国民生活センターは9日、「消費者問題に関する2010年の10大項目」を公表した。今年1年間で、社会的注目を集めた問題、相談が多く寄せられた問題がリストアップされている。その10項目のうち2件がインターネットを舞台にしたものであり、さらにもう1件にもネットが深く関与している。以下、同センターの報告書から紹介する。
■ネット取引で「カード決済代行」にかかわるトラブルが深刻化
インターネット取引の中で、「決済代行業者」を経由したクレジットカード決済にかかわるトラブルが増加している。決済代行業者とは、クレジットカード会社と販売者やモール業者との間に立ち、クレジットカード決済の手続き等を行う会社のこと。悪質なネット事業者は、国内のカード会社や決済代行業者の審査では排除される。排除された悪質業者は、海外のカード会社と加盟店契約を結んだ決済代行業者を利用する。この悪質業者による決済代行業者を使った不当請求のトラブルが多発しているのだ。
たとえば、国民生活センターでは、3月に情報商材に関するトラブルを、9月に有料メール交換サイトに関するトラブルを公表しているが、これらのトラブルを起こした悪質業者は、カード決済には決済代行業者を利用していた。消費者は「カードの請求明細を確認したところ、全く知らない会社からの請求になっていた」と述べるなど、決済代行業者の関与を認識していないケースが少なくない。騙されたことに気づいて返金を求めても、関係事業者が海外に存在する場合、対応は困難だ。内閣府の消費者委員会は、10月に関係省庁に対して被害の防止・救済のための対策をとるよう提言している。
■「アフィリエイト」「ドロップシッピング」などネット副業のトラブル増加
インターネットを利用した”手軽な副業”に関する相談が増加している。なかでも自分のサイトに商品広告を出して、商品が購入された場合などに収入を得る「アフィリエイト」や、自分のサイト上で商品を販売して収入を得る「ドロップシッピング」に関する相談の増加が目立つ。
「月収×万円は確実」などと業者に言われ、高額なサイト作成費用を支払ったが、収入にならないといった相談が多い。国民生活センターでは、昨年11月、これらに関する情報を公表。また今年3月には、東京都がドロップシッピング業者に対して全国で初めて行政処分を行った。しかしその後も多くの相談が寄せられており、相談件数は前年同期比で倍増。さらにトラブルはモバイルサイトへも広がりをみせている。
■「改正貸金業法」完全施行の一方、「クレジットカード現金化」等の問題も
今年6月、多重債務問題の解決を目的とした改正貸金業法が完全施行された。借り過ぎや貸し過ぎを防ぐための措置がなされたわけだが、借入に関する新たな問題が現れた。クレジットカードのショッピング枠の現金化や、金貨の即現金化といった手口だ。これらの手口においては、業者がWebサイトやメールマガジンを使って勧誘を行うこともある。
消費者庁は12月から、クレジットカードの現金化を行わないよう呼びかけるキャンペーンを実施している。また国民生活センターでは、4月に「クレジットカード現金化をめぐるトラブルに注意!」を、9月に「金貨の“即”現金化に注意!」を公表し注意喚起を行っている。
(2010/12/17 ネットセキュリティニュース)
【関連URL:国民生活センター】
・消費者問題に関する2010年の10大項目
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20101209_2.html
・報告書[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20101209_2.pdf
【関連記事:ネットセキュリティニュース】
・国民生活センター、「モバイルサイト内職」に注意呼びかけ(2010/12/14)
・クレジットカードのショッピング枠現金化はダメ、消費者庁がキャンペーン(2010/12/03)
・悪質「有料メール交換サイト」に注意~悩みを相談し親切心に付け入る手口も(2010/09/16)
・経済産業省関東経産局、ドロップシッピング業者「IB」に業務停止命令(2010/07/16)
・ネット商法「必ずもうかる」にご用心:悪質なドロップシッピング業者摘発へ(2010/06/11)
・「クレジットカード現金化」トラブル増加~国民生活センターが注意喚起(2010/04/23)
・苦情急増の「情報商材」に注意~クロネコやmixiかたり誘導するスパム出回る(2010/04/02)