本年度版の「消費者白書」が24日に閣議決定、公表された。前年度版と同様、インターネットに関連するトラブルが相変わらず多く、スマートフォンや高齢者の被害についても深刻な状況が続いている。
「消費者白書」は、消費者基準法に基づき、政府が講じた消費者政策の実施状況などを取りまとめた報告書で、今回で4回目の白書となる。それによると、昨年4月から今年3月までの1年間に全国の消費生活センターなどに寄せられた相談は約92万7千件だった。2014年度の94万6千件を若干下回ったものの、依然として高水準が続いている。インターネットに関連した相談は相変わらず非常に多く、相談件数全体の3割以上を占める。
■相談の大半はインターネット通販
インターネット関連の相談の大半を占めるのが、インターネット通販に関する相談だ。便利になった反面、トラブルに巻き込まれるケースが比例的に増加しているという。
インターネットを利用した一般的な商品の通販のトラブルといえば、代金を振り込んだのに商品が届かない通販詐欺や、届いた商品が違う、偽物だったといったものが定番だが、前年度からのSNSの広告を通じた化粧品購入に関する不当請求や、パソコンの操作中に「ウイルスに感染した」というメッセージやエラーメッセージが表示され、その場でウイルス対策ソフトなどの購入に誘導されるといった相談なども多く寄せられているという。
■架空請求とギフトカード払い
インターネット通販には、一般商品のほかに、アダルト情報サイトや出会い系サイトも含まれ、これらに関する相談も相変わらず多い。動画をクリックしたら突然会員に登録され料金請求画面が表示されたり、身に覚えのないサイトから未納の利用料金を請求するメールが来たりといった、「架空請求」の相談が多く寄せられているという。架空請求の支払いには、大手通販サイトなどのギフトカード(プリペイドカード)をコンビニエンスストア等で購入させ、カード番号を伝えさせるという、前年度に登場した手口が本年度も多用されているという。
■被害が広がるスマホと高齢者
スマートフォンの普及に伴い、インターネットの利用環境の主体がスマートフォンという人が増えている。そうした状況を裏付けるように、スマートフォンの利用者から寄せられる相談は年々増加しており、2015年度は前年度の1.5倍の相談があった。これは、全国の消費生活センターなどに寄せられた相談全体の約1割に相当する。インターネットやスマートフォンの利用は高齢者にも広がっており、2015年度は前年度の2倍を超える高齢者についての相談(高齢者本人からの相談は少ない)があった。利用率が飽和状態に近い下の年齢層と違い、高齢層ではさらなる利用の増加が予想されるので、増加に応じた対応が急務となっている。
河野消費者担当大臣は閣議の後の記者会見で、「どこに住んでいても質の高い相談を受けられるような体制の整備、お年寄りを見守るネットワークの構築、消費者ホットライン「188(いやや!)」の周知徹底に力を入れていきたい」と述べた。
(2016/05/31 ネットセキュリティニュース)
【関連URL:消費者庁】
・消費者白書
http://www.caa.go.jp/adjustments/index_15.html
・河野内閣府特命担当大臣閣議後記者会見要旨 平成28年5月24日
http://www.cao.go.jp/minister/1510_t_kono/kaiken/2016/0524kaiken.html