警察庁は18日、「インターネット・ホットラインセンター」の2009年度運用状況を発表した。同センターは警察庁からの委託業務として、ネット上の違法・有害情報などの通報受理、およびサイト管理者やプロバイダーへの削除依頼業務を行っている。
発表によると、同センターが2009年度中に受理した通報件数は13万586件あった。これには、海外と連携しているINHOPE(International Association of Internet Hotlines))経由の通報652件と、外部委託しているサイバーパトロールからの通報1万858件が含まれている。外部委託のサイバーパトロールが始まったのは2008年10月からで、運用状況に通報件数がカウントされるのは今回が初めて。
通報件数は前年より4540件(3.4%)減少しているが、違法情報・有害情報は前年より1万3635件(67.1%)も増え、3万3968件に達している。これは、通報内容を分析すると、1件の通報に複数の違法・有害情報が含まれているケースがあるためだ。
増加した中でも、わいせつ物や児童ポルノ公然陳列などの違法情報は過去最多を記録した。
■違法情報の7割を占める「わいせつ物」「児童ポルノ」
ネット上での流通が法令に違反する「違法情報」は前年より1万3540件増え、2万7751件に達した。95.3%の増加である。このうち外部委託しているサイバーパトロールからの通報は1万161件で、全体の約4割を占める。
違法情報の内訳を見ると、半数以上を占めるのが「わいせつ物公然陳列」で1万4755件(53.2%)、次いで「児童ポルノ公然陳列」4486件(16.2%)、「規制薬物の広告」2555件(9.2%)、「口座等の売買」2382件(8.6%)、「携帯電話等の違法貸与・譲渡業」2086件(7.5%)、「出会い系サイト規制法違反の誘引」1478件(5.3%)と続く。
わいせつ物情報と児童ポルノだけで全体のおよそ7割を占めており、いずれも前年度と比べるとほぼ倍増している。ただし、半数はサイバーパトロールからの通報によるものなので、単純に事件数の増加と見ることはできない。
■有害情報も増加傾向
殺人等の違法行為の請負、集団自殺の呼びかけなどといった人の命にかかわる「有害情報」も増加傾向を示しており、前年より95件(1.6%)増えて6217件となっている。こちらにはサイバーパトロールの通報件数が付記されていないことから、有害情報は活動対象外となっている模様だ。
■減少した「その他の情報」
「その他の情報」とは、違法コピーや海賊版といった知的財産権侵害や子どもに悪影響を及ぼすおそれのあるポルノなど、違法・有害情報に分類されない情報だ。前年より1万6524件(13.4%)減少して10万6423件だった。このうち、知的財産権侵害に関する情報は著作権の関係機関・団体に通知されている。
■削除結果と警察の対応
通報を受けた情報のうち、サーバーが国内にある場合には、同センターからサイト管理者に削除依頼を行っている。違法情報の削除依頼は1万6496件で、応じたのは1万4518件。有害情報の削除依頼は1971件で、1546件が応じた。だが、警察庁は違法・有害情報合わせて1万8467件の削除依頼のうち、これに応じない2403件を問題としている。削除依頼に応じないサイト管理者に対して警察庁は、刑事責任追及を視野に入れて取り締まりを強化する方針を明らかにした。
一方、センターから通報を受けた違法情報もとに警察が検挙したのは、出会い系サイト規制法違反や児童買春・児童ポルノ法違反など110件で、このうち75件がサイバーパトロールからの通報がきっかけになっている。
なお、海外にサーバーが置かれている場合には、前述のINHOPを通じて通報の送受が行われている。2009年度中は海外から652件の通報を受けて警察へ通報したり、国内のサイト管理者へ削除依頼を実施した。センターから海外への通報は664件あったという。
(ネットセキュリティニュース2010/03/23)
■平成21年中の「インターネット・ホットラインセンター」の運用状況について[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h21/pdf55.pdf
■インターネット・ホットラインセンター
http://www.internethotline.jp/index.html