東京都生活文化スポーツ局は1日、バンドメンバー募集を装って応募者に高額な所属契約料を支払うように勧誘していた都内の音楽事務所に対し、東京都消費生活条例に基づいて、当該行為をしないように勧告を行った。
勧告を受けたのは、有限会社サウスセントラルレコード(東京都品川区)。同社はインターネットの掲示板で「他のメンバーはそろっているがボーカルがいない」と個人を装ってバンドメンバーを募集。応募者を事務所に来訪させると、高額な所属契約料が必要であるとして、長時間に及ぶ勧誘を行った。支払えないという応募者に対し、「会社が返済するから」と、個人名義で消費者金融で借金をさせ、契約金を支払わせた。消費者金融会社に借金を申し込む際には、勤務先として架空の会社名や電話番号を申告するように指示していた。
高額な契約料を支払って契約しても、CD制作、ライブ公演、番組出演などの具体的な音楽活動は行われない。解約を求めても、「納入された資金はいかなる理由でも一切返金されない」という契約条項を盾に契約金は返還されず、借金返済は応募者の負担となっていた。
こうした契約金の返済を求める相談や、消費者金融への負債についての悩みなど、同社との契約金をめぐる相談が、2004年度以降現在まで計14件、金額としては最高240万円から最低30万円まで、東京都消費生活総合センターに寄せられていた。
お金を支払っても対価が得られない場合には「特定商取引に関する法律」に照らすのが一般的だが、「事務所所属契約」はその対象商品となっていない。そのため、対象を限定していない東京都消費生活条例での勧告となったという。
都によると、勧告文書を音楽事務所代表に渡したが、勧告に従って15日までにどのような改善を行ったか都知事宛てに報告がない場合には、その旨を公表するという。法的な抑止力には限界があるため、公表することで、同社への注意を広く喚起して被害を防ごうということのようだ。
【関連サイトでも注意呼びかけ~共通の手口とは?】
バンドメンバー募集や音楽事務所関連のサイトでは、こうした詐欺まがいの勧誘にひっかからないように、実名を挙げて注意を呼びかけている。相談事例に共通しているのは、「一人で事務所を訪問する」「事務所で長時間に及ぶ加入を受ける」「疲れた頃に高額の契約金が必要といわれる」「契約書の持ち帰りはいけないといわれる」「すぐに契約を求められる」「契約金を支払ったあとも音楽活動のための金銭を要求される」などの手口だ。悪質な音楽事務所とその代表者は、名前や場所を変え、同じ行為を繰り返している。
バンドメンバー募集だけではなく、モデル勧誘などでも同様の被害事例が少なくない。これら悪質な勧誘の被害にあわないためには、応募前に信頼できる事務所なのか、よく調べること。また、万一おかしいと感じたら、口車に乗せられないうちに、すぐに撤退することも大切だ。
(2009/10/06 ネットセキュリティニュース)
■バンドメンバー募集掲示板サイトへの書き込みで呼び寄せ、高額な所属契約を勧誘していた音楽事務所に勧告(東京都)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2009/10/20ja1400.htm
■〔参考資料〕相談事例(東京都)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2009/10/20ja1401.htm