警察庁は2日、2010年上半期のサイバー犯罪(情報技術を利用する犯罪)の検挙状況等について取りまとめ、公表した。検挙件数は昨年同期より3割減少しているが、サイバー犯罪全体が減少したわけではなく、「ネットワーク利用犯罪」は逆に3割増加している。なかでも、著作権法違反と児童ポルノ法違反は、それぞれ+208%、+70%と大幅増加。昨年大きく減少した「インターネット・オークション利用詐欺」も53%の増加をみせている。
警察庁は、サイバー犯罪の新たな取締法を研究し、検挙と防止対策を推進する構えだ。
●全体の「検挙件数」は前年同期より3割減少
2010年上半期の検挙件数は2585件で、2009年同期の3870件より1286件(33.2%)減少している。しかし、サイバー犯罪全体が減少したわけではない。まず、2009年同期の検挙件数3870件は、その前年の2008年同期の2192件より76.6%も増加したもので、増加要因は同一犯行グループによる「不正アクセス禁止法違反」の押し上げだった。2008年同期は157件だった「不正アクセス禁止法違反」が、2009年同期には1965件と約12.5倍(1151.6%)も増加。この1965件のうち1813件が同一犯行グループによるものだった。
そうした特殊事情がない今年度上半期の「不正アクセス禁止法違反」は85件で、このため検挙件数全体が前年同期比では少なくなった。しかし、サイバー犯罪を構成する他の2項目「コンピュータ・電磁的記録対象犯罪」と「ネットワーク利用犯罪」は、それぞれ56件(前年比+19%)、2444件(同+32%)と、いずれも増加している。
●「著作権法違反」が208%増加
ネットワーク利用犯罪の中でもっとも増加が目立つのは、著作権法違反だ。前年同期比で52件から160件へ、208%も増えている。違反事例として、男(37歳)が人気テレビアニメをファイル共有ソフト「perfect dark」を利用して不特定多数に閲覧させた例、男(62歳)が米国で公開され3D映画を日本公開前にファイル共有ソフト「share」を利用して不特定多数に閲覧させた例、男(43歳)が無料のインターネットラジオサービスを利用してアーティストの楽曲を不特定多数に視聴させた例があげられている。
●「児童ポルノ」も昨年に続く大幅増加
著作権法違反に次いで増加が目立つのが「児童買春・児童ポルノ法違反(児童ポルノ)」だ。前年比で194件から329件へ69.6%増となった。児童ポルノ法違反は昨年同期もその前年同期の111件から194件へ大幅増加するなど増加傾向が顕著で、今年上半期の検挙数329件は、2008年の年間検挙数254件をすでに超えている。違反事例としては、男(37歳)が女子児童をだまして裸の写真や動画を撮影させてメール送信させ、携帯電話に保存して児童ポルノを製造した例、男(19歳)がホームページ上に児童ポルノ画像を投稿して公然陳列した例があげられている。
●「児童買春」「青少年保護育成条例違反」「わいせつ物頒布等」も増加
昨年は前年同期より減少をみせていたこの3項目も、今年は増加した。「児童買春」は174件から212件 (+22%)、「青少年保護育成条例違反」は154件から239件(+55%)、「わいせつ物頒布等」は53件から73件(+38%)となっている。
●「インターネット・オークション利用詐欺」も5割増
「ネットワーク利用詐欺」に含まれる「インターネット・オークション利用詐欺」は、これまで年間1000件以上で推移していたものが昨年は年間522件と大幅に減少して注目された。今年は早くも上半期で451件に達し、前年同期比で53%の増加である。年間では2008年以前の1000件台に戻ることが懸念される。
●警察の相談窓口での受理状況
全国の都道府県警察の相談窓口でサイバー犯罪等に関する相談を受理しているが、相談件数は3万7181件で、前年同期の4万3756件より15%減少した。「インターネット・オークション」に関する相談3724件(-356件)、「名誉毀損、誹謗中傷等」に関する相談5006件(-648件)、「不正アクセス、コンピュータ・ウイルス」に関する相談1897件(-100件)と減少する一方、「迷惑メール」に関する相談4364件(+1021件)、「違法・有害情報」に関する相談2107件(+85件)は増加している。
警察庁は、フィッシングやファイル共有ソフトなど新たな手口に効果的な取締り手法を研究し、サイバー犯罪に対応するとしている。また、インターネット上の違法情報に対しては、児童ポルノなど悪質事犯の取締りに重点をおき、投稿者だけでなく、違法情報の投稿や書き込みを知りながら放置している掲示板管理者の刑事責任の追及をも視野に入れた捜査を行うとしている。
(2010/09/07 ネットセキュリティニュース)
■平成22年上半期のサイバー犯罪の検挙状況等について[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h22/pdf01-1.pdf