「Winny」や「Share」などのファイル共有ソフトは、特定のサーバーにファイルをアップロードしなくても、パソコン間でファイルをやりとりできる機能を提供する。それ自体は、ファイルをやり取りする手段のひとつに過ぎないが、もっぱら違法なファイルのやりとりに使われているのが現状だ。
そんなアンダーグラウンドの世界では、興味をひきそうな名前を付けてウイルスに放流する行為も横行しており、ファイル名をたよりにダウンロードし、無造作に開いてしまうユーザーたちを狙っている。
ウイルス作者の摘発例は少ないが、ファイル共有ソフトがらみでは、2008年1月にWinny(ウィニー)のネットワークにウイルスを流していた男が逮捕されている。ウイルスに人気アニメの画像を無断使用した著作権法違反と、同級生の顔写真や住所、電話番号を記載した名誉毀損で、懲役2年・執行猶予3年が確定した。執行猶予中にも関わらず、男はウイルスの放流を再開し、昨年8月に器物損壊容疑で逮捕。今月20日に、懲役2年6か月の実刑判決が言い渡された。
今月17日には、Share(シェア)にウイルスを放流していた容疑者が、不正指令電磁的記録保管罪容疑で逮捕された。不正指令電磁的記録保管罪は、14日に施行された改正刑法、いわゆる「ウイルス作成罪」の一部だ。
このほかには、ID・パスワードを盗み取るウイルスを流していた高校生が2008年10月に不正アクセス容疑で摘発。デスクトップのスクリーンショットや個人情報を流出させる「Kenzero」ウイルスを流し、著作権侵害の和解金名目で現金を詐取した男2人が、昨年5月に詐欺容疑で摘発されている。
■Winnyにウイルス放流、「イカタコウイルス」の作成者に実刑
通称「イカタコウイルス」と呼ばれるウイルスを作成し、他人のパソコン内のデータを使用できなくしたとして、器物損壊罪に問われた元会社員の被告(28歳)の判決公判が20日、東京地裁で開かれ、岡部豪裁判長は被告に懲役2年6か月(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。
判決によると、被告は昨年5月から7月にかけてウイルスを放流し、感染した北海道、神奈川、群馬の男性3人のパソコン内に保存されたデータを破壊し使用不能にした。
このウイルスは、違法配信された動画や音楽ファイルなどに見せかけ、ファイル共有ソフト Winnyのネットワーク上に放流されたもの。ダウンロードして視聴しようとすると感染し、パソコン内のデータファイルをイカやタコなどの魚介類の画像に書き換えてしまう。
弁護側は、パソコンやハードディスクなどの有体物とデータなどの電磁的記録は、刑法上区別されており、データの損壊は有体物を対象とした器物損壊に当たらないとして無罪を主張。これに対し岡部判長は、ハードディスクの機能として「保存データの随時読み出し」と「新たなデータの書き込み」の2点をあげ、ウイルス感染によって、いずれの機能も害され、復元も容易ではないと指摘し弁護側の主張を退けた。
■Shareにウイルス放流、岐阜県大垣市の男を逮捕
警視庁サイバー犯罪対策課は17日、他人のパソコンに感染させる目的でウイルスを保管していたとして、岐阜県大垣市の無職の男(38歳)を不正指令電磁的記録保管の現行犯で逮捕した。
各社の報道によると、Shareによる著作権法違反容疑で自宅を家宅捜索した際に、児童ポルノのファイルに見せかけたウイルスが見つかったという。このウイルスに感染すると、パソコンがフリーズするまで次々にウインドウを開き続けるらしく、「イカタコウイルス」のような破壊活動や情報漏えいなどは行わないようだ。これまでに約2000人が感染したと見られている。
(2011/07/25 ネットセキュリティニュース)