消費者庁は10日までに、受信者の許諾なしに広告メールを配信していたとして、出会い系サイト業者3社に対し行政処分を行った。2社に対しては「特定商取引法」違反で、もう1社に対しては総務省と共に「特定電子メール法」違反での処分である。
■特定商取引法違反:出会い系サイト「ロンバケ」「Saly」「X- Saly」運営2社
消費者庁は、出会い系サイト「ロンバケ」を運営するパルク(東京都杉並区)、同じく「Saly」「X- Saly」を運営するS・T企画(東京都渋谷区)の2社に対し、特定商取引法に基づき、8月5日付で指示処分を行った。
2社はいずれも広告を記載したメールを送信し、そのメールに表示された URLから運営する出会い系サイトに誘導していた。これらの広告メールを送るには、送信前にメールを送る相手の請求または承諾を必要とする法規定があるが、両社とも送信相手から請求や承諾は得ていなかった。これは、特定商取引法のオプトイン規制違反(同法第14条第1項)にあたる。
消費者庁によると、特定商取引法上の違反行為を確認するために設置してある端末には、「ロンバケ」に誘導する電子メールが今年4月5日以降約400件、「Saly」に誘導するメールが昨年12月21日以降約1800件確認されたという。
特定商取引法では、請求や承諾をしていない消費者に電子メール広告を送信した場合には100万円以下の罰金が科せられる。また、法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100万円以下の罰金も科せられる。指示処分に従わなかった場合にも同様だ。
・通信販売業者【(合)S・T企画】に対する指示処分について[PDF](消費者庁)
http://www.caa.go.jp/trade/pdf/100805kouhyou_2.pdf
・通信販売業者【(合)パルク】に対する指示処分について[PDF](消費者庁)
http://www.caa.go.jp/trade/pdf/100805kouhyou_1.pdf
■特定電子メール法違反:出会い系サイト「Pure Life」運営社
総務省と消費者庁は、出会い系サイト「Pure Life」を運営するアンビション(東京都新宿区)に対し、特定電子メール法に基づき、8月10日付で措置命令を行った。
両省庁の発表によると、同社は「Pure Life」、および他社が運営するサイトに関する広告宣伝メールを、少なくとも今年2月17日から8月4日までの間、受信者の同意を得ずに発信した。また、少なくとも今年2月から7月までの間は、送信者の氏名または名称を正しく表示していなかった。前者は特定電子メール法のオプトイン規制違反(同法第3条第1項)にあたり、後者は特定電子メールには送信者名と受信拒否を受け付けるメールアドレスを表示するという表示義務(同法第4条)に違反している。
迷惑メールの相談を受け付けている日本データ通信協会には、同社が発信した広告宣伝メールについて、494人からのべ4352件の相談が寄せられたという。なお、措置命令に従わなかった場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金(法人の場合は3000万円以下)が科せられる。
・株式会社アンビションに対する特定電子メール法違反に係る措置命令の実施[PDF](消費者庁・総務省)
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100810premiums_1.pdf
●迷惑メール規制2法の「オプトイン規制」とユーザーにできること
行政処分を受けた3社はいずれも「オプトイン規制」に違反している。オプトイン規制とは、消費者から広告メール送付の請求や承諾がない限り、広告メールを送ってはならないというものだ。しかし、所管の省庁が根拠とする法が異なっている。
消費者庁が指示処分を行った件は「特定商法取引法」に、消費者庁と総務省が措置処分とした件は「特定電子メール法」に則っている。いずれも大量に送られてくる広告宣伝を目的としたいわゆる迷惑メールの規制を目的として法改正時にオプトイン規制が盛り込まれ、2008年12月に施行された。しかし、経済産業省所轄の特定商法取引法が広告メールの広告主や広告代理店を対象とするのに対し、総務省所轄の特定電子メール法は広告メールの送信者を対象としているなどの差異があると言われている。
行政処分を受けた3社はいずれも自社運営の出会い系サイトの広告宣伝メールを発信しており、広告主と送信者を兼ねている。アンビションは他者運営サイトの広告宣伝メールも発信していたために、特定電子メール法違反の対象になったのだろうか。迷惑をこうむる側としては3社の違反行為は大同小異だが、適応する法によって刑罰に軽重がある。
いずれにしろ、3社の違反行為が明るみに出て行政処分を受けたのは、受信者から相談や通報があったことも力となっている。特定商取引法や特定電子メール法に違反したメールを受信した場合、ユーザーにできる迷惑メール対策として、行政に通じる窓口の活用もあることを知っておきたい。
・迷惑メール相談センター(日本データ通信協会)
http://www.dekyo.or.jp/soudan/index.html
・電子商取引モニタリングセンター(日本産業協会)
http://www.nissankyo.or.jp/e-commerce/index.html
(2010/08/18 ネットセキュリティニュース)