警察庁は20日、2012年上半期のサイバー犯罪の検挙状況等について公表した。検挙件数は3268件で、前年同期比で755件(30%)増加した。「不正アクセス禁止法違反」は99件から243件へ大幅増加、「ネットワーク利用犯罪」は2930件で、半期統計では過去最高となった。
「ネットワーク利用犯罪」とはネットワークを利用した犯罪で、「ネットワーク利用詐欺(オークション含む)」「児童買春・児童ポルノ法違反」「わいせつ物頒布等」「出会い系サイト規制法違反」「青少年保護育成条例違反」「著作権法違反」「商標法違反」などが含まれる。同庁の統計では、この「ネットワーク利用犯罪」に「不正アクセス禁止法違反」と「コンピュータ・電磁的記録対象犯罪、不正指令電磁的記録に関する犯罪」をくわえ、「サイバー犯罪」としている。
■検挙件数最多は「児童ポルノ」、「オークション詐欺」は大幅減
サイバー犯罪のなかで最も多いのは「児童ポルノ」で、前年同期の353件から530件へ50%増加している。2番目は「わいせつ物頒布等」の406件、次いで「ネットワーク利用詐欺」401件、「青少年保護育成条例違反」259件、「不正アクセス禁止法違反」243件、「著作権法違反」229件、「児童買春」222件と続く。
「ネットワーク利用詐欺」は前年同期比で4%の微増だが、このうち「インターネット・オークション利用詐欺」は、前年同期の205件から88件へ大幅に減少した。オークション詐欺は2007年には1512件検挙されており、この5年間で激減した。
「不正アクセス禁止法違反」の検挙件数は、2011年はその前年の1601件より1353件も減少した248件だったが(85%減)、2012年上半期は2011年同期の99件から144件増加し243件となった(146%増)。2012年中には昨年の件数を上回るとみられる。
不正指令電磁的記録に関する罪(ウイルス罪)の検挙は26件あった。これに「コンピュータ・電磁的記録対象犯罪」をくわえた検挙件数は計95件で、前年同期比約80%増となっている。
■相談の最多は「詐欺・悪質商法」、「迷惑メール」は年々増加
都道府県警察の相談窓口で受理したサイバー犯罪等に関する相談件数は、3万9150件。前年同期から4%(1493件)減少した。相談で最も多いのは「詐欺・悪質商法」の1万4660件で、前年同期より13%(2266件)減少している。2番目に多い「迷惑メール」は2002年から増加傾向が続いており、今期も前年同期比16%増の6569件だった。
以下、「名誉棄損・誹謗中傷」5585件(8%増)、「オークション」2489件(24%減)、「不正アクセス等・ウイルス」2402件(8%増)と続く。オークションに関する相談は2005年をピークに年々減少している。
■今後の対策:ウイルス罪等の的確な運用、全国協働捜査方式の継続など
昨年6月にウイルス罪が新設され、今年5月にはフィッシング行為の違法化等を盛り込んだ改正不正アクセス禁止法が施行された。同庁はこれらの法律を的確に運用し、先制的な検挙を行うための情報集約や分析、取締体制の整備を推進する。
また、インターネット・ホットラインセンターに寄せられるネットの違法・有害情報について、警察庁と警視庁、都道府県警察が連携して対処する「全国協働捜査方式」が大きな成果を挙げていることから、今後もこれを継続して取締りを強化する。潜在化、巧妙化するサイバー犯罪に的確に対処するため、警察と民間事業者が協力し合う共同対処、国民への注意喚起、相談窓口の充実強化も推進していくとしている。
(2012/09/21 ネットセキュリティニュース)
【関連URL:警察庁】
・平成24年上半期のサイバー犯罪の検挙状況等について[PDF]
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h24/pdf01-1.pdf
・インターネット上の違法情報対策強化のための「全国協働捜査方式」の本格実施について[PDF]
http://www.npa.go.jp/cyber/warning/h23/110526_1.pdf