政府が一部国会議員にしか公開していなかった、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事故のビデオが動画投稿サイト YouTube に投稿された。関与を認めた神戸海上保安部の男性海上保安官は、国家公務員法(守秘義務)違反の容疑で警視庁の事情聴取を受けている。
■中国漁船衝突事件のビデオがYouTubeに、海上保安官が関与を認める
9月8日に尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突事件を海上保安庁が撮影したビデオが4日、動画投稿サイトYouTubeに投稿され、神戸海上保安部所属の海上保安官(43歳)が10日、自らがやったと名乗り出た。
ビデオは、巡視船が撮影した映像を石垣海上保安部が編集し、那覇地検に提出した十数本のうちの1本と同一。4日午後9時から同10時台に、sengoku38と名乗る投稿者が44分間のビデオを6本に分けて投稿。同人が5日午前8時前後にアカウントごとすべて削除した。当該保安官は事情聴取に対し、映像を入手、投稿したことを認めているが、入手から投稿までの経緯や動機についてはあいまいな供述をしているという。
衝突映像は、公式には石垣海保、海上保安庁本部、那覇地検、福岡高検、最高検にしか保管されていないはずで、神戸海保の職員がなぜ持ち出せたのかは現段階では分かっていない。この保安官は読売テレビの取材に対し、「映像は海上保安官であれば誰でも見られる状況だった。さして国家機密的な扱いはされていなかった」と答えている。
警視庁では、容疑が固まればこの保安官を国家公務員法(守秘義務)違反で逮捕する方針。しかし、映像が法律上の「秘密」にあたるかどうかは疑問視する声も多い。
この件については海上保安庁が8日、被疑者不詳のまま、国家公務員法(守秘義務)違反と不正アクセス禁止法違反などの容疑で警視庁と東京地検に刑事告発。9日、東京地検がYouTubeを運営するGoogleから投稿記録のデータを押収して分析を行ったところ、同日、IPアドレスから神戸市内のインターネットカフェが浮上した。保安官は、このネットカフェに行ったことを認めている。このネットカフェは、身分証の提示を求めない店だった。
ビデオがYouTubeに投稿されたことについては、4日午後11時頃からTwitterでつぶやかれはじめ、5日午前0時頃からはネット掲示板でも話題に。編集部では、5日午前7時20分頃に、ビデオ6本の合計再生回数が約17万8000回だったことを確認している。
当該保安官は、読売テレビの取材に対し「国民には映像を見る権利がある」「私がこういう行為に及ばなければ闇から闇に葬られて跡形もなくなってしまう」などと語っていた。
(2010/11/11 ネットセキュリティニュース)