警察庁は15日、2011年のサイバー犯罪(情報技術を利用する犯罪)の検挙状況および相談状況を発表した。サイバー犯罪の検挙件数は5741件で、前年の6933件より大幅に減少した。しかし、ネットワーク利用犯罪の検挙件数は減少しておらず、5388件(2010年5199件)と、前年比3.6%の増加となった。
■不正アクセス禁止法違反は減少へ
不正アクセス禁止法に違反した検挙件数は248件(2010年1601件、2009年2534件)で、前年比84.5%マイナスの大幅減少となった。だが、検挙「事件」数は103件(前年104件)、検挙「人員」は114人(前年125人)と横ばい状態で、大きな変化はみられない。
■防止対策が奏功し「詐欺」減少、「児童ポルノ」は増加止まらず
ネットワーク利用犯罪のうち最多を占めてきた「ネットワーク利用詐欺」は、前年の1566件から899件へ大幅に減少した(前年比-42.6%)。詐欺防止対策の推進により、ネットオークション利用詐欺が前年677件から389件へ減少したことが貢献した。
詐欺に変わって最多となったのは「児童買春・児童ポルノ法違反」で、前年1193件だったものがは1327件に上昇した。うち児童買春は444件(前年410件)、児童ポルノは883件(783件)。児童ポルノは2007年から2011年までの5年間、192件→254件→507件→783件→883件と、増加が止まらない状態が続いている。
「わいせつ物頒布等」は218件から699件へ大幅増加したが、これは警察庁の全国協働捜査方式が本運用されたことによるものだという。増加傾向が続いているのは、「出会い系サイト規制法違反」464件(前年412件)、「著作権法違反」409件(前年368件)。「青少年保護育成条例違反」は434件(前年481件)とやや減少した。
■「相談」全体5.9%増加、最多は「詐欺・悪質商法」3万2892件
都道府県警察の相談窓口で受理したサイバー犯罪等に関する相談の件数は、2010年は7万5810件で前年比9.5%の減少だったが、2011年は8万273件で、前年比5.9%の増加となった。
最も多い相談は「詐欺・悪質商法」で、3万2892件(前年3万1333件)に及ぶ。内訳は、「架空請求メール」8249件(前年1万1046件)、「不当請求メール」7621件(前年6112件)で、架空請求メールの相談は25%減少している。次いで「迷惑メール」1万1667件(前年9836件)、「名誉棄損・誹謗中傷」1万549件(前年1万212件)と続く。「ネットオークション」は5905件(前年6905件)で、2007年の1万2707件から半減している。
「不正アクセス、ウイルス」は4619件(前年3668件)で、内訳は「不正アクセス」が4191件(前年3341件)、「ウイルス」は428件(前年327件)。ウイルスによる被害の相談は、昨年7月に刑法の一部改正で「不正指令電磁的記録に関する罪(ウイルス罪)」が新設・施行されて以降、増加傾向にあるという。
■「自殺予告」への対応
インターネット上での自殺予告に対し、警察はプロバイダ等から情報開示を受け、防止や救護措置を行っている。2011年中に都道府県警察が対応した件数および人数は、329件・333人で、前年に比べ49件・45人増えている。
通報は一般からが193件、サイト管理者からが100件。実際に自殺を図った人は20人で、うち5人が死亡したが、救護等により命を取りとめた人が15人いる。存命者のうち8人が警察官による発見・救護だった。自殺のおそれのある81人に対しては、本人への説諭、家族への監護依頼などの自殺防止措置を実施している。
■「ウイルス罪」事件化に向け、取締体制を整備
警察は、昨年施行された「ウイルス罪」の積極的な事件化に向け、情報集約や分析、取締体制の整備を推進する。また、昨年7月から本運用された全国協働捜査方式で、サイバー犯罪の取締りを強化し、定着をはかる。不正アクセスなど潜在化しやすい犯罪に対処するため相談窓口の体制整備に努め、ネットの自殺予告にもプロバイダ等の協力を得て、引き続き迅速な対応に努めていく。
(2012/03/19 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・平成23年中のサイバー犯罪の検挙状況等について[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h23/pdf01.pdf