今年上半期、インターネットバンキングを悪用した不正送金は754件発生し、犯人が不正に送金した金額(被害額)は約15億4400万円にのぼった。被害を受ける金融機関は都市銀行や地方銀行から信用金庫・信用組合、農業協同組合、労働金庫に拡大している。
今年上半期(以下、今期)の被害額約15億4400万円のうち約1億6900万円は金融機関が不正送金の阻止に成功し、実際の被害額(実被害額)は約13億7500万円だった。昨年下半期(619件、約10億5800万円)は、不正送金が頻発していた昨年上半期(1257件、約18億5100万円)からやや減少していたが、今期は再び増加に転じてしまった。
■114の金融機関で被害発生、信用金庫は前年比で4倍以上
被害を受けた金融機関数は2013年は32、2014年は102(いずれも1年間)あったが、今期は114に増加した。内訳は、都銀等(都市銀行、ネット専業銀行、信託銀行、その他の銀行)が11、地方銀行が34、信用金庫が77、信用組合が5、農業協同組合が14、労働金庫が3となっている。注目されるのは信用金庫での被害多発で、2013年はゼロ、2014年は18だったものが今期は77となり、前年比で4倍以上に急増している。
■被害金額は都市銀行が最多、法人被害は信金・信組が最多に
被害金額が最も多いのは都市銀行等の約7億4000万円(うち個人6億5200万円、法人8800万円)で、次に信用金庫・信用組合の5億3100万円(うち個人1億5000万円、法人3億8100万円)、地方銀行の約2億4300万円(うち個人2億2300万円、法人2000万円)、農協・労金の約3000万円(うち個人2100万円、法人900万円)と続く。個人の被害金額が最も多いのは都市銀行(6億5200万円)だが、法人では信用金庫・信用組合(3億8100万円)が最も多かった。
■一次送金先口座の名義、関連事件の検挙で目立つ中国籍
ネットバンキングを悪用して不正送金された「一次送金先口座」の名義人は中国籍が最も多い。同国籍名義人の口座は、2014年上半期の1951(69.5%)から同年下半期いは469(48.5%)に減少したが、今期は再び増加し、650(54.5%)と半数を超えた。また、警察庁は今期、口座売買等の関連事件58事件で88人を検挙しているが、うち34人(38.6%)は中国籍だった。今期の最多は日本国籍の51人(68.0%)だが、2014年は一貫して中国籍が最も多く、同年上期は83人(62.4%)、下期は51人(51.0%)だった。
■不正送金を防ぐ「ウイルス感染対策」
インターネットバンキングを悪用した不正送金は、ウイルスに感染させたパソコンを遠隔操作して行われることが多いため、警察庁は、外国捜査機関と連携したウイルス通信先サーバーの停止、ウイルス無害化措置による被害拡大防止対策等に取り組んでいる。また、信用金庫に対しては当日送金の停止等の被害防止対策を要請している。個人でできる対策としては、OSやソフトウェア、対策ソフトを常に最新状態に更新して利用すること、金融機関が提供するセキュリティ対策を利用することが挙げられる。
(2015/09/10 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・平成27年上半期のインターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生状況等について[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/pdf/H270903_banking.pdf
・ネットバンキングウイルス無力化作戦の実施について(警視庁)
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/haiteku/haiteku/haiteku504.htm