18歳未満の子どもがコミュニティサイトを利用して性犯罪などの被害にあう事件が増加を続けている。今年上半期(1~6月)の被害者数は889人で、統計を取り始めた2008年以降、もっとも多い人数となった。
■増加を続けるコミュニティサイトの被害者数
繰り返し指摘されることだが、2008年に出会い系サイト規制法が改正されて以降、出会い系サイトよりコミュニティサイトでの被害が増えている。2007年には1100人の大台にあった出会い系サイトの被害者数は、規制法改正以降減少を続け、2015年は1割以下の93人となった。入れ替わるようにコミュニティサイトの被害者数が増加をはじめ、2008年には792人だったものが、途中2年間ほど減少傾向があったものの、2013年(1293人)、2014年(1421人)、2015年(1652人)と、増加の一途をたどっている。
2015年以降のコミュニティサイト被害者数を半期ベースでみると、2015年上半期は796人、同下半期は856人、2016年上半期は889人。上昇が続いており、今年下半期の被害も増加が懸念される。
■被害が多いサービスは「Twitter」、次いで「ぎゃるる」「LINE」など
コミュニティサイトの被害増加を後押ししていたのは、2013年から2014年にかけては、LINEなど無料通信アプリのID交換掲示板だった。IDがわかれば相手の電話番号やメールアドレスを知らなくても直接やり取りができるため、子どもが見ず知らずの相手と出会い、直接連絡しあう場として利用された。しかし、2014年下半期からは別のコミュニティサイトでの被害が急増し、場が様変わりした。
警察庁はコミュニティサイトを7種に分類し、被害者数を示している。2016年上半期では、「チャット系」351人、「複数交流系」292人、「ID、QRコード交換系」89人、「ブログ、掲示板系」46人、「動画等投稿・配信系」32人、「ランダム・マッチング系」27人、「ゲーム・アバター系」23名、「不明」29名となっている。
報道によると、警察庁はサイト・アプリ別でみた被害者数も公表している。最も多かったのは複数交流系に分類される「Twitter」で180人(20.2%)、次いでチャット系「ぎゃるる」78人(8.8%)、複数交流系「LINE」63人(7.1%)、チャット系「友達作りTalk」48人(5.3%)など。Twitterは、援助交際に絡む書き込みなどが検索しやすく、事業者側の対策が十分でないことが被害増につながっているという。
■被害の最多は「青少年保護育成条例違反」、13歳以下の低年齢層は13%
コミュニティサイトでの被害内容でもっとも多いのは、「青少年保護育成条例(不純な性交等の禁止など)違反」348人(39.1%)、次に「児童ポルノ」268人(30.1%)、「児童買春」268人(30.1%)となる。重要犯罪に分類される「強姦」「略取誘拐」も、それぞれ8人、13人が被害にあっている。被害者の年齢は、「17歳」「16歳」約25%、「15歳」「14歳」17~18%で、「13歳以下」の低年齢層も121人(13%)存在する。
■被疑者と会った理由、学校での安全教育とフィルタリングなど
被害者が被疑者と会った理由の最多は「金品目的」32.9%、次いで「優しかった、相談にのってくれた」19.7%、「交友目的」17.0%、「性的関係目的」10.3%、「暇つぶし」5.0%、「しつこく誘われた」4.6%、「寂しかった」1.4%など。「金品目的」や「性的関係目的」等いわゆる援助交際に関連する理由が4割強(43.2%)を占めるが、「相談にのってくれた」「交友目的」など、子どもの心に関する部分がそれを上回ることに注目したい。
学校でインターネット利用などに関する指導を、「こまめに受けていた」「時々、受けていた」と答えた被災者は3割強(33.1%)で、指導を「受けたことがない」は6.7%、「わからない、覚えていない」が50.9%だった。また、フィルタリングの利用の有無が判明した被害者738人のうち、647人(87.7%)が「利用していない」と回答している。
警察庁は今後の対策として、コミュニティサイトの事業者に対し、自主的な児童被害防止対策を強化するよう働きかけるとしている。具体的には、年齢確認の厳格化や、事業者自身による確認およびユーザーからの通報などによりサイト内環境を浄化すること。また、フィルタリングの普及促進、児童や保護者、学校関係者等に対する広報啓発と情報共有も進めていく。
(2016/10/21 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・平成28年上半期のコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策について[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h28/h28f_community.pdf