スマートフォンの急速な普及と、それらに対応するセキュリティソフトの相次ぐ参入に伴い、紛失・盗難時のセキュリティ対策が話題にのぼることが増えてきた。紛失時に慌てないようにするためには、事前に何を行っておかなければいけないのか、どう対処すればよいのかを把握しておくことが大切だ。
■米企業のスマートフォン紛失率は年間約4%
マカフィーが米企業439社を対象に実施した昨年の調査では、過去1年間に従業員が所有するスマートフォンの4%が紛失や盗難にあい、戻ってきたのはわずか7%だったという。紛失したスマートフォンのうち、紛失・盗難対策は31%が、パスワード保護は17%が、暗号化は19%が実施していたが、57%は何の対策も行っていなかったそうだ。
■置き忘れスマートフォンの半数は戻るも96%が盗み見
シマンテックが米5都市で昨年行った、スマートフォン50台を人通りの場所に置き忘れたふりをする実験では、発見者の50%は持ち主に返そうとしたものの、96%はアプリやファイルに何らかのアクセスを行ったという。持ち主を割り出そうとしていた可能性もあるが、持ち主の情報に興味を持った人も多かったようで、プライベートの写真にアクセスしようとした人が72%、ソーシャルメディアのアカウントや電子メールにアクセスしようとした人がそれぞれ60%いたほか、銀行口座にアクセスしようとした人も43%いたそうだ。
■携帯電話のパスワード保護率は約半分
シマンテックが国内の18歳から64歳までの500人を対象に今年2月に行った調査では、携帯電話の利用者の10%が紛失や盗難にあい、手元に戻って来たのは半数だったという。パスワードを設定しているユーザーは、全体の約半分、セキュリティソフトの導入率は13%だった。
■12%が紛失を経験、戻って来たのは65%
MMD研究所が国内の20歳から59歳のスマートフォン所有者857人を対象に行った調査では、12%が過去に携帯電話やスマートフォンの紛失経験があり、65%が戻ってきたという。現在所有しているスマートフォンのパスワードは、設定している人が54%、設定していない人が41%だった。興味深いのは、わからないと答えた人が5%いる点だ。同調査では、キャリアやメーカーが提供している紛失・故障時の保証サービスの登録状況についても調べているが、ここでも13%がわからないと答えている。紛失・盗難対策以前に、使用している端末やサービスを把握していない方も多いようだ。
■ケータイ/スマホの紛失・盗難対策
紛失・盗難時に備えた機能やサービスは、使用しているキャリアや機種によって異なり、特に準備しておかなくても標準で利用できるもの、事前に登録や設定が必要なもの、アプリのインストールが必要なものがある。自分の端末で何が利用でき、利用するためには事前に何を行っておかなければいけないのかを確認しておき、紛失時にあわてないように手順を把握しておきたい。
携帯電話やスマートpフォンを紛失した際に行いたいことには、次のようなものがある。
(1)ロックをかけたい
(2)データを消去したい
(3)端末を探したい
(4)補償を受けたい
(5)データを取り戻したい
これらには、キャリアが標準またはオプションで提供しているもののほかに、セキュリティソフトなどの汎用アプリで同等の機能を提供するものもある。必要なものが利用できない場合には、それらも合わせて検討してみるとよい。
(1)は、本体や電話回線、おサイフケータイが不正に使われないようにするためのもので、本体側で行うローカルロックと、紛失時に遠隔操作で行うリモートロックとがある。ローカルロックは、端末が備えている基本機能のひとつで、暗証番号やパスワード、画面をなぞるパターンなどを登録しておくと、これを解除しなければ端末が操作できなくなる。このほかに、回線の不正使用を防ぐためのSIMカード(呼称はキャリアによって異なる)に設定する暗証番号と、「おサイフケータイ」の暗証番号もるので、必要に応じて設定しておく。
リモートロックは、ローカルロックの一部または全てを遠隔操作で行えるもので、紛失時に窓口に電話する、Webで操作する、SMSでコマンドを送る、特定の電話番号からコールするなど、サービスによって色々な手段が用意されている。回線の一時停止に関しては、どのキャリアも窓口に電話すれば即座に対応してもらえるが、その他は、事前に登録や設定、アプリのインストールが必要な場合も多い。従来型の携帯電話と違い、スマートフォンへの対応がすすんでいないところもあるので注意したい。
(2)は、電話帳やメールなどの端末内のデータを遠隔操作で消去するもので、「リモートワイプ」などと呼ばれている。リモートロックと同様、サービスによって色々な手段が用意されており、端末内のデータ消去のみに対応したものと、端末に装着しているSDカードの初期化にも対応したものがある。(3)は、内蔵GPSや基地局から割り出した位置情報を使い、紛失した端末がどこにあるのかを探し出すサービス。(4)は、代品を提供してもらえるサービス。(5)は、オンラインでバックアップを保管するサービスだ。
(2012/7/24 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・スマートフォンの紛失率、年間で約5%(マカフィー)
http://www.mcafee.com/japan/security/mcafee_labs/blog/content.asp?id=1325
・シマンテックスマートフォンハニースティックプロジェクト(Symantec Smartphone Honey Stick Project)のご紹介(シマンテック)
http://www.symantec.com/connect/ja/blogs/symantec-smartphone-honey-stick-project
・ノートンによる調査:日本人の半分しかモバイル上のネット犯罪を意識していない(シマンテック)
http://www.symantec.com/ja/jp/about/news/release/article.jsp?prid=20120711_01
・スマートフォンのパスワードロック設定および、紛失・故障サービスの利用実態調査(MMD研究所)
http://mmd.up-date.ne.jp/news/detail.php?news_id=1074
・盗難・紛失したときは(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/support/trouble/lost/
・盗難・紛失にあったとき(au)
http://cs.kddi.com/support/tetsuzuki/au/tounan.html/
・紛失・盗難(ソフトバンクモバイル)
http://mb.softbank.jp/mb/support/3G/help/
・盗難・紛失の際は(ウィルコム)
http://www.willcom-inc.com/ja/support/steal/index.html