アジア太平洋経済協力会議(APEC)の閣僚会議および首脳会議が横浜市で開催される直前に、相次いで2件の「流出」が明らかになった。10月28日には、警視庁公安部が作成したと思われるテロ捜査に関する資料114点が、ファイル共有ソフトWinny(ウィニー)で放流された。また、今月4日には尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突事件の映像がYouTube(ユーチューブ)に投稿され、海上保安官が自分がやったと名乗り出た。事態を受け、菅首相は10日、政府の情報保全対策について検討を行うよう官房長官に指示。また、官邸に各省庁の事務次官を招集して情報管理を徹底するよう指示した。
■国際テロ捜査関連資料114点が流出、個人情報も多数
警視庁公安部外事3課が作成したと思われる国際テロ関連の資料114点が10月28日、Winnyのネットワークに放流された。資料には、捜査協力者、捜査対象者を含め一般人のべ千人以上の個人情報も含まれている。また、警察関係者のべ百数十名の個人情報も含まれており、中には顔写真、住所や家族構成まで含まれた「秘」扱いの情報もある。
流出は、民間会社の通報により翌29日に発覚。資料は、ZIP形式で圧縮された状態で、ルクセンブルクのサーバーを経由してWinnyネットワークに放流されていた。産業技術総合研究所研究員の高木浩光氏がTwitterに投稿したツイートによると、放流されたのは10月28日午後5時45分。また、情報セキュリティー会社「ネットエージェント」社長の杉浦隆幸氏のツイートによると、中身が同じ5つのファイルがそれぞれ別の名前で放流されていた。
流出した資料は、2004年以降に作成されたものとみられる。文書に記載されている作成日を見ると、最も新しい日付は2009年1月21日となっている。ファイル114点のうち108点がPDF化されており、残り6点はHTMLファイル。PDFファイルの作成日時は、108点のうち96点がUTC-12時間、残り12点がUTC+8時間のタイムゾーンで記録されており、日本時間(UTC+9時間)では、前者の大半が今年5月3日に、前者の残り5点と後者全てが翌4日に作成されたことになる。
Winnyへの資料放流の翌日にあたる10月29日には、資料114点のうち5点を掲載したブログが公開され、このブログを見るよう誘うツイートをYAMADAと名乗る人物がTwitterに投稿している。また同日、文書をWeb上で作成、保存できるサービス上に、Winnyで放流されたものと同じZIPファイルが投稿されていた。これら一連の行動が、同一人物またはグループによって行われた可能性もある。
報道によると、警視庁では文書を専用のサーバーで管理しており、私物の記憶媒体では情報を持ち出せないようになっている。しかし外事3課にはネットワークに接続されていないパソコンが複数台あり、ここから資料を持ち出すことは可能だという。
(2010/11/11 ネットセキュリティニュース)
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