4月に観測された韓国の金融機関を装うフィッシングサイトが、5月にも大量に観測された。長期にわたって続いてきたYahoo! JAPANをかたるフィッシングが摘発により終息した。モバイル向けのフィッシングサイトに注意が必要になっている。
編集部が5月に観測した、日本国内に関係するフィッシングサイト(国内IP、JPドメイン、国内ブランド、日本語サイト)は、4月から9件増えて84件だった。前月に引き続き、国内ISPのアクセス回線を使った韓国の金融機関を装うフィッシングサイトが大量に発生したため、件数が高水準のまま推移している。
国内関連のフィッシングサイト84件のうち、偽サイト本体が設置されていたものは75件、他所に設置した偽サイトにリダイレクトする中継サイトとして使われたものは9件だった。
悪用されたサーバーは、ウイルスに感染したユーザーのパソコンや自宅のサーバーとみられるものが42件(全て国内)と半数を占めている。次いで、不正アクセスを受けた一般のWebサイトとみられるもの26件(国内サイト23件)、ホスティングサービスの悪用11件(国内サイト2件)、短縮URLサービスなどの悪用5件(全て国内)だった。
悪用されたブランドは、韓国農協銀行(22件)、韓国国民銀行(17件)、PayPal(6件)、Twitter(6件)、ほか計28ブランド。国内のブランド(日本語サイトを含む)は、Twitter(6件)、住信SBIネット銀行(3件)、MasterCard(1件)、PayPal(1件)、新生銀行(1件)だった。このほかに、楽天銀行を装うフィッシングが見つかったとの注意喚起が、同行とフィッシング対策協議会から出されている。
・フィッシング詐欺に関するご注意(楽天銀行)
http://www.rakuten-bank.co.jp/info/2012/120510.html
・楽天銀行をかたるフィッシング(2012/05/10)(フィッシング対策協議会)
http://www.antiphishing.jp/news/alert/rakutenbank20120510.html
・住信SBIネット銀行を装い、ユーザーネームやパスワードを盗み取るメールにご注意ください(住信SBIネット銀行)
https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i900500CT/PD/mg_notice_120507_info
・住信SBIネット銀行をかたるフィッシング(2012/05/07)(フィッシング対策協議会)
https://www.antiphishing.jp/news/alert/sbi20120507.html
■Yahoo! JAPANをかたるフィッシング詐欺グループ摘発~大規模攻撃が終息へ
アカウント継続手続きページと称してYahoo!の偽サイトに誘導し、クレジットカード情報などをだまし取っていたフィッシング詐欺集団の男3人が、割賦販売法違反容疑で埼玉県警に逮捕された。県警の発表は5月10日だが、これまで毎週末に仕掛けられていたYahoo! JAPANをかたるフィッシングが、3月末頃から完全に停止しており、この時期にこのグループが摘発されたと見て間違いないだろう。
国内のユーザーを狙ったYahoo! JAPANをかたるフィッシングは、2004年頃にアカウント情報の詐取で始まり、やがて主体はクレジットカード情報の詐取へと変わる。2009年には、この手のフィッシングを頻繁に仕掛けるグループが次々に出現し、最盛期には月に50件を超える偽サイトが確認されたこともある。
今回摘発されたのは、当時から暗躍していたグループのひとつで、当初は、ホスティングサービスを使って偽サイトを開設していたが、昨年からは、モバイル回線とダイナミックDNSサービスを使う手法に切り替え、自身のパソコンでの運用に切り替えていた。昨年6月末に別のグループが摘発された直後、一時鳴りを潜めていたが、9月頃から活動を再開し、週末を狙って毎週のようにフィッシングを仕掛けていた。Yahoo! JAPANをかたるフィッシングには、このほかにも攻撃頻度の少ないものもあるが、編集部が観測してきた高頻度でフィッシングを仕掛けていたグループは、これで一掃されたようだ。
■韓国の金融機関をかたるフィッシング、5月も大量発生
4月に始まった韓国の金融機関をかたるフィッシングの大量発生が、5月に入ってからも続いている。シマンテックも5月18日付の公式ブログで、この問題を報じている。
編集部が5月中に観測した、日本国内に開設された韓国金融機関の偽サイトは、3行・計40件にのぼるが、同時に稼働していたサーバーは、1ないし2基に過ぎない。国内の偽サイトは、複数のドメインを同じサーバーに割り当てたり、ドメインやISPを頻繁に変更したりしているため、ユニークなホストとブランドをベースにカウントする編集部の集計では、この種のフィッシングが行われると、件数が増大してしまう。
韓国の報道などによると、一連のフィッシングでは、「ポータルサイトでの情報流出に伴うセキュリティ強化のため」などするSMSを送り、偽サイトへと誘導しているらしい。偽サイトでは、ユーザー名や口座番号、パスワードなどにに加え、国内のオンラインバンキングフィッシングと同様、乱数表を全て入力させようとしており、実際に数100万~数千万ウォン(1万ウォンは約660円)の被害が発生しているそうだ。
ちなみに、SMSを使用したフィッシングは、スミッシング(SMiShing)と呼ぶこともある。また、韓国では、日本の振り込め詐欺のような通話を用いるフィッシングがこれまでの主流で、こちらはボイスフィッシングと呼ばれている。
・韓国のユーザーを狙うフィッシング攻撃(シマンテック)
http://www.symantec.com/connect/blogs-264
■モバイル向けのフィッシングサイト
スマートフォンなどのモバイル端末の普及に伴い、モバイル向けにカスタマイズしたフィッシングサイトが登場している。大半は、モバイル向けのコンパクトな画面のフィッシングサイトだが、中にはPCとモバイル端末を識別して画面を変えるものもある。モバイル端末を狙うウイルスと同様、全体に占める割合は極めて少なく、今のところは海外のユーザーを狙ったものばかりだ。
国内では、数年前からSNSやゲームサイトのフィッシングとして、モバイル向けのサイトが報告されていたが、これまで編集部で確認したものは、いずれも出会い系サイトのプロモーションだった。しかし、スマートフォンの急速な普及とこれを狙った出会い系サイトやクリック詐欺の台頭を鑑みると、国内のモバイル環境もそろそろ、フィッシングに注意を払わなければいけないかも知れない。
・モバイルでフィッシング詐欺を防ぐには(マカフィー)
http://www.mcafee.com/japan/security/mcafee_labs/blog/content.asp?id=1314
(2012/06/04 ネットセキュリティニュース)