警察庁は28日、2012年のサイバー犯罪の検挙状況と不正アクセス行為の発生状況をとりまとめ公表した。2012年中のサイバー犯罪の検挙件数は、前年の5741件から7334件(前年比+27.7%)に増加し、過去最高を記録した。前年に施行された「ウイルス罪」の検挙件数は3件から41件に急増している。
サイバー犯罪の検挙件数の内訳は、「ネットワーク利用犯罪」が前年の5388件から6613件(前年比+22.7%)、「不正アクセス禁止法違反」が248件から543件(前年比+119.0%)、「コンピュータ電磁的記録対象犯罪および不正指令電磁的記録に関する罪」が105件から178件(前年比+69.5%)と、いずれも増加しており、ネットワーク利用犯罪の検挙件数は過去最高となった。
■「オークション以外の詐欺」が過去最高を記録
ネットワーク利用犯罪でもっとも多いのは相変わらず「詐欺」で、全体の20.5%を占める。オークションがらみの詐欺は、2006年の1327件をピークに235件にまで減少したものの、2006年当時270件だったオークション以外の詐欺が増加を続け、過去最高の1122件を記録。総数では、大幅に減った前年の899件から1357件(前年比+50.9%)と、再び増加に転じたかたちだ。
以下多い順に、児童ポルノ1085件(16.4%)、わいせつ物配布等929件(14.0%)、青少年保護育成条例違反520件(7.9%)、著作権法違反472件(7.1%)など、軒並み過去最高の検挙件数が続く。
■「ウイルス罪」が急増、全体の23%に
コンピュータ電磁的記録対象犯罪および不正指令電磁的記録に関する罪では、偽の情報を処理させて金銭等をだまし取る「電子計算機使用詐欺」が95件(53.4%)と、例年通り最多を占めた。前年に施行された、いわゆるウイルス罪(不正指令電磁的記録に関する罪)での検挙は、前年の3件から41件に増加し、全体の23.0%を占めている。不正指令電磁的記録の「作成・提供」「供用」「取得・保管」の罪状別では、Webサイトにウイルスを仕掛けるなどして他人に実行させようとする「供用」罪での検挙が、前年1件から34件へと大幅に増えている。
■10代が最も多い「不正アクセス禁止法違反」
2年連続の大幅減から再び増加に転じた不正アクセス禁止法違反事件は、オンラインゲームやコミュニティサイトでの不正操作が219件(41.1%)と、犯行動機の最多を占める。
不正アクセスに用いたアカウントの入手の手口は、ユーザーなどから聞き出したり、のぞき見したりしたりしたものが、前年の29件から229件に増え最多(43.0%)となった。このほか、パスワードの設定・管理の甘さにつけ込んだもの(22.9%)、元従業員や知人などから入手したもの(18.9%)も多く、防止策として、個人情報の適正な取扱いやパスワードの適切な設定・管理をあげている。
検挙した容疑者の数は、同法施行以来最多となる154人(行為の区分間での重複6を含む)。年代別では、10代が64人(26.2%)と前年に続き最多を占めた。ブログやゲームなどを統合した子どもたちに人気のコミュニティサイトでの不正アクセス多発が、その背景にあることがうかがえる。
なお、パスワードなどの取得や保管、フィッシング行為を新たに処罰対象とした改正法の適用による検挙は、2件だった。
■警察へのサイバー犯罪相談は「詐欺・悪質商法」が最多
都道府県警察の相談窓口で受理したサイバー犯罪などに関する相談は、前年の8万273件から7万7815件(前年比-11.5%)へと減少。ここ数年間は、8万件前後での推移が続いている。
例年通り、詐欺・悪質商法に関する相談が最も多く、オークション関係を除いても2万9113件と、全体の34.7%を占める。以下、迷惑メールに関する相談1万2946件(16.6%)、名誉毀損・誹謗中傷などに関する相談1万807件(13.9%)、ネットオークションに関する相談4848件(6.2%)、不正アクセスやウイルスに関する相談4803件(6.2%)、違法・有害情報に関する相談3199件(4.1%)と続く。
(2013/04/01 ネットセキュリティニュース)
【関連URL:警察庁】
・平成24年中のサイバー犯罪の検挙状況等について[PDF]
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h24/pdf01-2.pdf
・平成24年中の不正アクセス行為の発生状況の公表について[PDF]
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h24/pdf040.pdf
・不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況[PDF]
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h24/pdf041.pdf