警察庁は17日、出会い系サイト等を通じて発生した犯罪動向などをまとめた報告書「平成22年中の出会い系サイト等に起因する事犯の検挙状況について」を公開した。
報告によると、2010年1年間に出会い系サイトで犯罪被害にあった18歳未満の児童は、前年比43.9%減の254人だが、SNSやプロフィールサイト、ゲームサイトなどのいわゆる「非出会い系」のコミュニティサイトを利用して被害にあった児童数はその5倍相当の1239人だった。非出会い系での犯罪被害が出会い系を上回る事態はここ数年にわたって続いており、今回の報告でもそれが改めて確認された。
●出会い系サイト~減少とはいえ買春被害は151人
出会い系サイトを通じた犯罪の検挙数は2006年から減少を続け、2010年も前年比14.8%減の1025件だった。このうち児童が被害を受ける主な性犯罪は、淫行のなどの青少年保護育成条例違反や児童買春、児童ポルノなど。検挙数の内訳を見ると、青少年保護育成条例違反は前年比64.4%減の53件、児童買春は前年比29.1%減の254件、児童ポルノは前年比30%減の28件だった。
検挙数の減少に連動して犯罪被害にあった児童も前年比43.9%減の254人となった。被害者数の内訳は、児童買春151人、児童ポルノ19人、青少年保護育成条例違反42人。14歳以下の被害児童は50人、最少年齢は12歳。被害児童のサイトへのアクセス手段は携帯電話が98.8%、パソコンは1.2%という数字である。
●非出会い系サイト~危惧される「低年齢化」
一方、出会い系以外のコミュニティサイトを利用して犯罪被害にあった事件の検挙数は統計をとり始めた2008年から上昇の一途で、2010年は前年比9.1%増の1541件。これらの事件で被害にあった児童数も増加を続けており、2008年の792人、2009年の1203人に続き、2010は1239人だった。
被害内訳を見ると、最も多いのが青少年保護育成条例違反の772人で、児童買春214人、児童ポルノ180人と続く。また、出会い系サイトの被害者は女子が圧倒的多数で男子は1人だが、非出会い系では男子が49人いるのが目を引く。また、出会い系の被害児童と比べて14歳以下の被害児童が多く、11歳以下の男女被害児童がいるなど、低年齢化が顕著なのも危惧されるところだ。
●狙われる「児童が多数登録している」サイト
性犯罪の温床として社会問題視された出会い系サイトに対しては、18歳未満の利用禁止やサイト運営者に対する年齢確認義務など法の規制が強化され、この規制強化が事件や被害児童の減少につながった。しかし、その減少分が非出会い系サイトに移行していることは今回の報告でも明らかで、犯罪の芽が摘み取られたわけではない。
昨年10月に警察庁が発表した「非出会い系サイトに起因する児童被害の事犯に係る調査分析について」では、被疑者の約70%が「児童との性交目的」を犯行動機としていることが示された。彼らは、「多数の児童が登録している」「児童とメールアドレスが交換できる」という理由でサイトを選び、サイト運営者の管理下にあるミニメールから直接メールに移行した上で児童を誘い出し、犯行に及んでいる。今回の報告でも、被害事例の一つに、34歳の男が中学3年の女子になりすまして犯行に及んだケースがあった。
児童を狙う大人が出会い系から非出会い系へと犯罪の場を移していることから、子どもの利用が多いサイトは犯罪被害から子どもを守る対策が必須であり急務といえる。
●非出会い系対策~フィルタリング、ゾーニング、ミニメール監視、EMAの役割
警察庁は出会い系サイトについては、悪質な事業者への行政処分や取締りを継続するとしている。また、急増する非出会い系での被害対策として、携帯電話の「フィルタリングの100%普及」、サイト内の機能を年齢別に制限し、悪意ある大人が子どもと交流できないようにするなどの「実効性のあるゾーニング」や、「ミニメール内容確認等サイト内監視体制の強化促進」を推進するという。また、17日から、EMA(モバイルコンテンツ審査・運用監視機構)に対し、「児童の犯罪被害情報」提供を開始した。
EMAは、コミュニティサイトの健全な利用環境が整備・維持されることを目的として、モバイルサイトの審査・認定、および運用監視を行っている機関だ。しかしながら、児童が犯罪被害にあった非出会い系サイトの50.3%がEMA認定のサイトだったことが警察庁の調査で明らかになり、その審査・認定のあり方に疑問の声も上がっている。EMAは、警察庁から提供された情報を、「審査・運用監視委員会」の参考情報とし、審査・運用監視の実効性を高めるために活用していくとしている。
(2011/02/24 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・平成22年中の出会い系サイト等に起因する事犯の検挙状況について(警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h22/pdf02.pdf
・非出会い系サイトに起因する児童被害の事犯に係る調査分析について(警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h22/H22deai-bunseki.pdf
・警察庁からEMAへの情報提供について(EMA)
http://www.ema.or.jp/press/2010/0207_02.pdf