンに保存していれば、ファイル共有ソフトによるデータ流出など、予期せぬ流出・流通の危険は否定できない。児童ポルノの被害者は、自分の画像が今も出回っているのではという恐怖に生涯苦しめられるという。これは、暴力やネグレクト以上に深刻な虐待ではないか。
■金銭目的で自分の裸写真を撮影・送信した女子高生たち~犯罪被害や非行転落のおそれ
手っ取り早く簡単に遊ぶ金を得ようとして、女子高生たちは自分の裸を携帯電話のカメラで撮影し、出会い系で知り合った男にメール送信したという。男は彼女らが期待した対価は払わなかったというが、被害がそれだけで済めば超ラッキーと思わなくてはならないだろう。画像がメール転送などによって広がる可能性があるのはもちろんのこと、Webサイトに掲載され不特定多数にさらされたり、その画像を脅迫材料にされ、金品を要求されたり、わいせつ行為を強要されるおそれは決して小さくないのだから。
思春期以降の子どもたちが、自らの性を切り売りする手段として携帯電話や携帯インターネットを使うことがないよう、その恐ろしさを伝える教育がしっかりとなされてほしいものだ。
これらのケースをみると、学校でのイジメや家庭での幼児虐待、中・高校生の非行といった負の世界で、その新しい手段として、児童ポルノが使われ始めているのではないかという危惧を抱かざるを得ない。これ以上の広がりはなんとしても食い止めねばならないだろう。
上記のほか、前掲の記事では「児童ポルノを撮影し保存」「児童ポルノをネットに掲載」「児童ポルノをネットで販売」それぞれの事例をあげているが、どのケースにおいても、児童ポルノがデータとして流通し広がる危険は共通しており、将来にわたって児童を苦しめる罪深さは変わらない。
(2009/10/08 ネットセキュリティニュース)