実在する企業等の名前をかたる架空請求メールが不特定多数に送られており、名前を悪用された企業が注意を呼びかけている。
架空請求は、有料サイトの利用料金などの名目で架空の料金を請求し、現金を振り込ませるなどの方法でだまし取る振り込め詐欺の一種だ。多くは、サイトの運営会社からの依頼などと称し、よく分からない曖昧な内容のメールが届く。利用料が未納だとか、無料期間が過ぎたのに退会手続きがされていないとかの理由で支払いを求めるが、いつどのサイトを利用した時のことで、どこに支払うのかといった具体的なことは書かれていない。
メールには、会社名と担当者名、電話番号が明記されており、払わないと調査を開始する、法的手段をとるなどの文言で不安をあおり、電話をかけさせようとするのが特徴だ。各社が注意を呼びかけているのは、この会社名に自社の名前が使われていたためだ。今月に入ってからのものだけでも、別掲(記事末:名前を悪用された企業等からの注意喚起)のように多数の企業が社名を悪用されている。ただしこれら架空請求メールには、同じ文面を使いまわしたものが多く、一部の詐欺師によるなりすましと見られる。
■電話をかけさせるのが目的の架空請求メール
内容がはっきりしない請求は無視すればよいが、無視できない人や不安になってしまう人、ひょっとしたらあのことかと勝手に思い込んでしまう人たちがいる。詐欺師たちは、こうした引っかかりやすそうな被害者予備軍たちが、罠にかかるのを待っている。
電話がかかってくると、詐欺師たちは本領を発揮し、「訴訟の準備に入っている」「今日中なら間に合う」「送れると延滞金が加算される」など言葉巧みに相手をだまし、架空の料金を口座振り込みや郵送などの方法で支払わせようとする。一度支払ってしまうと、追加料金や他のサイトの分などと称して次々に請求がきたり、別の業者を名乗る詐欺師が請求してきたりする。この手の請求が来ても、記載された連絡先に問い合わせるのは禁物だ。
当事者以外で債権の回収を行えるのは、弁護士と法務大臣の許可を受けた債権回収会社だけである。弁護士は通常、メールやはがきではなく、内容証明郵便で依頼を受けたことを通知する。債権回収会社は、そもそもアダルトサイトや出会い系サイトなどの利用料を請求する業務は行っていない。コンテンツ運営会社などから依頼を受けた調査機関などと称するものは、全て架空請求なのだ。
架空請求の中には、実在する弁護士や債権回収会社をかたるものもある。弁護士は日本弁護士連合会のホームページで、債権回収会社は法務省の法務ページで、実在確認が行える。もしそれらしいものが届いた際には、記載された連絡先ではなく、正しい連絡先に問い合わせて確認するとよい。
■架空請求の被害額が過去最高を更新中
警察庁のまとめによると、一時は大幅に減少した架空請求被害は、2011年を境に増加に転じている。特に近年は、被害額が大きくなる傾向にあり、1件当たりの平均被害額は、かつての100万円台から昨年度は400万円台に、今年は500万円台へと跳ね上がっている。被害件数も増加の傾向にあり、今年は上半期だけで、過去最高だった昨年の被害総額63億3902万4000円を上回ってしまい、7月末時点で80億円を突破。嬉しくない記録を更新中だ。
身に覚えのない請求や、はっきりしない請求が来ても、慌てて記載された連絡先に問い合わせたりしないよう注意したい。心配な方は、最寄りの消費生活センターや警察署に相談しよう。
(2014/09/29 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・債権回収会社と類似の名前をかたった業者による架空の債権の請求に御注意ください(法務省)
http://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa19.html
・振り込め詐欺撲滅に向けて(警察庁)
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/1_hurikome.htm
・架空請求対策(STOP!架空請求!)(東京都)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/torihiki/taisaku/
<名前を悪用された企業等からの注意喚起>
[09/03] リクレス債権回収(リコーリース)
http://www.r-lease.co.jp/info/company/ricres.html
[09/05] 日本電子債権機構
http://www.jemc.jp/important/20140905_post-11.html
[09/08] ネットエージェント
http://www.netagent.co.jp/announcement/post_54.html
[09/10] 日本調査機構
http://www.tantei-110.org/
[09/12] IDCジャパン
http://www.idcjapan.co.jp/top.html
[09/16] ITホールディングス
https://www.itholdings.co.jp/notice_mail/
[09/16] SBIネットシステムズ
http://sbins.co.jp/pdf/notice/notice_20140916.pdf
[09/19] ネットマークス(ユニアデックス)
http://www.uniadex.co.jp/news/2014/news_20140919_566.html
[09/22] ソルクシーズ
http://www.solxyz.co.jp/news/index.html#20140922_1
[09/24] ネットワンシステムズ
http://www.netone.co.jp/news/info/20140924_01.html
[09/24] ミロク情報サービス
http://www.mjs.co.jp/news/tabid/555/index.php?Itemid=5003
[09/25] クレスコ
http://www.cresco.co.jp/news/2014_info1.html
[09/25] TIS
http://www.tis.co.jp/news/2014/20140925_1.html
[09/25] ラック
http://www.lac.co.jp/news/2014/09/25_news_01.html
[09/28] 日本リサーチ総合研究所
http://www.research-soken.or.jp/