東京都は7日、携帯サイトを利用して海外から購入した「MDクリニックダイエット」を服用したことが原因と思われる死亡事例が発生したことを明らかにした。このような製品を服用すると重大な健康被害が起こるおそれがあるとして、服用している場合は直ちに中止するよう、また健康被害の疑いがある場合には速やかに医療機関を受診するように呼びかけている。都の報告を受けた厚生労働省は同日、都道府県に対し消費者へ注意を促すよう通知した。
MDクリニックダイエットは「ホスピタルダイエット」とも呼ばれ、海外(タイ)の病院が処方する複数の医薬品から構成される、いわゆる「やせ薬」だ。日本では個人輸入代行サイトを経由し、おもに個人輸入により入手されている。
購入者の身長や体重などに応じて構成内容が変わり、薬剤の大きさや色、カプセル、錠剤などと形態もさまざまだ。都は今回、6種の製品の検査結果を公開しているが、国内では未承認の医薬品であるシブトラミン(食欲抑制作用)、フルオキセチン(抗うつ作用)が含まれていた。
●東京の死亡事例~経緯
都の発表によると、死亡したのは都内大田区在住の20代の女性で、今年4月に薬物中毒によって溺死したという。女性には精神科と産婦人科への通院歴があり、死亡の約6か月前から国内の医療機関で処方された精神神経作用剤、睡眠導入剤、排卵誘発剤、制酸・緩下剤を服用していたが、死の2週間前からはMDクリニックダイエットも併用して服用していたとみられる。
女性の家族から相談を受けた都が、任意提出されたMDクリニックダイエットを検査したところ、食欲抑制剤等の医薬品成分が検出された。女性から検出された薬物は国内の医療機関で処方された精神神経作用剤の成分とされているが、都は死の2週間前から服用していたとみられるMDクリニックダイエットと死亡との因果関係を完全には否定できないとして、被害事例として発表。報告を受けた厚労省も連動して、全国的に注意を促すことになった。
●多発している健康被害
都や国が疑わしい事例にもかかわらず健康被害事例として広く公表したのは、同様のケースがこれまでにも発生しているからだ。2002年以降、本件を含む死亡事例(疑い)4例を含めて15件の健康被害(疑い)事例が、複数の自治体で公表されている。今年5月には、ホームページを介して個人輸入したMDクリニックダイエットを服用した埼玉県在住の30代の女性が、ふらつき感などの症状を訴えている。昨年12月には、神奈川県在住の10代の少女が、やはりホームページを介して個人輸入した同製品を服用して健康被害の疑いが発生した。どちらの場合も成分検査で、国内では医薬品として承認されていない成分が検出されている。
●海外からの医薬品購入は、大きなリスクが伴う
国内で正規に流通している医薬品は、薬事法に基づいて品質や有効性、安全性の確認がなされているが、個人輸入や海外旅行時に購入して持ち帰った外国製品の場合は、このような保証がない。MDクリニックダイエットも海外のクリニックで処方するとされているが、薬の処方には健康状態など個人の詳細な身体データが不可欠だ。個人輸入の場合、実際に医師と対面して受診するわけではないから、身長や体重などの大まかな目安で購入しなければならない。そのため、処方された量や薬の組み合わせが適切でないおそれがある。海外では認可されていても、日本では服用が認められていないケースも少なくない。
健康に大きな影響を与えるおそれがある医薬品の海外からの購入には、慎重さが必要だ。
(2011/07/19 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・「MDクリニックダイエット」と称される製品による死亡事例(疑い)の発生
につい個人輸入した製品に注意(東京都)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/07/20l77200.htm
・タイ製やせ薬の個人輸入への注意を呼び掛け~都道府県等に注意喚起の徹底及び取締りの強化を依頼~(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001hzxy.html
・注意!タイから個人輸入した無承認無許可医薬品「MDクリニックダイエット」で健康被害が発生!(埼玉県)
http://www.pref.saitama.lg.jp/page/higaih23-06.html
・「MDクリニックダイエット」等と称される製品による健康被害(疑い)の発生について[PDF](藤沢市)
http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/content/000345839.pdf